FC2ブログ

難波弘之 「Party Tonight」(1981)

 SF趣味とシンフォ・プログレが高度に炸裂した。

 難波弘之の2ndソロ。難波を盛り上げるために、SFにも興味あった山下達郎が実質的にプロデュースした。CDのライナーによると、サウンド・バランスなど音作りは達郎の指示によるものだそう。
 とはいえポップ路線ではない。明確なプログレだ。

 音楽活動の前にSF作家としてデビュー済み、一の日会のメンバーだった難波が、前作"Sense Of Wonder"(1979)から、もっと趣味に走った充実作といえる。
   
 LPには書き下ろしの短編"Party Tonight"を収録して、イラストは元スタジオぬえの佐藤道明。トータル・アルバム性とプログレのコンセプチュアルな世界観を表現した。
 単なるSFファンの浮つきは無い。SFと音楽の現場で培った経験で、地に足の着いた素晴らしい仕上がりになった。

 SFの古典を曲にまとめながらも曲調はバラバラだった"Sense Of Wonder"に比べ、本作はピントがきっちりあった。特にA面のシンセを駆使した濃厚な音世界は抜群だ。
 A面ではディックの「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」を主題に、壮大な風景をテクニカルに描いてる。
 B面には静と動でダイナミックな明暗を表現したクラーク「渇きの海」があり。
 

 あとは基本的に難波の原作を自ら音楽化した。きれいなメロディが花開く(3)は名曲。
 歌モノは下手ではないけれど、わずかにピッチが揺れてもどかしさが残った。敢えて自分の色で染めたかった以降はよくわかる。ポップさをあいまいに終わらせなかったのが、達郎の手腕ということか。
 当時はメロウな鍵盤プログレと思っていたが、改めて聴き直すと(4)(5)(7)は70年代ソウル色が滲んでる。達郎のカバーで聴いてみたいなあ。なおコーラスで達郎の歌声も聴ける。

 サウンドは難波自身も含めて青山に伊藤に椎名と、当時の達郎バンドで作られてる。しかし(2)は田辺とそうる。すなわち実質的なSense of Wonderのデビュー盤ともいえる。(2)は一発録音で収録されたそう。勢いと緻密さが両立する良い演奏だ。

 趣味に走りながら音楽性を落とさない。SFとプログレ、両方にしっかりと愛情表現をした、味わい深く素敵なアルバムだ。雄大で美しい小宇宙を本盤は描いている。

Track list
1 Overture
パーマー・エルドリッチの三つの聖痕:The Three Stigmata Of Palmer Eldrich
2.a Eyes
2.b Hands
2.c Teeth
3 夢中楼閣:The Tower In My Dream
4 Party Tonight(地球を遠く離れて)
5 Lost Love (The Rainy Spaceport) (雨の宇宙空港)
6 A Fall Of Moondust
7 City Of Silver Gray(シルバーグレイの街)

Personnel:
Keyboards, Vocals – 難波弘之
Bass – 伊藤広規 (tracks: 3, 4, 6, 7), 田辺モット (tracks: 2)
Drums – 青山純 (tracks: 3, 4, 6, 7), そうる透 (tracks: 2)
Guitar – 椎名和夫 (tracks: 4, 7), 北島健二 (tracks: 3, 6)
Percussion – マック清水 (tracks: 4), 浜口茂外也 (tracks: 7), 山下達郎 (tracks: 3, 4, 7)
Chorus 椎名和夫, 難波弘之(tracks: 2), 山下達郎, 鈴木宏子, 和田夏代子, 吉田美奈子
Production Coordinator – 山下達郎

関連記事

コメント

非公開コメント