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中村としまる/Keith Rowe 「Weather Sky」(2001)

 機械仕掛けの音色に着目して、静かにノイズを出し合った盤。

 フランスのスタジオで録音された、中村としまるとキース・ロウのデュオ。幾度も共演を果たしている。デュオのアルバムでは本盤が最初、他には"Between"(2006),"Untitled"(2009)がある。共演盤なら他にもいろいろ。

 ノー・インプット・ミキシング・ボードを操る中村に対して、キースはテーブル・ギターとエレクトロニクスで応じた。メロディや和音でなく、抽象的な電子音が淡々と続く。
 むやみなバトルや起承転結にはこだわらない。再生や繰り返しのテクニックも気にしない。楽器とは別次元、発信機として機材を位置づけ、ひたむきに音と向かい合う。まず、自分の。次に互いの。
 キースのほうが機材的に相手の音へ、反応しやすいかもしれない。だが二人とも基本的には偶発性を重んじて、音の持続と変貌へ冷静に見据えた。

 この手の音楽はかなり聴く人を選ぶ。いったん受け止められたら、素晴らしく刺激的なサウンドになるのだが。
 思い通りの音程を出すことを想定した楽器演奏ではなく、音色に着目して構築する純粋さがこの手の音楽の肝だと思う。
 むやみに崇高さや芸術性、意味性を付与せずに耳を傾けたい。
 尖って刺激的な周波数の音色と、哲学的な始原のうねりへ、ただ耳をまかせよう。

 (1)は40分もの長尺。(2)で5分と縮めて、(3)は30分弱。メリハリと持続の強度、双方が本盤には収録された。
 高周波の持続音が中村、断続的なノイズがキースか。
 じっと聴いていると、時間感覚があいまいになる。意味性が剥奪され、即興的に変化する唐突さと、じんわり持続する時の流れに酩酊感を覚えるだろう。この揺らぐ気分を快感と感じたら、もうこの手の音楽が妙なる響きに聴こえているはずだ。

 Wikiで経歴を読むとキース・ロウはテクニックから入って、やがて前衛に向かった。デレク・ベイリーと似たアプローチだが、キースはもっと極北を目指した。
 65年にAMM旗揚げメンバーの一人、97年にM.I.M.E.O.にも顔を並べた。ギターをノイズマシンと操るようになったのは、90年代頃から?長いキャリアの中で、問題意識をもってノイズへ向かった。

 いっぽうの中村はもう少し飄々とした感あり。ノー・インプット・ミキシング・ボードでの活動開始は90年後半くらいか。芸術性や主義主張を声高に主張せず、シンプルに機材を操ってきた印象がある。
 ロック・バンド"A Paragon of Beauty"(これもカッコいい盤だ)の95年デビューを脇において、ノー・インプット・ミキシング・ボード奏者としては本盤が、比較的キャリア初期の盤になるようだ。

 だがどんな思想背景やテクニックを持っていようとも、音楽の前では等価だ。本盤で二人は対等に渡り合っている。キャリアの軽重に臆せず、見くびらず。寄り添いすぎず、互いを尊重しながら。
 静かにノイズが、続いていく。ときおり唐突な起伏と変化を内包して。曲ごとに音色が変わる。響きも重さも変わる。
 緊張しすぎず、弛緩して本盤を楽しみたい。張りつめた気持ちでこの長尺を聴くにはライブ会場だけでいい。音盤ならば、もっと寛いでノイズの音色へ耳を澄ませよう。
 


Track list
1.Weathre Sky #1 (40:32)
2.Weather Sky #2 ( 5:02)
3.Weather Sky #3 (27:26)

Personnel:
Keith Rowe: tabletop guitar, electronics
中村としまる: no-input mixing board

Recorded by Gil'man for Gil'man Studio Mobile at Le Chok Theatre in Saint-Etienne, France on June 11, 2001

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