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Anteloper 「Kudu」(2018)

 エレクトロ仕立てのフリージャズ。妙にポップな仕上がりだ。

 AnteloperはJaimie Branch (fly or die, high life)とJason Nazary (little women, helado negro, bear in heaven)のユニットで、本盤が1stになる。配信の他にカセットでもリリースあり。

 編成こそデュオだがシンセが複数の音を並列で走らせるため、意外と音像は分厚い。
 (1)は混沌な雰囲気で幕を開け、力任せの観念的なフリージャズかと思わせる。しかし唐突にポップなメロディが現れ、耳を惹きつける仕組み。
 エフェクタで音色を歪みひしゃげさせ、ラフでざらついた空気を音楽へ付与した。

 録音はだいぶダビングしていそう。トランペットからシンセに移り、やがて幾層にもシンセが重なってトランペットが現れた。一層だけならループの可能性もあるけれど、ここまで細かい積み上げならばダビングだろう。
 逆にこれを一発録音で仕立てるならば、たいしたテクニックの持ち主だ。
 いちおうクレジットにはブルックリンのcarefree studiosで、ライブ録音と書かれているのだが・・・。

 乱打気味に手数の多いドラムは、肉感的よりむしろメカニカル。リズムボックスを複数鳴らしまくってるかのよう。
 そんなパルス・ビートの上で耳馴染み良いメロディが踊るサウンドだ。

 サウンドの基調は80年代テクノを通過してる。ジャズよりむしろ、フロア仕立てのクラブ・ミュージックに近い。だがアシッド・ジャズみたいなダンス志向とも明確に違う。
 クールなビート感ながら演奏は生演奏。なのにスイング感は希薄だ。欧州の理知的な志向とも異なる。
 無機質なブレイクビーツの香りを漂わせつつ、演奏はがっちり生演奏。それがこのユニットの特徴か。

 楽曲は前半3曲がブランチ、後半がナザリーの曲。カセットではA面とB面で明確に作曲者を分けた。平等かつ、対等なセッションのようだ。なお二人の共演歴は02年まで遡るという。

 サウンドの主導権はシンセとペットでメロディ部分を操るブランチのほうに軍配が上がる。
 しかし安っぽくも複雑で、投げっぱなしながらひょっとしたら緻密なリズムを操作するナザリーも、単なる伴奏に甘んじていない。
 むしろシンセを駆使して分厚い音色で暴れるブランチに対して、崩れた音色のドラムだけで勝負する、ナザリーのほうが勇ましく聴こえる場面もあり。ポリリズムに変拍子と技をあちこち仕掛けながら。

 特にシンセがポップに偏る箇所では、フュージョン寄りの側面も感じた。
 ただし全編を通じて変わらないサイケで危うい響きの音飾が、本盤を単なる聴きやすさから切り離した。
 
 敢えてブランチとナザリーの特徴を言うならば、ブランチのほうがストレート。ナザリーはインダストリアルな要素あり。ナザレスの方向性がぼくの好み。
 ブランチはトランペットをひねらず剛腕で披露し、シンセは乱雑だが細やかで親しみやすく彩った。ナザリーは淡々とタイトにビートをばら撒き続ける。
 寄り添っていそうで、互いにドライに作り上げた。


Track list
1 Oryx 9:10
2 Fossil Record 4:43
3 Lethal Curve 10:54
4 Ohoneotree Suite 15:21
5 Seclusion Self 9:47

Personnel:
Drums, Synth - Jason Nazary
Trumpet, Synth - Jaimie Branch
Written-By - Jaimie Branch (tracks: A1 to A3), Jason Nazary
edited by jason nazary
mixed by dave vettraino
mastered by david allen
artwork by jaimie branch

recorded live at carefree studios in bk by ian hersey on june 20, 2017

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