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Rick James 「Wonderful」(1988)

 時代へ寄り添いすぎて、もどかしい出来なアルバム。

 ずっと所属したモータウンから、リプリーズへ移籍第一弾。
 Stone City BandからTom McDermott、Levi Ruffin Jr.、The Colored GirlsからJackie Ruffin、Mary Jane GirlsからVal Youngと、往年の顔触れもクレジットにはみられる。
 しかし縮小された感は否めない。

 すでにプリンスが天下を取った後のファンク界において、リック・ジェームズの立ち位置が微妙になってた感は否めない。いちおうこの盤も、そこそこは売れたようだが。
 サウンドもビートの主体は、やたらズシンズシン鳴るリズム・ボックスだ。音圧狙いで当時の流行りを追ったのは分かる。もっとも少し時代遅れな気もするが。

 心機一転とはいえ、集団ファンクは流行らない時代ではありながら、ニュー・ジャック・スイングにすり寄るほど器用ではなかったジェームズ。
 大勢を率いた人力で、もしくはマルチ楽器奏者ぶりを生かして手弾きメインのサウンドを作っていたら、本盤の魅力は時代を超えて成立していた。

 特に前半はヒップホップにすり寄り、リズム中心でメロディ要素は希薄。今の耳で聴くと、かなり単調だ。空虚さやミニマルさを追求すれば、それはそれで独特のクールさが出たと思う。
 けれど本盤でのアプローチは単調なリズムに、あまり起伏無いメロディを載せただけって印象が先に立つ。それもこれもドラムの音色がメカニカルで硬質なミックスのため。

 "Super Freak"をサンプリングした"U Can't Touch This"を、さらにジェームズが再解釈したような(4)のように、面白そうな曲もある。だがこれもミックスが平板。
 もっとメインのボーカルを立てればいいのに。
 (3)ではRoxanne Shantéをゲストに迎えてヒップホップに接近するが中途半端さが漂う。

 むしろ本盤は中盤以降のほうが面白い。LPではA面最後の(5)がすごくポップで良かった。ファンクの毒気を消し去り、可愛らしくも華やかなメロディが心地よかった。
 これはシングルじゃないようだが、まさにこれは普遍的な良い曲だ。
 
 打ち込み中心のアレンジだが(6)や(9)に(10)も、生のホーンだったら魅力が増したろう。ねっとりしたスロー(7)も、安っぽいシンセ・ストリングスの音色がいただけない。低音の弦音色などをアレンジして、立体的に聴かせる工夫は伝わるが。
 
 前半の無機質さとは一転して、(5)以降はアップもスローも生き生きしたジェームス節だ。ボーカルはいくぶん線が細い。ピークは過ぎていたのかもしれない。けれども70年代のソウルを下敷きにした楽曲作りは決して衰えてはいない。
 プリンスと彼を比較してはいけない。時代を牽引する斬新さは、残念ながらジェームズにはなかった。過去からの蓄積をきちんと踏まえて、再解釈する。
 それがジェームズの真骨頂だ。それを本盤聴いててしみじみ感じた。

 だから本盤はもどかしい。80年代初期、もしくは70年代後半にこの盤を生演奏主体で作ってたら、すごく聴きごたえあったろう。
 懐古趣味でジェームズは本盤を作っていないはず。本質としてジェームズは時代の最新鋭を作らなかった。
 けれどもいわゆる懐メロ営業ツアーを活動の軸にして、往年のメンバーをビジネス的に維持できていれば、違う浮かぶ瀬もあったはず。

 たとえば本盤最終曲(11)での朗々と歌い上げるデュオのバラード。これが88年の曲とは思えない。これも安いシンセがしょぼいけど、悪くはない曲だ。
 ちなみにデュオ相手はChrissi Scinta。この曲以外の経歴は不明だ。

 現実は残酷だ。この時代、もっともプリンスが冴えていたころ。ジェームズも音楽業界も、それを無視した活動はできなかったろう。

 あえてジェームズは本盤でプリンスを意識していない。アレンジだけ、数年遅れのドンスカなリズム・ボックスを強調してしまった。いっそ全く時代から目をそらし、中盤以降の路線でアルバムを作っていたら。
 そうしたら「時代錯誤」というポップ業界でもっとも望まれない世界ながらも、普遍性は確保できていた気がする。

Track list
1 Wonderful
2 Judy
3 Loosey's Rap
4 So Tight
5 Sexual Luv Affair
6 Love's Fire
7 I Believe In U
8 In The Girls' Room
9 Hypnotize
10 Sherry Baby
11 Hot Summer Nights

Personnel:
Producer – Rick James
Arranged By, Written By – Rick James
Backing Vocals – Jackie Ruffin, Val Young
Bass – William Echols
Guitar – Kenny Hawkins, Tom McDermott
Keyboards – Gregory Threadwell, Levi Ruffin Jr.
Rap – Roxanne Shanté on 3
Duet with Chrissi Scinta on 11

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