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Prince& 3RDEYEGIRL 「PlectrumElectrum」(2014)

 肉体感覚を生かした、もう一面のプリンスをバンド名義で表現した。

 同時発売した"Art Official Age"(2014)では、Joshua A. M. Weltonを共同プロデューサーに据えて自らの音楽を自由に、当時の流行りに沿わせた加工を許したプリンス。
 自分の才能の枯渇や、肉体性の放棄とは誰にも言わせたくなかっただろう。本盤を同時発売することで、現役感と肉体性の確かさも明確に表現した。
 さらに3RDEYEGIRL名義にすることで、若い才能の引き上げと表現の多様性も目指して。
 "Purple Rain"の頃は自分とその周辺って対比構造を明確にして、自らのイメージを高めたけれど。この時点でプリンスは敢えて自分を飾る必要はない。むしろ幅の広さでアピールした。

 今だから思うけれど、意外と"Art Official Age"は起死回生だったのではないか。オリジナル・アルバムとしては4年ぶり。人気は確かなものだが、すでにオールド・タイム扱いされていた。逝去の時"Purple Rain"が溢れたように、世の一般的な評価は80年代で終わっていた。

 プリンスは既に終わっていた、との当時のイメージ。リアルタイムで聴いてた人なら、頷くはずだ。幅広く根強いファン層がおり、高い評価を受けるのとは別次元でプリンスは期待されながらも猛烈な先鋭性をアピールできなかったのが、2010年代だ。
 死んでしまったからこそ、神格化されているのが現状だが。だからこそ逝去した直後で、プリンスが持てはやされぶりには違和感が残る。

 とにかくそんな雌伏の時期。プリンスは牙を溜めながら創作活動にいそしんだ。
 そして本盤。ヨシュア・ウェットンに弄り倒させた"Art Official Age"と対比の形で、生々しいロックなプリンスを本盤でのびのびと表現した。

 3rdEyeGirlのプロジェクトは本盤の2年前、2012年の12月に始動した。13年の3月には(4)のビデオが早くも配信される。今では見当たらない、かな。レコーディングは2013年に行われたらしい。未発表曲に"Check The Record","Pulla Wagon","Shade Of Umber",リメイクで"Breakdown"があったとPrince Vaultには記載あり。
 
 アルバム制作と並行してツアーあり。もともとIda Nielsenは当時のプリンスのバックバンドのメンバー。2013年4月から5月25日まで"Live Out Loud Tour"と銘打ち、34公演でカナダから西海岸を回った。
 ほとんどの日が二公演。しかしキャパは1000人そこそこの中箱クラス。あまり派手にせず、バンドの仕上がりを確かめるようなこじんまりなツアーだったようだ。

 全12曲。5分越えは無く、演奏を無闇に引っ張らずコンパクトなロックが並ぶ。タイトルはスペースを取りさり一語にまとめることで神秘性を演出する。
 (9)のみアリス・スミスのカバー("She"(2013)に収録)、あとはプリンスの曲。もしかしたら3RDEYEGIRLのアイディアも鷹揚に取り入れてるかも。

 
 あくまでも主役はプリンスだが、ボーカルをメンバーにも割り当てて殿下のワンマン色を極力減らそうとしてる。どうやってもプリンスが主導ってイメージは、消せないのだけれど。
 さらに(12)は"Art Official Age"にも収録。同時発売と聴き比べさせることで、多彩さを表現した。

 (1)はLiv Warfieldのアルバム"The Unexpected"(2014)にプリンスが提供曲をセルフ・カバー、な時間軸らしい。本盤収録のテイクは、ぐっと整理されてしなやかで強靭なイメージが強調されている。ひねりまくったリヴの節回しよりも、素直に素敵なテイクでぼくは本盤のほうが好きなテイクだ。
https://www.youtube.com/watch?v=KUSIJ-pd8ro
 まるで時候の挨拶みたいなシンプルな歌詞を、見事に歌に仕上げる手腕も素晴らしい。のびのびと滑らかなプリンスの歌声を、3RDEYEGIRLのコーラスが鮮やかに飾る。平歌は静かに、サビでは激しく。メリハリつけたアレンジが良い。

 一気に叩ききり、無伴奏コーラスの(2)に続ける流れも見事。こういうセンスがプリンスは冴えている。ザクッと刻むギターと重たいリズムを軸にねっとりビートを漂わせて、シンプルなファンクに仕立てた。
 ざらついた声質で、吐き出すように歌う声はまさにプリンス印。誰にもまねができない。むしろひねりのない3RDEYEGIRLのハーモニーが主旋律を引き立てた。

 (3)はボーカルを3RDEYEGIRLに任せ、歪んだギターを全面にばら撒く。曲としてはあっけなく終わってしまう。意図かは不明だが、プリンスのエレキギターがやたら目立って、長めのインタルード風にも感じてしまった。引き立てつつも自己顕示が結果的に出てしまう。プリンスの皮肉かつ突出した才能ぶりは、こういう曲を聴くと実感する。
 
