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Mogwai 「Mr Beast」(2006)

 シンプルに轟音ロックの快感を追求した充実作。

 前作"Happy Songs for Happy People"(2003)同様にトニー・ドゥーガンをプロデューサーに据えて43分のしなやかでハードな世界を作った。
 あまりゲストを呼ばず、バンド・サウンドを描く。あからさまな轟音ギターを冒頭から配置してメリハリを付けた。今作も長尺の曲は無い。キャッチー・・・とは言いがたいが少なくともこれまでのキャリアで、もっとも取っつきやすいアルバムに仕上がった。

 ミニマル要素はむしろレイドバックした感覚に繋がる。明るく穏やかな風景を、轟音ノイジーの中でも滲ませた。
 空気を重たく切り裂いても、残虐もしくは冷徹な感じはない。もっと暖かいパワーを感じる。しかもサイズがこじんまりと可愛らしい。一つ一つがすとんと胸へ軽やかに滑りこんでくる。
 そう、本盤は轟音の歪みが吼えていても、洗練されたまとまりがある。
 
 当時のインタビューによると、轟音と静寂を交互に繰り出す緩急が業界で陳腐化したため、敢えて外した方向性を狙ったそう。簡単なカタルシスを狙っていないわりに、とてもこの盤がポップに聴こえるのが興味深い。
 明確なメロディも分かりやすいアレンジも、特に強調していないのに。コンパクトな楽曲で次々と楽想が変化することで刺激が持続するためか。

 アンサンブルが結びついて音像を作る。ドラムかギターが軸になって引っ張るのではない。むしろ有機的に各楽器が掛け合うように絡み合い、静かなグルーヴを滲ませた。
 鍵盤がくっきりと鮮烈に鳴り、歪んで幅広い降り注ぐギターで開放感を出すアレンジが快感だ。

 (9)では唐突に日本語の朗読が登場。これまで異物、別世界として捉えてきた世界が急に意味性を持つ。聴きこむにつれて、耳に馴染むのだけれど。
 逆にモグワイにとっては異世界の幻想感を、彼らにとって外国語を挿入することで出したかったのだろう。逆説的に、輸入文化としてロックを聴く気分を提示された気分で面白かった。

 そして最後はとりわけ重厚なノイズ・ギターの壁で、強固に固めた風景を提示して幕を下ろす。
 アルバムは50分とほどよいボリューム。繰り返し聴くたびに愛おしさが増す傑作。
 

Track list
1 Auto Rock 4:18
2 Glasgow Mega-Snake 3:35
3 Acid Food 3:40
4 Travel Is Dangerous 4:01
5 Team Handed 3:58
6 Friend Of The Night 5:30
7 Emergency Trap 3:31
8 Folk Death 95 3:34
9 I Chose Horses 5:13
10 We're No Here 5:39

Personnel:
Stuart Braithwaite - guitar, vocals on "Acid Food"
Dominic Aitchison - bass guitar
Martin Bulloch - drums
John Cummings - guitar
Barry Burns - piano, guitar, flute, vocals on "Travel Is Dangerous"

Craig Armstrong - keyboard on "I Chose Horses"
Tetsuya Fukagawa - vocals on "I Chose Horses"
Tony Doogan - producer

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