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Silent Path 「Mourner Portraits」(2009)

 壮大で煙った風情が、スリルと神秘性を醸し出した。聴きごたえあり。

 メタルは細密なジャンル分けがあるけれど、ぼくにはこのバンドを分類する知識がない。
 Bandcampのタグには、ブラック・メタル、デス・ドゥーム、ディプレッシブなどの言葉が並ぶ。ぼくの印象では暗くて重たいアンビエント路線のインストなメタル。

 「デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック: DSBM=鬱・自殺系ブラックメタル (世界過激音楽)」長谷部 裕介:著(2018:パブリブ)を読むBGMであれこれ聴いてるうちに本盤へ行き当たった。

 イランのテヘラン出身なCount De EfritがSaman Nu名義で、Silent Pathのソロ・プロジェクトを使い発表した。
 彼はやはりソロ・プロジェクトのEkove Efritsを、本体として活動している。こちらは01年のデモ"In the Black Minds"を皮切りに、"Nowhere"(2013)まで数枚の作品を発表している。
 しかしSilent Pathでの音盤は今のところ、本盤だけだ。

 Silent Pathの音楽性は、雄大で具体的な風景とスペイシーな空想世界を行き来する描写力が凄い。
 SEを駆使して沈鬱な景色を描きつつ、ギターを中心にシンセも使ってきめ細かく複雑な音像を作った。
 決して音数が無闇に多いわけではない。メロディ要素も希薄だ。けれどもドラムや叫びのダビングも必要最小限なのに、効果的で漆黒の光景を作る。映画のようなドラマティックさを持ちながら、音構造はかなり抽象的だ。

 リズムとメロディ、伴奏とテーマみたいな組み立てをさほど使わないのに、わずかな旋律感や和音の流れで切ない絶望の情景が鮮やかに広がる。
 ぐしゃっとまとめたミックスで、実に効果的なサウンドを作った。

 ハードさを求めたら物足りないだろう。破滅的な勢いも無い。けれどプログレ的なシンフォさと、スケール大きな雰囲気づくりは抜群だ。
 主義主張を極限まで押さえ、潔く悲観的なアンビエントを作った。寛ぎは無い。鈍く苦しい切迫感を、ぎりぎりと絞り出す。
 アラビックな要素は希薄。メロディの流れに中東的な酩酊感を読むこともできなくはないが、民族性も特に前面に出さず、淡々と重苦しい漂いを振りまく。
 
 鬱々と沈み込む方向性だが、本盤はとても興味深く聴いた。

Track list
1 Empty Earth 3:07
2 Filth Of Mankind 6:50
3 Broken Trees 6:38
4 Last Men, Last Dreams 7:31
5 Forgotten Sounds 4:07
6 Sarabe Aramesh 7:16
7 Epic Suicide 8:15
8 Grey Dolls From Nowhere 6:34
9 Unwritten Story 3:27

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