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Beth Gibbons & Rustin Man 「Out Of Season」(2002)

 淑やかに病んだ、奥深いモノトーンの風景が美しい。このデュオによる唯一の盤。

 ポーティスヘッドのベス・ギボンズがトーク・トークのポール・ウェブ(本盤ではラスティン・マンの別名)と組んだデュオ。結局、この盤だけの共演に終わった。ベス・ギボンズのソロ活動も現在に至るまで音盤としては積極的に成されておらず、唐突かつ瞬間的な邂逅に終わった。

 ギボンズのキャリアで見ると、ポーティスヘッドの2nd"Portishead"(1997)を発売後、充電期間中に本盤が作成された。
 いっぽうのウェブはトーク・トークを92年に解散。O.rangを結成し、2枚のアルバムを発表後に本盤へ至る軌跡になる。

 (4)をギボンズ、(5)をウェブが単独で作曲した以外は、本盤の全曲が二人の共作だ。どれもメロディこそきれいだが、派手な起伏やポップな世界には行かない。内省的にずぶずぶと沈み込んでいく。

 アコースティックが基調の演奏で、オーケストレーションが丁寧に施された。ポーティスヘッドに通じる耽美な楽想だが、エレクトロニカな音色は限定的。ヒップホップの緊張や、打ち込みビートの酩酊感もない。

 もっとも楽想こそアコースティックだが、コーラスの感触にはエレクトロニカの緻密な配置が感じられる。
 さらにいうと生楽器で作り上げつつも、プロトゥールズで徹底的に追い込んだかのような細やかなミックスだ。実際のところは知らないが。

 ナルシスティックな、あるいは傷ついた自分を慰めるような他者を廃する内省さとは違う。他者を囲い込まず自らの世界に籠るよりも、単に内へ内へと沈み込むさまを、客観的に見せつけたかのよう。
 ときおりドラマティックにギボンズは歌う。その大仰さこそが芸になりそうなのに。あまり極端さを追求せず、か細く乾いた声質がそっと伴奏に乗る。
 
 一方の伴奏も、打ち込み仕立ての音楽に反発して、生楽器中心に演奏してみたって単純な構図とも違う。(6)や(10)のように電化した場面も登場はするが、基本は生楽器。
 けれど起伏や抑揚は存在しながら、雑味すらも人工的に付与したかのよう。
 方法論はアコースティックだが、テクノっぽく丁寧に演奏が制御されている。フォーク風の弾き語りな(7)すらも。

 演奏はウェブの独壇場というわけでもないらしい。デュオの必然性は薄い。音楽よりも人間的な付き合いで産まれた盤なのかも。
 (7)や(10)はギボンズ自らが録音まで担当している。
 
 幻惑させるオーケストレーションを用い、派手さや夢見心地のサイケを狙わない。もっと怜悧な知性が本盤には満ちている。美しいメロディを繊細なアレンジで操り、ふくよかで、端正な風景を細密画のように描いた。
 壊れそうなバランスで、見事に音像を組み立てた素敵なアルバム。
 

Track list
1 Mysteries 4:38
2 Tom The Model 3:40
3 Show 4:27
4 Romance 5:09
5 Sand River 3:51
6 Spider Monkey 4:10
7 Resolve 2:51
8 Drake 3:54
9 Funny Time Of Year 6:48
10 Rustin Man 4:18

Personnel:
Paul Webb - Percussion, Piano, Accordion, Arrangements, Electric guitar, Keyboards, Background Vocals
Beth Gibbons - Acoustic guitar, Arrangements, Vocals, Vocoder

Rebecca Lublinski - Flute
Rachel Samuel - Cello
John Baggott - Piano, Wurlitzer
Gary Baldwin - Organ
John Barclay - Flugelhorn
Martyn Barker - Percussion, Conga
Mark Berrow - Violin
Rachael Brown - Background Vocals
Lurine Cato - Background Vocals
Ben Chappell - Cello
Clive Deamer - Drums, Tympani
Philip Dukes - Viola
Simon Edwards - Bass guitar, Double Bass
Mark Feltham - Harmonica
Andrew Findon - Alto flute
Pete Glenister - Acoustic guitar
Leo Green - Horn Section
Lee Harris - Drums
Nick Ingman - Conductor, Orchestration
Mitchell John - Background Vocals
Patrick Kiernan - Violin
Boguslaw Kostecki - Violin
Peter Lale - Viola
Martin Loveday - Cello
Neill MacColl - Acoustic guitar, Ebow
Perry Mason - Violin
Lorraine McIntosh - Background Vocals
Frank Ricotti - Vibraphone
Eddie Roberts - Violin
Nina Robertson - Alto flute
Joy Rose - Background Vocals
Mary Scully - Double Bass
Chris Tombling - Violin
Jonathan Tunnell - Cello
Adrian Utley - Organ, Acoustic guitar, Bass, Guitar, Electric guitar, Moog synthesizer, Ebow, Baritone guitar
Bruce White - Viola
Dave Woodcock - Violin
Gavyn Wright - Violin
Warren Zielinski - Violin

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