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Mogwai 「Come On Die Young」(1999)

 ねっとりと、しかし諦念でなく前向きなトータル・アルバム。

 モグワイの2ndはBrendan O'Hareが抜け、前作でゲスト参加だったBarry Burnsが正式参加、その後に続くメンバーがそろった。
 本盤のプロデュースはマーキュリー・レヴのデイブ・フリードマン。イギー・ポップのインタビューをサンプリングした(1)からメロディアスな(2)、そしてアジテーションめいた語りにかぶせた(3)と、ずぶずぶ音楽世界へ引きずり込むアルバムだ。

 リアルタイムで聴いたときは、暗くて重たい作品だな、と思った。ベースのDominic Aitchisonがホラー映画のように凄んで笑うジャケットも含めて。実際、このデザインは"エクソシスト"を意識らしい。
 ポスト・ロックに分類されるモグワイだが、当時はあまりジャンルを意識せず聴いていた。このバンドの本質が分からずに聴いていたんだな、と思う。

 約20年たった今聴き返すと、ずっしりとテンポが緩やかな世界観はプログレ的な物語性、トータル性を意識かなと思い始めた。 
 ジャンル分けとよりも、音色や雰囲気へのこだわりだろう。歪み、破裂しそうな緊張感を秘めたサウンドは、安易な炸裂や快感原則に逃げない。
 ドラムがアレンジの中心を占め、リバーブを背負って明確に芯を作った。ギターは歪みを無闇に強調せず、クリーンなトーンも混ぜる。ノイズが欲しいならば(9)の終盤、壁を塗りつくす硬質な響きに浸ればいい。

 音数多いアレンジながら、受ける印象はすっきりと涼やかだ。爽やかな風景ではない。闇と霧が似合う。
 モタリ気味に溜めるリズムへ、軽くぶら下がるようなベースやギター。開放感とはほど遠い。けれども(2)や(6)などで風景はときどき、優しさや光を漂わせた。
 歪みや轟音スタイルに依存はさほどしていない。

 基本的に歌が無いサウンドで、曲名からもストーリーは見出しにくい。けれども音楽そのものはひとつながり。場面転換を曲ごとに施して、美術館を巡っているかのよう。
 観客へ目線は向いていない。外部を意識した遡及ではなく、もっと閉じた世界だ。

 昔はこれが内省的に感じた。しかし今聴き返すと、否定的に内へ籠る気弱さよりも、美学を追求する芯の強さを感じた。
 観客があってこその音楽業界なのに、孤高を目指す。エゴでは無く美の追求。媚びず
「ついてこい」って自信と美的感覚。そんな自意識を封じ込めた盤に思える。
 
 傷が無く磨き上げた、黒光りする世界。だがその風景は今にして聴くと居心地が良い。たぶん10代の感性ならばハマったろう。すでにこのとき、ぼくは30歳だものな。だいぶ価値観が若い時と変わっていた。無意識に違う世代の価値観へ反発していたのかもしれない。
 今なら俯瞰した視点で本盤へ向かい合える。若さと盤に秘めたパワーを冷静に鑑賞できる。この盤に寄り添っては聴けていない。でも、受け入れられる。年寄臭い発言だが。

 曲は中盤以降から、10分弱の長さが続いて音楽に没入を促す。テンポは曲ごとに違うのに、ゆるやかに統一したトーンが静かに聴き手をモグワイ・ワールドに誘った。ひたすら底へと沈んでいく螺旋階段を下りていくかのよう。

 各曲で聴いても楽しめるけれど。出来れば落ち着いた環境でアルバム一枚に対峙して、BGMでなく聴いてる時間を丸ごとをこの音楽へ捧げたほうが味わい深い。
 その贅沢な時間の確保も含めて、本盤は「ついてこい」と聴き手を挑発する。

 2014年にデラックス・エディションが2枚組で発売済み。顔がデカいほうが2枚組。
 改めて聴くならデラックス・エディションのほうがお得だし世界観が深まって分析しながら聴けるかもしれない。でもジャケットの迫力だと、やはりオリジナルの小さめな顔のほうがすっきりとした凄みがある。
 
Track list
1 Punk Rock: 2:08
2 Cody 6:33
3 Helps Both Ways 4:53
4 Year 2000 Non-Compliant Cardia 3:25
5 Kappa 4:52
6 Waltz For Aidan 3:44
7 May Nothing But Happiness Come Through Your Door 8:29
8 Oh! How The Dogs Stack Up 2:03
9 Ex-Cowboy 9:09
10 Chocky 9:23
11 Christmas Steps 10:39
12 Punk Rock/Puff Daddy/Antichrist 2:14

Personnel:
Mogwai
Stuart Braithwaite – guitar, vocals on "Cody"
Dominic Aitchison – bass guitar
Martin Bulloch – drums
John Cummings – guitar
Barry Burns – piano, keyboard, guitar, flute

Additional musicians
Richard Formby – lap steel guitar on "Cody"
Luke Sutherland – violin
Wayne Myers – trombone on "Punk Rock/Puff Daddy/Antichrist"
Dave Fridmann - various instruments

Dave Fridmann – producer

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