TZ 7190:John Zorn "Masada Recital"(2004)

Masadaのスピード感を抑え、厳粛さを全面に出した。静謐と混沌の渾然を味わえる、絶妙なサウンドが楽しめる傑作。
第一弾Masada楽曲"208曲"の一環、10周年記念な第四弾。本作は04年2月17日にサクッと録音。バイオリンとピアノのクラシカルなジャズ・デュオだ。

まず曲目チェックから。MasadaのDIWスタジオ作10枚と"Bar Kokhba"(1996),"The Circle Maker"(1998)を、Masada Book1シリーズの、仮に「正典」とする。
本作でのみ聴けるのは(7)。他は全て正典に収録あり。12曲入りだが手堅い選曲だ。ぶっちゃけ、せっかくだからもっと未発表曲が聴きたかった。だが「マサダ・レパートリーの変奏」の観点だと、まっとうな選曲ともいえる。

演奏はテーマ部分が凄く整っており、アドリブで自由に炸裂するイメージ。アレンジは全てシルヴィー・クルボアジェが担当した。二人とも穏やかに楽器から音楽を導き出す。細やかなバイオリンの響きを、芯の詰まったピアノが着実に支える。

二人とも流麗な音使いで、テンション高く弾く。しかし張りつめても緊張しすぎない、ゆとりが滲んだ。高速で斬り合う場面も、どこか穏やかな気持ちで聴ける。

例えば(4)なんて、プリペアード・ピアノっぽい響きでフリーに響き渡るのに。
"エリーゼのために"風メロディが挿入なコラージュめいた(6)も、そう。がっつがっつピアノ弦の内部奏法が響く(8)も。激しく自由でクラスター気味なアタックは、ノイジーさより切ない美しさが先に立つ。
(11)はバイオリン独奏。ピアノ・ソロもあったらバランスとれたが、そこまでシンメトリーは意識しなかったようだ。

互いに確かなテクニックでゆるぎなく演奏する一方で、技のひけらかしに終わらぬ懐の深さを魅せた。小編成器楽曲にぴったりだ、とのMasadaコンセプトを体現した一枚。
リズム楽器が居ない分、存分に二人はフレーズを歌わせる。ミニマルな場面でも、ゆるやかにテンポを揺らす伸びやかさが心地良い。
実際のテンポ感は、かなりタイトだが。聴いてるぶんには、とても拍が伸び縮みのように聴こえてしまう。

ジャケット絵は同時代の画家カレン・リエボウィツ"The Gift of the Sabbath Bride"(1997)の部分を使用。ライナーへはポーランドのユダヤ系作家/画家、ブルーノ・シュルツ"砂時計サナトリウム"(1937)からの引用が記された。
http://rosamundfelsen.com/wp-content/uploads/artists/169/Karen%20Liebowitz%20Biography.pdf

Personnel:
Sylvie Courvoisier – piano
Mark Feldman – violin

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