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Robert Glasper 「Double Booked」(2009)

 トリオとカルテットを使い分け、ジャズとヒップホップの混淆。"Black Radio"(2011)に至る直前のアルバム。

 今の北米ジャズが持つクールさを上手く日本に紹介した柳樂 光隆"Jazz The New Chapter"シリーズ。
 第五弾を読んでいて、ケイシー・ベンジャミンのインタビューがあった。記事の煽りもんくは「今、最も聞かれてるサックス奏者と言えば、カマシ・ワシントンかケイシー・ベンジャミンか」。
 さっそくケイシーを聴いてみたくなった。しかしリーダー作はAmazon Music Unlimitedで見当たらない。この盤が手ごろか。

 本盤はロバート・グラスパーの3rdソロで、次に発表が"Black Radio"。独特のジャズ・ジャンルを作る前に、仲間と吹きこんだ。
 前半がトリオで、後半がエクスペリメント名義のカルテット。ドラムはクリス・デイヴで統一された。
 「重複ブッキング」と題して、彼の音楽性を二種類の編成で一枚に収めて表現した。
 トリオ編成は(6)のモンク以外はグラスパーのオリジナル、カルテット編成はほぼ他人の曲を演奏するのもグラスパーのこだわりか。

 ベースはトリオがヴィンセント・アーチャーで、カルテットのほうはデリック・ホッジ。さらにサックスでケイシー・ベンジャミンが加わるかっこう。綺羅星が揃った。
 なおカルテット編成はクエストラブ、Mos Def、ビラルといったヒップホップ組も味を添える。
 歌モノであってもクールだ。グラスパーは歌を主役にせず、音の一要素としてアレンジに封じ込めた。この方法論はブレイクビーツに近しいけれど、生演奏の躍動感は逸していない。

 前半のトリオ編成は思い切りオーソドックス。滑らかでエレピみたいにきれいな響きのピアノをグラスパーはロマンティックに提示した。
 スイングさせながらも流麗な欧州風味のリリカルさを外さない。指が回り丁寧なタッチで、柔らかくも熱さを明確には滲ませない。

 今でこそグラスパーのブランドで素直に聴けるけれど、先入観無しで聴いたらお上品なジャズと切り捨ててたかもしれないな。
 (6)でいきなり風景が変わり、ビバップ時代の荒々しく武骨な風景が、きれいに磨かれた音色で登場した。やはり和音感がグラスパーのオリジナルとは違うのか。

 クリスの突っつくようでタイトなドラムはやはり聴きもの。刻みながらも並行してソロを取り続けてるみたいな個性あるドラムだ。彼を聴くたびに外山明を連想する。外山ほどポリリズミックに寄らず、むしろブレイクビーツの人力処理がクリスの方法論だとしても。

 しかし曲がフェイドインとフェイドアウトしながら流れていくかのよう。テーマとソロって起承転結をつけず、流れる緩やかな大河から一場面をそれぞれ切り出し、無造作に並べたかのよう。

 カルテット編成の方はエレピに回り、ふんわりと空気がさらに柔らかさを増す。ケイシーのサックスもエフェクトがかかり鍵盤の一音源のように滑らかに溶け込んだ。
 サックスの音色は独特だ。エフェクトはしなやかに音色を変更する。ノイズや奇矯さが狙いではない。実音の幅を夢幻な風景に変換する。

 ボコーダーを使うケイシーの音使いとグラスパーのエレピが重なるさまはフュージョンに近しい。テクニカルなフレージングも含めて。でも明確に違うのは、気取りすぎてないところかな。曲を構成でがんじがらめに締め上げず、イマジネーションの趣くままに不安定な揺らぎを魅せた。
 ドラムとベースがきっちり刻むのに、全体のサウンドはいかにも自由だ。

 それにしてもこのアルバムは敢えてつかみどころを無くした。ライブとスタジオの空間を無造作に行き来する。地に足をつけたセッションでメリハリをつけず、まさにダブル・ブッキングのステージを同時変更で進めているかのよう。トリオとカルテット、の区分けではない。トリオの中で、カルテットの中で。


Track list
   Trio
1 Intro 0:30
2 No Worries 7:06
3 Yes I'm Country (And That's OK) 8:06
4 Downtime 5:21
5 59 South 6:11
6 Think Of One 9:12
   Experiment
7 4eva 2:16
8 Butterfly 6:00
9 Festival 10:02
10 For You 2:10
11 All Matter 6:33
12 Open Mind 8:34

Personnel:
Producer, Piano, Electric Piano - Robert Glasper
Bass Guitar - Derrick Hodge (tracks: 7 to 12)
Double Bass - Vicente Archer (tracks: 1 to 6)
Drums - Chris Dave
Saxophone, Vocoder - Casey Benjamin (tracks: 7 to 12)

on 7:Rap, Vocals - Mos Def
Voice - Ahmir '?uestlove' Thompson
on 11,12: Vocals - Bilal

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