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Tower Of Power 「In The Slot」(1975)

 ダンサブルさと歌モノを両立させた良盤。

 前作"Urban Renewal"(1975)からほぼ半年後にリリースされた本盤では、フロントが変わった。レニー・ウィリアムズがソロ歌手志向でバンドから抜けてしまう。新たなボーカリストはHubert Tubbs。もっとも彼は本盤だけ。次のスタジオ作"Ain't Nothin' Stoppin' Us Now"ではToPから去っていた。

 ドラムはデビッド・ガリバルディが復帰。前作では1曲しか叩かない奇妙な立ち位置だったけど。そしてガリバルディも"Ain't Nothin' Stoppin' Us Now"ではいない。
 本盤のバックボーカルには前作でメインのドラマー、David Bartlett。そして"Ain't Nothin' Stoppin' Us Now"で叩くRon E. Beckの二人がコーラスとしてクレジットあり。
 メンバー編成を伺わせる顔ぶれになった。

 ToPそのものも実質的に本盤でワーナーと契約が切れる。正確にはこのあとに"Live and in Living Color"(1976)はあるけれど。契約消化っぽい。
 ファンクの全盛期はもう少し続くけれど。ディスコの波が近づいて、ToPの失速が始まっていた。

 収録曲はメンバーそれぞれが持ち寄った格好。エミリオ・カスティリョとステファン・カプカのコンビが軸だとしても、統制まではたどり着かなかった。レニー・ウィリアムズの作曲クレジットが(2)にあるあたり、脱退前の新曲をあまり深く考えずに本盤へ投入したようだ。

 だが本盤の出来は決して悪くない。濃密で隙の無い大傑作"Back to Oakland"から、少し粗削りの"Urban Renewal"を経た本作は、歌も演奏も溌剌として、メロウさも不自然さのない出来のいいアルバムに仕上がった。

 これは皮肉なことに、ボーカリストの変化が大きな要因といえる。ハイトーンで硬質な歌声のレニーに比べて、ハバート・タブスの歌声はもっと情感的だった。
 張る声もばっちりで、なおかつ柔らかく歌いかけることもできる。この表現豊かな歌唱力で、サウンドにふくらみを持たせた。(11)のようにメロウな曲も彼の歌声が効果的に響く。

 振り返ると、ハバートが本盤のみで脱退は惜しかった。
 正確には、次のライブ盤"Live and in Living Color"も彼のボーカルだが。

 ToPを去った後のハバートは、いくつかのアルバムに参加しつつも華々しいソロ活動はないようだ。09年すぎまで活動を続けてたみたいだが。

 さて、本盤。歌モノの確かさな一方で演奏のタイトさもしっかりアピールした。ファンファーレからつながる"On The Serious Side"が、短い曲ながらも集中力ある傑作。
 これも萩原健太がNHK"ミュージックシティ"でDJやってるときジングルに使ってたっけ。最初、誰の曲かわからずに聴いていた。その何年もあとに、ToPをあれこれ聴き進るなかで本曲へぶち当たり、驚喜したものだ。
 
 続く(7)もファンキーな演奏が素晴らしい。ジャズでなく、ロック寄り。リズムは跳ねており、ファンクと素直に聴けばいいか。チェスター・トンプソンの鳴らしまくるオルガン・ソロが抜群だ。テクニック披露に走らず音色と勢いだけで突っ走った。
 この作曲もチェスター自身。彼の活躍が目立つ一枚、とも言える。

 プロデュースにエミリオの名前が冠され、リーダーシップは手放してない。けれどもメンバー全員がむしろのびのびとToPってブランドの中で個性を出して楽しんでる。良いアルバムだ。

Track list
1 Just Enough And Too Much 3:25
2 Treat Me Like Your Man 3:08
3 If I Play My Cards Right 3:12
4 As Surely As I Stand Here 5:15
5 Fanfare: Matanuska 0:16
6 On The Serious Side 2:51
7 Ebony Jam 6:44
8 You're So Wonderful, So Marvelous 3:51
9 Vuela Por Noche 1:34
10 Essence Of Innocence 0:36
11 The Soul Of A Child 4:58
12 Drop It In The Slot 3:13

Personnel:
Hubert Tubbs - lead vocals
Bruce Conte - guitar, background vocals
Chester Thompson - organ, bass pedals, acoustic piano, clavinet, ARP String Ensemble, background vocals
Francis Rocco Prestia - bass guitar
David Garibaldi - drums
Lenny Pickett - 1st tenor sax, alto sax, soprano sax, all sax solos, piccolo, clarinet, contrabass clarinet, lyricon
Emilio Castillo - 2nd tenor sax, background vocals, (co-lead on "You're So Wonderful, So Marvelous")
Steve Kupka - baritone sax
Mic Gillette - trumpet, trombone, flugelhorn, piccolo trumpet, bass trombone, background vocals
Greg Adams - trumpet (solo on "Vuela Por Noche"), flugelhorn (solo on "Ebony Jam"), string arrangements and conductor
Additional background vocals: Bootche Anderson, Marilyn Scott, Pepper Watkins, David Bartlett, Ron Beck, Frank Biner and Roger Rifkind

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