TZ 7065:John Zorn "Madness,Love and Mysticism"(2001)

三人の音楽家による、順列組合せの現代音楽を収録した。曲はそれぞれ違う日に録音。
ジョン・ゾーンらしい構築と抽象性な作品だ。
ただしとっつきこそ悪いが、意外に聴きやすいと思う。無闇にノイジーじゃ無いせいか。構造はフレーズを繋ぎ合わせた、ジョン流の"ひとつながり無作為ストーリー"な趣きだ。

(1)は仏のアントナン・アルトーに触発された曲。こののち、幾たびもゾーンは彼の影響下な曲を発表する。整理あった英文Wikiによれば"La Machine de l'être" (2000), "Suppots et Suppliciations" (2012) など、さらに一連のムーンチャイルド作品群がそれにあたる。
("Moonchild"(2006)"Astronome"(2006), "Six Litanies for Heliogabalus"(2007), "The Crucible"(2008), "Ipsissimus"(2010), "Templars: In Sacred Blood"(2012))
 
(1)の"Le Momo"はピアノとバイオリンの二重奏。早いフレーズがめまぐるしく駆け抜ける、テクニカルな曲。ライナーによるとアルトーの詞を単語に分けて音節化し、組み立てたらしい。ファイル・カードシステムの応用みたいなものか。場面がくるくると変わり、緊迫感が常に保たれる。
00年12月10日にボストンのスタジオで録音された。

(2)はチェロの独奏曲で、01年2月9日、NYでの録音。
アメリカの前衛的な映画監督、ジョゼフ・コーネルがテーマだ。ジョンが子供の頃に近所へ住んでおり、交流があったらしい。即興めいた突飛なフレーズが飛び交うが、全て譜面かもしれない。
フリーな場面、唐突に流麗なメロディの場面。くるくると変換が止まない、ジョンらしい構造の楽曲だ。きっちり譜面を追えば別かもしれないが、たんに聴いてるだけだと取り留めない流れに感じてしまう。形式を廃し、次々に場面を並べたかのよう。
演奏そのものは美しい。チェロをとことん激しく、時に滑らかに響かせた。

(3)は00年11月27日にNYで録音。Vln,Vc,pのピアノ三重奏。スクリャービンを意識した複雑な構成を持っているようだ。これまた構造が窺い知れない。集中力を必要とする。
本盤の中でも比較的、メロディが前面に出てる気がするけれど。抽象的な音像と、微かな和音感で浮遊するアンサンブルが空気を冷たく彩った。
音は埋め尽くされず、間を十二分に生かした静かな作品だ。

ジャケット写真はルイス・ブニュエル監督"黄金時代:L'Âge d'or"(1930)の一シーンと、ジャケにクレジットあり。

Personnel:
Jennifer Choi - violin (tracks 1 & 3)
Stephen Drury - piano (tracks 1 & 3)
Erik Friedlander - cello (tracks 2 & 3)

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