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Thomas Lehn & Gerry Hemingway 「Tom & Gerry」(1999)

 アナログ・シンセとパーカッションの密やかなインプロ・デュオ。

 トーマス・レーン(synth,独),とジェリー・ヘミングウェイ(per,米)の2枚組ライブ・アルバム。二人とも本盤発売時点で、たぶん40歳半ばとベテランの二人。ただしトーマスのレコード・デビューは95年くらいだから知名度はジェリーのほうが上だったのかな。
 このデュオの結成は97年。もとはカルテット編成を予定だったが、経済的な事情でデュオに縮小されたという。その後にアメリカと欧州をツアーした。
 本盤はその初期ツアー音源のライブから抜粋されている。
 Disc 1が独ヴッパータールの公演。Disc 2は同じく独ビーレフェルトとデュッセルドルフで収録された。

 演奏の主導権は特になく、完全即興でライブが進む。トーマスはアナログ・シンセを操った。メロディでなく音色志向で抽象的な電子音が広がる。そこへジェリーがドラム・セットで絡む構成。
 バトルの喧しい果し合いではない。もっと静かで理知的なアプローチ。アンビエントの穏やかな志向ではなく、テンポ・アップや派手目の展開もあるけれど。痛快さや熱狂がコンセプトではない。

 欧州的な即興だ。グルーヴィさよりもビートや展開から解放されたフリー・ジャズを志向した。
 しかつめらしく聴く緊張感は希薄で、むしろ寛ぎもそこかしこにある。ライブ現場の雰囲気はどうだったのだろう。真剣さを強いられたのだろうか。

 本盤の音源はトーマスが録音して、二人が編集した。マスタリングにはジェリーが立ち会っており、音盤に至る担当はジェリーのようだ。
 一曲を数分から20分越えのブロックに切り分けた。ライブの時系列をそのまま並べてはいない。
 曲目が示す、場所の頭文字に続く数字が時系列ではないか。ならばかなり順列は入れ替えられている。ダビングはないようだ。曲の間を詰める編集をやっているかな?
 流れは抽象的かつ即興性を持つが、曲中での時間ジャンプは感じられなかった。

 本ユニットは一過性ではない。本盤がデビュー・アルバムで、翌年に00年の北米ライブを収録した"Fire Works"(2000)をリリースした。
 のちの"Kinetics"(2008)で03~06年のライブ音源が今のところ、最新の音盤になる。

 二人とも本ユニットが主軸でなく多彩な活動をしている。緩やかなユニット活動ということだろう。だが何年にもわたり活動するほどには、手ごたえを感じているようだ。
 CDは廃盤、配信もされていないっぽい。ぼくもたまたまレコ屋で見つけて手に取った。どの程度プレスされているのやら。

 あからさまな起承転結をつけないで、メリハリやうねりを避けるように二人は音楽を紡いでいく。
 即興音楽が好きな人なら、楽しめる盤だと思う。けれども例えばデレク・ベイリーのように、強迫により展開や意味性の放棄ではない。むしろ互いの内的衝動をそのまま並列させているよう。しかし互いの音は聴き合っている。

 コンセプトを敢えて決めず、そのうえで意外性や即興性の純粋さにもこだわらない。
 確かに地味だ。盛り上がりにも欠ける。とはいえ堅苦しくないのが本盤の面白みだと思う。
 理想論や主義主張から解放され、いわば適当に音を出しあって時間が過ぎていく。だが音盤では垂れ流しではなく、前述のように数分単位でブロック切り出しがされ入れ替えることで、かすかな「始まって、終わる」という現場の流れから変貌して作品化された。
 あまり編集を激しくしすぎないことで、性急さの轍も踏まない。

 つまりライブの追体験ではない。意味性を注意深く外して、無造作で無秩序の即興を追求した。

Track list:
1-1 W2 16:01
1-2 W3 5:33
1-3 W5.2 4:35
1-4 W4.5 6:13
1-5 W1.1 3:31
1-6 W7 12:48
1-7 W4.6 1:58

2-1 B1.1 5:45
2-2 D5.4 4:14
2-3 D1.2 10:32
2-4 D7.1 5:14
2-5 B2 24:03
2-6 D3.1/2 3:56

Personnel:
Drums, Percussion – Gerry Hemingway
Synthesizer [Analogue] – Thomas Lehn

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