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Brise-Glace 「When In Vanitas…」(1994)

 抽象的なループが連なり、アンサンブルの真似事を提示した。

 Brise-Glaceは93年にシカゴで結成された、ジム・オルークらのバンド。アルバムは本盤だけを残して解散した。

 「別冊ele-king ポストロック・バトルフィールド 「以後」と「音響」の文化誌」に、本盤製作の逸話をオルークがインタビューで答えている。
 スティーブ・アルビニのスタジオで本盤の素材を二日間で録音。バンド形式でなく、まさに素材を録り、編集結果を2chテープへダビングするときに完パケを耳にしたアルビニは、オルークの編集技術を面白がったようだ。

 
 (5)のみゲストでヘンリー・カイザーやデビッド・グラブスらが参加している。
 いちおうバンド形式をとりながら、実際の音像は疑似バンドと前述のインタビューでオルークが述べている。
 その観点で聴いてみると、確かに細かなループやダビングによるサウンド構成だ。今ならばプロ・ツールズで切り貼りできるはずだが、当時はどうだったのだろう。
 オルークのクレジットに「剃刀の刃」と記載あるとこみると、一部はアナログ式にテープの切り貼りで仕上げたのかもしれない。

 サウンドはミニマルな要素がふんだんだ。リズムもループで組み立てられ、アンサンブルは人工的なため偶発的なインプロ要素と思わせながらも、冷静かつ意図的な構造になっている。
 たぶんかなりのところが、オルークの趣味で作られたのだろう。持続音の要素は希薄だが、アンビエント的な酩酊感がそこかしこに漂った。音色は歪んで、ノイジーだとしても。
 
 ポスト・ロックやブレイクビーツ発祥からも数十年たち、プロ・ツールズでの編集があたりまえになった今の耳では、面白くても奇矯さは感じない。少しひねった電子音楽寄りの音楽、って感じ。ガスター・デル・ソルが時代を超えた普遍的な美しさなのと対照的だ。
 しかし94年時点では、この音楽はかなり斬新だったろう。敢えてここはオルークの実験性を高く評価したい。

 ここでのオルークは音色に着目した。バンドのダイナミズムや和音や起承転結ではない。楽器の音色そのものでもない。ハウリングやノイズまでひっくるめた、音色に着目している。

 パンクやスカム的なヘタウマや暴力衝動とは違う。いわゆる音響派に近い、ノイズを音色として慈しみ、ビート感はあってもグルーヴから解体して冷静沈着な響きを創出した。
 オルークの緻密だが頭でっかちではない前衛的なスタジオ・ワークを楽しめる興味深い一枚だ。本盤に限っては予備知識なし臨まず、敢えて「素材を切り貼りして作った」って意識をしながら愉しみたい。
 オルークの冴えた編集っぷりが、際立って伝わってくるだろう。
 

Track list
1 Neither Yield Nor Reap 7:03
2 Host Of Latecomers 4:00
3 Stump Of A Drowner 3:58
4 Restrained From Do And Will Not (Leave) 10:52
5 One Syntactical Unit   5:47

Personnel:
Jim O'Rourke: guitar, organ, tape and "razor blade"
Darin Gray: bass guitar
Dylan Posa: guitar
Thymme Jones: drums

on 5:
Bass Clarinet - Gene Coleman
Guitar - Henry Kaiser
Organ - Dave Grubbs
Percussion - Carolyn Faber
Tape - Christoph Heemann

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