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Phish 「Live Bait Vol. 13」(2017)

 約4時間。これを入門編と捉えよう。


 ジャム・バンドへハマるのは敷居が高い。ベテラン・バンドならば膨大なスタジオ・アルバムがリリースされ、ライブ音源は湯水のごとく。今の時代、CD以外にもネットに音源が溢れてる。
 ジャム・バンドならばたいがいは録音許可のため、かなりの音質なオーディエンス録音が一杯。即興が売りの音楽業界だから、演奏時間も長い。一本のライブが2時間越えもざら。
 するとどうなるか。どこから聴いて良いか分からないし、どれだけ聴いても網羅できない。
 
 趣味に効率を求めるのは意味がないけれど、程度問題。例えば100時間分のライブ音源があったら、どの10本が内容良いかなって思うのは人情だ。演奏は機械仕掛けじゃない。調子や出来不出来はどんなにうまくても絶対にあるから。
 そして100時間分の音源ってのも、ちょっと活発に活動してるバンドなら不思議でも何でもない。

 ぼくがジャム・バンドに興味を持ったのはけっこう前。一番聴いてるのがPhishだ。"Slip Stitch and Pass"(1997)を新譜出たまたま買って、このジャンルに興味を持った。
 グレイトフル・デッドにはちなみにハマらなかった。ヒッピー文化にシンパシーを感じなかったため。聴いてはいるし、好きな音源もある。けれどアメリカのカントリーなども取り込む奥深さと、レイドバックした雰囲気、多めの編成が醸し出す深いアンサンブルに敷居が高く感じてしまった。

 その点、Phishは分かりやすかった。メンバーは4人だけ。トレイ・アナスタシオ(g)がフロントで明確に立ち、即興ではペイジ・マッコネル(key)が色を添える。
 マイク・ゴードン(b)とジョン・フィッシュマン(ds)はリズム役を真摯に務め、むやみにソロ回しや手数を振りまくことはない。
 もちろん単に刻むだけでなく、フィルや展開のきっかけはいっぱいマイクもジョンも出す。リズム+フロントの構図でなく、4人が絡み合う充実したジャムがPhishの魅力だ。

 音楽スタイルも分かりやすかった。ブルーズ色は希薄でカントリー要素も味付け。ソウルフルさも控えて、ジャズ要素も薄い。
 ロックを軸にタイトな展開で、なおかつ奔放なインプロ展開。フュージョンのようにテクニック志向ではなく、フレーズや展開の突飛さが売りでもない。手癖はある程度回避してるようだが、基本的にはイマジネーションの趣くままに滑らかなジャムが広がり、ひたすら気持ちよかった。

 ぼくがPhishにハマった時期も良かった。インターネットはブロードバンド前夜。前にも書いたが、毎夜にテレホを使って夜更けから夜明けの寝てる時間、パソコンをつけっぱなしにしてMP3を落としたものだ。今のネット環境とは比べ物にならない細さだった。一晩の音源を落とすのに、一晩か二晩かかった記憶がある。

 ここまでが昔話。さて、今のPhishはと振り返ると、膨大な音源にくらくらする。かなり初期からPhishはInternet Archiveを使わない。テーパー音源の流通を抑えさせるかのよう。
 業界でも早い時期に、自分の通販サイトで全ライブ音源をDL販売するようになった。
 
 すると予算に限界がある身としては、Phishばかり投資もできない。04年の解散宣言でいったん気持ちに区切りが出てしまう。08年の再結成音源は直後に聴いたが、かなりPhishに距離を置いていた。
 そして最近、振り返ってPhishを聴こうと思うと、昔以上に膨大な音源が出ており手が付けられない。
 最新音源は"The Baker's Dozen: Live At Madison Square Garden"で、36枚組のCD Boxだ。すげえな。

 ということで、本盤だ。Phishは自らの通販サイト、Live Phishで無料音源のライブ詰め合わせを"Live Bait"と銘打ち、たまにリリースしていた。これは2017年発売の第13弾。
 2017年夏にNYのマジソン・スクエア・ガーデンでの13Days公演を控えて、景気づけに発表された。
https://www.jambase.com/article/phish-shares-live-bait-vol-13-compilation-announces-bakers-dozen-webcasts
 音源はここで落とせる。
http://www.livephish.com/browse/music/0,1158/Phish-mp3-flac-download-Live-Bait-Vol-13

 ほぼMSGでのライブ音源をまとめたコンピで、97年から14年まで幅広い時期から選ばれている。大晦日に演奏が恒例だった時期もあり、ほとんどが12月末の録音だ。

 通して聴くと約4時間。けっこう長い。一気に聴かず、通勤時間とかに細切れで聴いても楽しめる。30分くらいの長尺音源も数曲あり、ラッシュに揺られながらPhishに浸る気分も悪くない。
 
 アルバムのまんなかに"Icculus"を置いて構成にメリハリをつけた。

 選曲は様々な時代から選ばれている。長尺と言えばYEMだろ、って期待も(12)で応えて、ちゃんとわかってる選曲。
 
 時代を飛びながらの選曲だが、演奏スタイルに大きな違和感はない。Phishは最初からタイトで、しなやかだった。
 ライブ音源を通して聴いていると、ライブそのものの流れを意識する。しかし本コンピでは、長尺ジャムの魅力だけを、がっぷりつかみ取った。Phishの魅力のコクを掴める。

 確かに長い。けれど、ある程度の長さをかけないとPhishの、ジャム・バンドの魅力は分からない。
 ということで、本盤は入門編と敢えて位置付けてみた。
 敷居は高い。でも越えて進んだら、素敵な世界が待っている。

Track list
1. The Wedge (7/20/14 FirstMerit Bank Pavilion at Northerly Island, Chicago, IL) 14:46
2. Run Like An Antelope (7/18/93 I.C. Light Amphitheater, Pittsburgh, PA) 14:54
3. Tube (12/29/97 Madison Square Garden, New York, NY) 10:36
4. It’s Ice > Kung > It’s Ice (12/30/95 Madison Square Garden, New York, NY) 9:25
5. Piper (12/30/11 Madison Square Garden, New York, NY) 15:15
6. Icculus (12/31/13 Madison Square Garden, New York, NY) 5:23
7. Mike’s Song > Swept Away > Steep > Weekapaug Groove (10/22/96 Madison Square Garden, New York, NY) 21:13
8. Light > Party Time (12/30/16 Madison Square Garden, New York, NY) 22:49
9. Carini > Wolfman’s Brother (12/28/98 Madison Square Garden, New York, NY) 37:23
10. Ghost (12/31/10 Madison Square Garden, New York, NY) 14:10
11. Tweezer (12/30/94 Madison Square Garden, New York, NY) 22:30
12. You Enjoy Myself (12/4/09 Madison Square Garden, New York, NY) 21:14
13. No Men In No Man’s Land > Auld Lang Syne > Blaze On (12/31/15 Madison Square Garden, New York, NY) 38:30

Personnel:
Trey Anastasio - guitars, vocals
Page McConnell - keyboards, vocals
Mike Gordon - bass guitar, vocals
Jon Fishman - drums, vocals

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