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Burzum 「Hliðskjálf」(1998)

 シンセによる中世風味の壮大なダーク・アンビエント作品。

 バーズムは、ノルウェー人ヴァルグ・ヴィーケネスによるブラック・メタルのソロ・プロジェクト。ヴァルグはバーズムの3rd"Hvis lyset tar oss"(1994)の発表直後、殺人と教会放火の罪で、懲役21年の求刑を受ける。
 なぜかヴァルグは獄中にシンセサイザーの持ち込みを許された。自由なのか何なのか。
 
 そして獄中でヴァルグは"Dauði Baldrs"(1994-5録音、1997発表)と、本作"Hliðskjálf"(1998録音、1999発表)と2枚の作品を作り、服役中にリリースまで行う。
 よほど支援者がいたのだろうか。発売元のMisanthropy Recordsはブラック・メタルの英国レーベル。国をまたいでリリースにこぎつけるとは、たいしたもの。

 なお2015年頃の満期を待たず、ヴァルグは09年に釈放された。その後も活動を続けておいる。投獄にもかかわらず復活できるあたり、ファンやスタッフが寛容なのかよほど音楽的な才能をかわれているのか。

 タイトルの"Hliðskjálf"は日本語表記だとフリズスキャールヴ。北欧神話に出てくる主神オーディンの高座をさす。

 本盤はシンセによる多重録音。安っぽい音色は否めない。この辺が残念。サウンドそのものは中世音楽をうっすら漂わせる雄大さを持つ。
 わずかにミニマルな構成ながら、メロディアスさを追求してメタル要素やノイジーな要素は皆無だ。

 聴いて寛げはしないかもしれないが、神経質に耳が泡立つことも無い。Wikiによると一週間で録音を完了させたらしい。いったいどういう服役環境なのだろう。
 録り溜めたモチーフを発展よりも、ワンアイディアをそのまま膨らませた感ある。幻想的でシンプルな構造だ。
 音色を使い分けて、いくつかは複数のラインがあるものの基本的な音構造はシンプルだ。
 
 ある程度の和音感を生かしたうえで、音色の透明性やスケールの大きさで組み立てた。ダーク・アンビエントと冒頭に言ったが、沈鬱さはシンプルな音構造のためにさほど目立たない。むしろ素朴で内省的な方向性か。
 それぞれの一曲は数分と短い。マリンバ的な音色の(7)や(8)がキュートで耳に残った。
 (1)のようにシンフォニックで凝った作りで全編を作っていたら、アルバムの印象も変わったろう。

 全体を通して、残虐性や暴力的な表現ではない。
 獄中と特殊な環境を踏まえたメッセージ性やコンセプチュアルな要素は感じられない。贖罪や改悛を音表現では無く、もっと無邪気かつ無心に音楽に向かい合った。

 本盤が獄中発売に足るかって観点での判断は難しい。できない。
 変に物語性を持たず、予備知識なしに聴いたら、シンプルな電子音楽にしか聴こえないだろう。一種のアウトサイダー・アートとして聴くべきか。
 少なくとも刑務所と言う環境で作った割には、安っぽい音色ながらしっかりした出来とはいえる。



Track list
1 Tuistos Herz 6:13
2 Der Tod Wuotans 6:43
3 Ansuzgardaraiwô 4:28
4 Die Liebe Nerþus' 2:14
5 Frijôs Einsames Trauern 6:15
6 Einfühlungsvermögen 3:55
7 Frijôs Goldene Tränen 2:38
8 Der Weinende Hadnur 1:16

Varg Vikernes – synthesizers, audio engineering, songwriting

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