FC2ブログ

中村としまる 「Re-Verbed (No Input Mixing Board 9)」(2018)

 リズミックな楽器としてミキサーボード使いが、ますます冴えていく。

 前盤では長尺3曲とじっくり曲を紡いだが、今回は5~6分の曲を中心に8曲を収めて、比較的コンパクトにまとめた。

 ノイズ楽器的な位置づけだったNimbが、本作ではスペイシーなテクノを連想させる風情だ。
 けっしてメロディやリズム、和音があるわけではない。でもどこか深みのある音色と、数々のノイズが細かく絡み合い、雄大で幻想的な世界を作った。
 実際の制作風景は知らない。しかしすべて一発録音ではなく、ノイズをサンプリングしてプロトゥールズで組み直したのでは、と思わんばかりのさまざまな音色が立体的に絡み合う構図だ。

 一曲が短めなことで、変化やストーリー性よりも小宇宙の構築美をどの曲も追求した。起承転結やメリハリをポップに仕立てるまでは行かないが、ひとしきり浮かび上がっては沈み、追求しては緩やかにまとまる。ひそやかな風景を描いては幕を下ろし、全く違うアプローチの次へ向かう作品集になった。

 やはりこれ、ポスト・プロダクションがかなりなされているのか。編集無しでここまで、各種ノイズを操れたのならすさまじいテクニックだ。楽器とは出したい音を出したいときに出せるものを指すと思う。つまみの偶発的なノイズに頼って、この音楽を創れたとは思えない。
 サンプリングのように同じ音が繰り返され、数分前と同じパターンが現れては消える。
 
 仮にノイズマシンとしてNimbを使い、あとはPC上で作られたサウンドだとしても、この音楽の強度と価値は全く減じない。シンセで作るノイズとは一味違う、ガリや粒立ちや軋みなどを集めて、中村は浮遊感あるスリリングな音を作った。
 ほんとうに、この盤はどうやって作っているのだろう。音響派、テクノイズ、さまざまな電子音の響きそのものを楽しむ音楽がここ何十年も進歩してきた。
 
 その中で本盤は、音楽的なアプローチから最果ての立場へいたはずなのに、本盤で聴けるサウンドは素晴らしく音楽的だ。
 低音から高音まで幅広い音色を使い分け、Nimbでつかみどころ無い人工的だが制御が聴かない音楽を描いた。
 いや、制御は効いているな。プログラムされたかのように、インダストリアルな表情が本盤のそこかしこで睨みをきかしている。

Track list
1.NIMB 51 04:41
2.NIMB 52 01:54
3.NIMB 53 06:46
4.NIMB 54 03:55
5.NIMB 55 06:21
6.NIMB 56 02:23
7.NIMB 57 05:20
8.NIMB 58 06:08

関連記事

コメント

非公開コメント