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Conrad Schnitzler 「Gelb」(1974)

 わずかなビート性をもって、くるくると表情を変える電子音楽。

 コンラッド・シュニッツラーは膨大な自主製作のカタログをリリースで知られる。一説には800タイトル以上あるとか。タンジェリン・ドリーム、そしてクラスターの創設に加わり、ドイツ電子音楽界隈では有名な人だが、ぼくはほとんど詳しくない。本盤を選んだのもたまたま。聴いてみたくて、ランダムに選んでみた。

 本盤は74年に自主製作のカセット、通称"The Black Cassette"でリリースがオリジナル音源。この時代に自主流通を模索していたのは斬新だ。今と違って情報が限られており、海外流通まで考えず地元で消費を想定かもしれないが。
 同時期に"THE RED CASSETTE"(後年に"ZUG"で再発)もリリース。他にLPで"ROT","BLAU"を発表。当時からツボにはまったときの創作力は膨大だった。

 本音源は"The Black Cassette"が同時期の色シリーズに倣って"Gelb"と解題したもの。
 再発にあたって3曲の当時音源がボーナス収録されている。

 サウンドはスペイシーなシンセ音を軸に、カモメや海の音などミュージック・コンクレートも混ざった。メロディや構成はほぼ無く、淡々とシンセにたわむれた印象だ。観念的ではあるが、コンセプト主体の頭でっかちさはない。むしろ音そのものの響きを愉しみ、味わっているかのよう。

 後年のConシリーズを数枚聴いた感じでは、もっとコンラッドはテキパキと小刻みな先入観があったけれど。本盤では雄大な風景が広がる。
 室内に留まらず、広々した巨大な空間へ電子音が膨らんだ。宇宙空間ではなく、地上からの視点と感じた。
 しっかりと土台を持ったうえで、複数の電子音が立体的に重なる。混ざらず、それぞれ別の要素として。

 一曲は数分程度で、どんどん切り替わってしまう。長尺で即興を繋げる方向性をコンラッドは選ばなかった。"ROT","BLAU","ZUG"の再発CDでトラック分けは、カセット片面分の感覚で長尺に分かれているのと対照的だ。
 もっともカセットで発売された当時は本盤も一曲20分強の感覚だったろう。

 本盤でコンラッドは明確な場面転換を意識した。あるいは"ZUG"と対照性を持たせるためだったのかもしれない。
 場面ごとのテーマはまちまちだ。ときにリズミックな要素も持つけれど、基調は浮遊するノービートな面持ち。内省的な静けさを持ちつつ、悩まず無邪気に音を操っている。

 商品としては大づかみに解釈できない。投げっぱなしのコンセプトだ。商売っ気抜き、アートとしてコンラッドは作ったのかも。
 酩酊する堕落さは希薄で、ゆっくりと密やかな呟きを電子音楽で表現した。


Track list
1 Untitled 6:07
2 Untitled 2:21
3 Untitled 3:00
4 Untitled 2:16
5 Untitled 5:01
6 Untitled 4:23
7 Untitled 3:07
8 Untitled 2:29
9 Untitled 2:42
10 Untitled 2:35
11 Untitled 3:21
12 Untitled 2:39
13 Untitled (Bonus) 7:55
14 Untitled (Bonus) 12:35
15 Untitled (Bonus) 6:08

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