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"A" Trio & AMM 「AAMM」(2018)

 新旧の即興者によるコラボ。ベテランの貫禄を見せつけた感あり。

 "A" Trioはレバノンのベイルートを拠点の即興トリオで、Mazen Kerbaj(tp), Raed Yassin(b), Sharif Sehnaoui(Ag)からなる変則編成。AMMは60年代にイギリスで結成された即興音楽集団だ。
 AMMからはEddie Prevost(per)とJohn Tilburyが参加した。
 
 若手とベテランの組み合わせで50分一本勝負のインプロを繰り広げたのが本盤だ。きっかけは不明で、本盤が1stになる。
 録音はベルリン。Mikromusik Festivalの一環で15年8月27日に録音された。イベント企画の一過性なライブってことか。

 激しいバトルの斬り合いじゃない。全体的に静かな即興を繰り広げた。最後だけちょっと音圧が強まるくらい。
 メロディや構成を志向せず、軋むノイズが全編を覆う。抑えた雰囲気と金属質な重厚さで存在感を出すのが、ピアノ。抽象的な風景を静謐な旋律の断片が舞った。
 すなわちピアノが美味しいところを持っていく。

 アコギやベースは弓や金属棒で弦をこすっているのか。撥弦より擦弦のアプローチが強い。パーカッションによるリズムも希薄だが、もしかしたらアルコでシンバルなどをこすっているのかも。

 中心楽器や構成が希薄で、見せ場や場面転換も無い。そんな構造で芯となるにはテクニックと場を見極める視野がいる。
 その観点でAMMにはキャリアに裏付けされた確かさを感じさせた。ちらちらと煌めく電子音めいた金属打楽器の断片と、ときおり浮かび上がるピアノ。AMM組がサウンドを引っ張った。

 A Trio組もこすったり楽器を呻かせたりと、即興演奏へ余念がない。しかしBGMの一役に留まった感は否めない。
 たとえ淡々と揺らぐだけの音像であるがゆえに、AMMは役者の違いを見せつけた。

 なおサウンドそのものも一本調子ではない。緩やかに表情を変えていく。20分前後で聴ける水墨画のように穏やかだが鮮烈に輝く瞬間は痛快だ。鳥の声のようにトランペットがさえずり、濃淡のアクセントをつけた。

 そう、本盤はビート性が希薄で、エキゾティックな風景が所々で顔を出す。じわじわと、ひたひたと、せめぎ合う楽器の圧は押しつけがましくないわりに、いつのまにかあたりを埋めていた。
 そのときの中心には、やはりピアノが輝いている。
  
 雄大で思索的なインプロが詰まった。本来は一期一会で一過性のライブだとしても、幾度も聴き返しているうちに聴きどころがあちこちにあると気づく。そんな奥深い醍醐味を秘めた音楽だ。



Track list
1 Unholy Elisabeth 50:57

Personnel:
Acoustic Guitar ["A" Trio] - Sharif Sehnaoui
Double Bass ["A" Trio] - Raed Yassin
Trumpet ["A" Trio] - Mazen Kerbaj

Percussion [AMM] - Eddie Prevost
Piano [AMM] - John Tilbury

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