 (4)もギター・リフがシンプルに空気を切り裂いた。クレジットはバンド名義だが、実際はメンバーであるDonna Grantisの曲らしい。唐突に場面転換が1:40あたりであるけれど、編集だろうか。
 インスト曲で、ハード・ロックに乗ったリフを軸にギターを弾きまくる曲。本盤に先立つ2013年の3RDEYEGIRL名義なツアー、"Live Out Loud Tour"でも披露されていた。
 ジャム一発で、いくらでも盛り上がりそう。本盤でも長めな5分弱の尺を取ってギター・バトルが聴ける。バンドっぽい雰囲気が強い。

 (5)は一転してメロウな曲。Hannah Fordがリード・ボーカルを取る。プリンスのデモを伺わせる、微妙に揺れる節回しが良い。プリンスほど色気を出せず、むしろ訥々とハンナは歌った。その素朴さも込みで、この曲はキュートに響いた。
 ギターはアルペジオで静かに飾り、肉厚なドラムにベースが絡む。滑らかなメロディは感情を溢れさせず、しっとり夢見心地なファンクネスを魅せた。

 再び(6)でギター・ロック。エフェクタで迫る効果をイントロに入れて、少し電化を混ぜる。終盤でテンポが変わり、ブギ風に盛り上がった。
 この曲も"Live Out Loud Tour"でお披露目済み。

 (7)はエレクトロ風味が強い。ギターも思い切り歪んだ音色に加工された。ラップが飛び交うヒップホップな楽想で、この曲あたりは本盤でも録音やミックスにクレジットされてるJoshua Weltonの趣味が付与されてるようにも思える。
 ラップを務めたLizzoとSophia Erisは地元ミネアポリス出身らしい。あくまでもプリンスは身内のアピールを心掛けた。
 主旋律はありそうでない。リズム・パターンとコーラスのリフで成立させた小品。あえてこういう曲に自分の声を載せないあたりが、プリンス流な自己ブランドの差別化か。

 (5)に続くメロディアスなミドル・テンポの(8)。今度はHannah Welton-Fordがメインで歌う。えこひいきせず、メンバーそれぞれに見せ場を作るプリンス。なおこの曲では背後にうっすらとプリンスが歌をなぞった。ハーモニーもプリンス印で、ふわふわとサイケに揺れる。
 さりげなくあっさりした曲。打ち込み中心の軽やかなエレクトロニカなトラックに、ギターの歯切れ良いカッティングが彩りを添えた。リズミックさをわざとか控えて、キュートなこじんまりぶりを演出してる。ブレイクですぱっとリズムを切るセンスもDJ風でかっこいい。

 (9)は前述の通りカバー曲。だがさほど違和感がない消化っぷりがすごい。プリンスがじわじわと語るように歌いかけ、サビで炸裂した。
 確かに他の曲に比べればストレートでひねりのないメロディ。しかしプリンスが歌うことで独特の揺らぎが付与されている。
 アレンジはシンプルなギター・ロック。けれどもギターをあちこちダビングして浮遊さを表現した。一ひねりしており、決して勢い一発ではない。

 (10)はテンポを抑えめ。単純なエイトビートのドラムをループっぽく回して、上物はギターを揺らし美しさを表現した。
 なおこのアルバム、ペイズリー・パークだけでなくロンドンでも一部録音とある。場所はブライアン・フェリーのスタジオ、Studio One。コクトー・ツィンズを意識した曲らしい。この曲が、そこで録音と言われる。
 階段状にくきくきと跳ねる、乾いたノリの夢見心地なポップス。

 激しいギター・ロックに(11)で戻した。70年代のプリンスを連想する、2ビートでぐいぐい迫るパターンだ。シンセよりもギターで厚みを出す一方で、なんだかギターの本数が一杯あるように聴こえる。
 リズム一発録音で終わりにせず、たくさんダビングをしていそう。

 最後の(12)が"Art Official Age"にも収録曲。こちらはグイグイ煽るファンク仕立て。ボーカルをギュッと潰して往年のカミールを連想した。曲もシンプルなため、もしかしたら当時のアウトテイクだったりして。そういう記録はどこにも残っておらず、この時期の新曲として扱われているが。
 アルバムの締めにはいささか軽い。あまり構えず、あっさりとまとめた。

 "Art Official Age"と比較して優劣をつけるのはナンセンスだ。とはいえ"Art Official Age"に無い肉体性が本盤には詰まった。
 ひさしぶりにプリンス印のディストーションかかったギターをいっぱい聴ける良盤。
 

Track list
1 Wow 4:27
2 Pretzelbodylogic 3:26
3 Aintturninround 3:01
4 Plectrumelectrum 4:51
5 Whitecaps 3:42
6 Fixurlifeup 3:12
7 Boytrouble 3:52
8 Stopthistrain 3:40
9 Anotherlove 4:15
10 Tictactoe 3:38
11 Marz 1:48
12 Funknroll 4:09

Personnel:
Prince - all vocals and instruments, except where noted

Hannah Welton-Ford - lead vocals and drums
Ida Nielsen - bass guitar
Donna Grantis - guitar

Lizzo - rap on Boytrouble
Sophia Eris - rap on Boytrouble
Joshua Welton - background vocals on Stopthistrain

Recorded By, Mixed By Ben Muhlethaler, Chris James, Jamie Lewis, Joshua Welton

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