TZ 7238:大友良英 NEW JAZZ Ensemble "Dreams"(2002)

速いペースで発表のセカンドはメンバーが二人増え、バンド名を変えてきた。Sachiko Mと益子樹を加え、周波数音楽へ、より目配り効かせたかっこう。
ただし本盤では戸川純とPhewを迎え、歌モノを強調。へたすりゃ混迷だが、まったくブレも危なっかしくもない。常に新機軸。

2015年の今だからわかる。この時点から現在まで、大友は実験しつつも一貫してる。本盤ではフォークに代表する大友の歌心を、丁寧にジャズ・コンボ編成で提示した。
いわゆるジャズ・ボーカルの無用なスキャットは無い。ピュアな歌声を持つベテラン二人で、危なっかしくもはかなげな美しさを表現した。

盤としては前作より静謐さを増した。歌モノが前に出た分、前作でのアンサンブル妙味を期待には、ちょっと外された。ジャズ・コンボの枠を超えてオーケストレーションに踏み込んでる。したがってソロの妙味は、アドリブとアレンジが混在して聴こえた。どこまでがコントロールで、どこまでが即興だろう、と。

メロウさが強く滲み、大友のプロデュース力が全面に出た一枚。
揺れるハイトーンな戸川と、頼もしいアルトのPhew。"Eureka"や"Hahen Fukei(破片風景、かな)"で競演が聴ける。
演奏面でも、この二曲が壮烈だ。静謐から熱狂まで幅広くバンドが咆哮し、のたうつ。

"Eureka"は歌から演奏へ軸足が移り、風景が雄大に拡大した。サイン波がそっと耳をくすぐり、芳垣のトランペットが高らかに鳴って、風切音のSEへ。たっぷりと空気を揺らすノイズが広がっていく。
エンディングに向け加速する演奏。二本のサックスがテーマとフラジオの双方を存分にばら撒いた。エレキギターが無秩序にソロを連ねる。混沌ながら音楽のベクトルは、しっかり確かだ。

"Hahen Fukei"はアグレッシブな疾走が詰まった。加工した声で左右チャンネルを飛び回る戸川を、正面でPhewが叫ぶ。大友と菊地の強烈なソロも凄まじい。ソプラノとサイン波が指し込まれ、リズム隊は猛烈な音数で埋め尽くした。

本盤でジム・オルークの"Eureka"を取り上げた。後の大友が繰り返しカバーする曲。この時点でオルークはまだ、日本に住んでなかったと思う。
ここで聴こえる風や足音は、大友が音楽を担当した安藤尋監督"Blue"(2002)のSEらしい。いろんな形で大友は、自らの活動を本盤へ関連付けている。

収録楽曲は"Eureka"と"諦念プシガンガ"以外、描き下ろしかな?ごめん、このへん詳しく無い。
"諦念プシガンガ"は戸川純の古いレパートリー。アンデス民謡"EL BORRACHITO"に歌詞をつけ、戸川の1st"玉姫様"に収録された。だが大友はこの曲をPhewに歌わせる。

さまざまなクレジットから、本盤で才能の集結を実感する。2曲を提供は、大友の音楽では馴染の江藤直子。ちょうどGiulietta Machineを始動の頃か。山本精一も一曲を提供した。
ホーン・アレンジは菊地と江藤がそれぞれ1曲づつ。スコア・アレンジでは3曲を担当した水谷の才能が輝く。

なお一連のONJはこの後も大活躍。TZADIKの枠に収まらず、さまざまなレーベルから盤を出し続ける。

Personnel:
大友良英:g
菊地成孔:ts、ss
津上研太:ts、ss
水谷浩章:b
芳垣安洋:ds,tp
Sachiko M:Sine Wave (2, 3, 5-7)
益子樹: DX7 (1-3, 5-7), SH101 (1-3, 5-7), effects (1-3, 5-7), hot touch noises (3, 5-7)

Guest vocalists
戸川純: vocal (1, 6), vocal with crystal microphone (7)
Phew: 2-7

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