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Father John Misty 「God's Favorite Customer」(2018)

 物語性を希薄に、沈鬱なソングブックの面持ちでアルバムにまとめた。

 ジョシュ・ティルマンの個人ユニット、ファーザー・ジョン・ミスティ。
 高い評価を得た前作"Pure Comedy"(2017)から約1年、続く4thアルバムを繰り出した。実際は去年の段階でほぼ出来ていたらしい。ドラマティックなトータル性を持つ"Pure Comedy"からは、いくぶんコンセプト性を抑えたアルバムだ。

 前作は74分とCDにみっちり入れたが、本盤は40分弱とLPサイズのコンパクトな内容にした。
 多くの曲でギターとピアノ、ドラムもティルマンが叩いており、よりパーソナルな作りと言えるかもしれない。
 ミュージシャンは前作とほぼかぶらない。Elijah Thomson(b)くらいか。でも本盤は(3)でしか弾いてない。過半数のベースはFoxygenのJonathan Radoが担当した。
 
 Jonathan Radoはバンド活動と並行して、近年はAlex Cameron"Forced Witness"(2017),The Lemon Twigs"Do Hollywood",Tim Heidecker"In Glendale"(2016),Whitney"Light Upon The Lake"(2016)などのプロデュースに関与してる。
 ティルマンとJonathan Radoは、Adam Greenが担当したサントラ"Aladdin"へ二人が参加した際に、ティルマンが目をつけてジョナサンにサポートを依頼した経緯らしい。
    

 美しくも整ったメロディはそのままに。メロウさが都会的なムードを漂わせた前作に比べて、本作は内省的な切なさを前面に出した。
 一方で作品は全てティルマンの曲ながら、全曲が共作名義。単独名義だった前作とは対照的。
 耳ざわりは個人の内面へ深く潜った印象の楽曲だが、個人的になり過ぎぬよう、共作でバランスを取ったか。
 タイトル曲ではWeyes Bloodが参加した。

 アルバムの統一感はあまりなく、さまざまなタイプの曲が並ぶ。和音感がくるくると変貌しながら饒舌に歌う複雑な響きな(2)が楽しい。
 他の曲もきれいだが、一筋縄でいかないポップスとなった。アコースティック、かつシンプルなアレンジな一方で録音は緻密にミックスされている。
 ピアノの弾き語りで静かに歌う(7)も、エコーを丁寧かつ慎重に付与して、ふくよかな奥行きを演出した。

 他にもきれいなメロディが一杯だ。甘酸っぱくもほろ苦い。複雑なニュアンスがティルマンの楽曲からは滲んでくる。

 全体的な印象は重たい。インタビューや記事を読むと家庭の悩みなどが歌いこまれているらしい。
 だが自己史の表出としてでなく、あくまでポップ・アルバムとして本盤を楽しみたい。同情や共感で暗い気持ちになって本盤を味わうのは、何か違う。

 悩み苦しみがテーマだとしても、本盤の根底は自己セラピーの代償物ではなく、あくまでもエンターテイメントだ。
 メロウなメロディメイカーとして、伸びやかにティルマンは歌った。さりげなく、優しく。背筋を伸ばして堂々と。
 そしてアルバムはあっけなく、幕を下ろした。


Track list
1 Hangout At The Gallows 4:56
2 Mr. Tillman 3:04
3 Just Dumb Enough To Try 4:02
4 Date Night 2:30
5 Please Don't Die 3:24
6 The Palace 4:09
7 Disappointing Diamonds Are The Rarest Of Them All 2:23
8 God’s Favorite Customer 5:22
9 The Songwriter 3:46
10 We're Only People (And There's Not Much Anyone Can Do About That) 5:04

Personnel:
Josh Tillman - guitar (1-8, 10), drums (1-5, 7, 8, 10), tambourine (1, 10), bass (2), piano (3, 6, 8-10), finger picking (3), Mellotron (3, 10), harmonica (5, 8), sleigh bells (5), additional instrumentation (6, 9), string arrangement (3)
Jonathan Rado - bass (1, 4, 5, 8, 10), guitar (1, 5, 8), DX-1 (4) piano (5), synthesizer (7), organ (8)
Jon Titterington - piano (1, 2, 4, 7), glockenspiel (2), synthesizer (2), accordion (5), trumpet (5), Wurlitzer (7, 8)
Bobby Krlic - strings (1), horns (1)
Jonathan Wilson - bass synthesizer (1), Crumar (1), organ (5, 9), electric (8)
Elijah Thomson - bass (3), solo (3)
Gabe Noel - cellos (3, 6, 10), lap steel (3, 10), string arrangement (3, 10)
Mark Ronson - bass (7)
David Vandervelde - guitars (7, 10)
James King - saxophone (7)
Natalie Mering (a.k.a. Weyes Blood)- vocals (8)

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