FC2ブログ

Gastr Del Sol 「Upgrade & Afterlife」(1996)

 鼓膜が気持ちいい。音色の妙味をグイグイと凝縮させた傑作。

 ガスター・デル・ソルの3rdアルバム。ジム・オルークが加わって2作目、オルークの趣味が強く出た盤に思える。
 ここには楽器演奏のダイナミズムよりも、メロディや曲構成の構造志向よりも、音色に拘った。ノイズも含めて。きれいな音、が至高ではない。歪んだ音も澄んだ音も等価に扱った。ドローンとミニマルの枠で整えられて、さまざまな音が次々に現れる。

 曲の意味性は剥奪された。肝要なのは音色。めまぐるしいビートよりも、ゆったりふくよかな広がりに美学を見出した。ノイズからオーケストラに結び付け、さらに電子ノイズを足す(1)の構成が象徴的だ。
 ジョン・フェイフィをカバーした(7)も、楽曲志向の前に音色趣味が控えている。

 ガスター・デル・ソルとしては、デヴィッド・グラブスとオルークの二人だけ。ただしゲストは多彩だ。(1)でケヴィン・ドラム、(2)や(4)でギュンター・ミュラー、(3)でマッツ・グスタフソン、(7)ではトニー・コンラッドなど。前衛音楽の才人を次々に起用してる。

 過去の人脈も無視しない。ジョン・マッケンタイアが(4)でドラム演奏、録音も担当した。
 なおアルバム全体の録音は(1)以外、オルークが務めている。

 バンド演奏とは全く違う。次々に音色を渉猟し、無機質に重ねた。冷静に、丁寧に。
 本盤はノイズ寄りのアプローチだ。破壊や破滅的な意味合いではない。楽器演奏に囚われず、構造やアレンジにかまわず、音色だけを追求するって意味において。
 ノイズは轟音でなくとも成立する。音色に惚れ込み、追求がノイズ音楽の魅力だ。

 本盤は"音響派"の一派と分類されている。上手いことを言ったものだ。確かに本盤は、音色が最優先。メロディがある曲でも、主眼はあくまでも響きだ。

 この盤を聴いたのはつい最近。とても惜しいことをした。リアルタイムでじっくり聴いていたら、その後に聴く音楽ジャンルが変わっていたかもしれない。

 それくらいこの盤にはインパクトとヒントが詰まっている。後年の音楽は、ガスターのメンバーの行動遍歴を含めても、本盤ほどの集中力と凝縮は生まれていない。
 オルーク自身すらも、本盤に留まらず音楽そのものの追及に向かったから。

 本盤は孤高の傑作だ。ガスターの中でも、本盤ほどストイックな作品は無い。美しく、玄妙な傑作。ガスターの諸作で、ぼくは本盤が一番好き。

Track list
1 Our Exquisite Replica Of "Eternity" 8:26
2 Rebecca Sylvester 3:53
3 The Sea Incertain 6:12
4 Hello Spiral 10:40
5 The Relay 5:49
6 Crappie Tactics 1:48
7 Dry Bones In The Valley (I Saw The Light Come Shining 'Round And 'Round) 12:28


Personnel:
Gastr Del Sol – David Grubbs, Jim O'Rourke

on 1
Clarinet – Tony Burr
Guitar – Kevin Drumm
Horns – Steve Braack

on 2
Cello – Sue Wolf
Percussion [Amplified] – Günter Müller
Violin – Terri Kapsalis

on 3
Bass Clarinet – Gene Coleman
Flageolet – Mats Gustafsson

on 4
Drums – John McEntire
Percussion [Amplified] – Günter Müller
Tape – Ralf Wehowsky

on 5
Saxophone – Jerry Ruthrauf

on 6
Violin – Tony Conrad

関連記事

コメント

非公開コメント