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TZ 8348:John Zorn "49 Acts Of Unspeakable Depravity In The Abominable Life And Times Of Gilles De Rais"(2016)

 タイトな疾走と、ドラマティックな展開で小宇宙を作った。

 ロック要素を振りかけたオルガン・トリオ編成で、ジョン・ゾーンの疑似バンドの一つSimulacrumの5作目。疑似バンドの本質は、アルバムや音楽性の根本にメンバーの意思が希薄なところ。ミュージシャンの内的衝動や音楽興味でアルバムが作られるのでなく、あくまでゾーンの意思を体現に過ぎない。

 本盤の尖った様相や頻出する場面転換、組曲形式の構成も指揮を務めるゾーンのコンセプトによる。
 表題である「Gilles De Raisのひどい生涯での、口に出せない堕落した49の行為」の、ジル・ド・レとは15世紀にフランスで百年戦争に従事した貴族であり元帥。
 1429年のオルレアン包囲戦でジャンヌ・ダルクに協力した。
 しかし子供の虐殺などをその後に行い、1440年に絞首刑に処された。いかにもオカルトやグロテスク趣味なゾーンらしいテーマだ。鋭い音色と激しい展開で彼の残虐さを描いたか。

 生涯をそのままなぞるタイトルでなく、無理に曲そのものを49に分けてはいない。ゾーンのことだから数秘術的に作曲構造へ何らかの意味を持たせてるかもしれないけれど、そこまでぼくの耳では聴き分けられず。
 オルガンを前面に出すトリオでなく、三者が対等に暴れていく。全10曲の作品集で、パンキッシュなリズムにエレキギターが暴れ、流麗にオルガンが空気を切り裂いた。

 壮烈ながらロマンティックな美しさを内包する楽曲が続き、なおかつ隙間なくばらまかれた音列が鋭く場面転換した。
 アドリブ要素があるにしても、基本は隅々まで構成されている。バンドというよりこの編成を使った、ゾーンの譜面モノと解釈もできそうな仕上がりだ。

 これは血が通っていないって意味ではない。ゾーンの疑似バンド全てに言えることだが、どんなに構築されようとも、まるでセッションのように生き生きした躍動感を保持するところがすごい。
 この音盤もしかり。ルインズみたいに変拍子と複雑な構成の嵐だが、危なっかしさは皆無。猛烈なテクニックなのにさりげなく披露して、力任せにてんでな演奏っぽく暴れた。
 ぱっと聴くと適当に弾き鳴らしてるかと思わせて、実は手癖やいい加減なところが無い。

 Simulacrumの中ではとりわけ制御された一枚で、ぐいぐいとゾーンの世界観に絡めとられた。
 三人の楽器をフラットなバランスでミックスして、伴奏とリード楽器の立ち位置は明確にしない。繰り返し聴いてると、バンドっぽさよりもゾーンのコンセプト・アルバムを本編成で体現って気になる。つまり本編成を使ったゾーンの作品って色合いが強い。

 演奏はばっちり。吸い付くように譜割を揃えるテクニックと、アドリブのフレーズを垂れ流しにしない集中力は本作でも堪能できる。

Track list
1 Scene 1: At The Very Gates Of Hell 3:18
2 Scene 2: Angelic Voices 4:17
3 Scene 3: And To The Brimstone, Fire 3:25
4 Scene 4: Dark Pageant 3:36
5 Scene 5: The Tetragrammaton Labyrinth 3:02
6 Scene 6: A Cruel Ecstasy 3:24
7 Scene 7: Image Of The Beast 2:53
8 Scene 8: Dance Macabre 5:30
9 Scene 9: Descent Into Madness 7:35
10 Scene 10: The Holy Innocents 5:00

Personnel:
John Medeski: Organ
Kenny Grohowski: Drums
Matt Hollenberg: Guitar

Composed, Arranged , Conducted By John Zorn

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