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Mogwai 「Atomic」(2016)

 きらめく繊細さと、鈍い重厚さを併せ持ったインスト・アルバム。

 モグワイが2016年に発表した本盤は、ジョン・カニンガムスがバンド脱退後の初アルバムで、Mark Cousins監督のドキュメンタリー"Atomic, Living in Dread and Promise"のサウンドトラック。

 ゲストにフレンチ・ホルンやバイオリン奏者などを加えながら、シンフォニックな音世界を作った。ポスト・ロックの文脈で括られるモグワイだが、プログレな風景が本盤には馴染む。
 録音とミックスはトニー・ドゥーガン。"Mr Beast"(2006)ぶりか。

 シンプルなタイトルは大なり小なり原子力がらみ。原爆などがテーマのドキュメンタリーらしい。
 (1)は"エーテル",(2)は原子炉が緊急停止した状態の"原子炉スクラム"の単語。
 (3)は「遠心分離機の苦み」とでも訳すのだろうか。
 (4)は"ウラン235"、(5)の"プリピャチ"はチェルノブイリ原発に近いウクライナの地名だ。
 (6)は"弱い核力"のことで、素粒子間で作用する四つの基本相互作用の内の一つだそう。
 (7)と(10)は広島と長崎に落とされた原爆の通称。(8)の「お前は踊り子か?」はドキュメンタリーの内容に触れたものか。よくわからない。
 そして(9)は"皇帝の核爆弾"、旧ソ連が開発した最大の水爆の通称。

 政治的、もしくはメッセージを超えた自己主張はない。あくまで真摯にテーマに沿って激しくも美しい音楽をモグワイは紡いだ。
 バンド・サウンドの轟音と、エレクトロニカの静かな打ち込みビート、双方を組み合わせて。
 メロディは静かに広がり、淡々と抽象的に漂う。むやみに感情的に振れない。冷静に音楽をモグワイは作り、提供した。
 穏やかなムードと、空気を貫く強さ。厳かで少し切ない。
 サントラとして細かな指定があったのか、バラエティに富み沈鬱さも控えめ、むしろ前向きな方向感のほうが強い。

 バンドのオリジナル・アルバムとして意思は少ないのかもしれないが、モグワイらしい壮大な音像は楽しめる。


Track list
1 Ether 5:10
2 SCRAM 5:41
3 Bitterness Centrifuge 4:51
4 U-235 4:34
5 Pripyat 4:19
6 Weak Force 5:08
7 Little Boy 3:52
8 Are You A Dancer? 3:53
9 Tzar 5:13
10 Fat Man 5:58

Personnel:
Mogwai
Barry Burns, Dominic Aitchison, Martin Bulloch, Stuart Braithwaite

Robert Newth - french horn (1)
Luke Sutherland - violin (8)
Robin Proper-Sheppard - guitar (9)

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