TZ 7232:大友良英 NEW JAZZ QUINTET "Flutter"(2001)

21世紀の幕開け。大友良英の新境地にして原点回帰な、本バンドの1stだ。
超豪華なメンバーは、00年代日本の地下ジャズ・シーンの一里塚でありメルクマール。さまざまな視点で、時代の転機な重要アルバムである。

バンドの活動は99年から。録音そのものは00年から行い、なんども工夫を重ねた渾身の一枚だ。大友のインタビューを総合すると、おそらく周波数帯域まで目配りした、独特なジャズを開放したアルバムらしい。象徴が3曲でゲスト参加のSachiko M。サイン波がジャズ・アンサンブルと溶けてモジュレーションを起こす(1)が典型的に、新鮮なサウンドだ。Sachiko Mがメンバーでもいいじゃないか、と思ったら。ONJOでそれは実現する。
一曲ではMerzbowも参加した。Merzbowファン視点ではあまり目立っておらず不満残るが・・・。

全員がアレンジものでもフリーでも、自在に踊れる顔ぶればかり。本盤はどこにも隙が無い。サックス二本のスリルも、せわしなく刻むドラムも、剛腕でグルーヴを振り回すベースも。もちろん、訥々とフレーズを重ねるギターも。
抽象的な場面ですら、どこか親しみある演奏だった。なにが違うんだろう。冷静だが、自分の殻にこもらない開放性が常にあった。

(5)の冒頭は録音をあえて歪ませ、スクラッチ・ノイズ風の音も混ぜて古めかしいジャズを演出した。楽曲はジェリー・マリガン。西海岸ジャズを不穏に演出した。後のONJQライブでは傍流に置かれる路線だが。電子音と単音ギターをバックに、芳垣がトランペットも含め三管がもつれるさまは、浮遊する幻想性が美しい。

本盤のキーワードはドルフィー。フリー・ジャズじゃないが、明らかにフリーを経由したサウンド。ハード・バップの熱狂とは違うが、菊地や津上のサックスはいったん火が着くと、あっというまに熱く燃え上がる。クールな芳垣と水谷のベースも、強烈にドライブさせる。全員がタイトに決める中、大友は無骨にギターを響かせた。

凄腕ミュージシャンが揃い、なおかつその中で大友がジャズ・ギターを弾く。むしろローテクの印象が当時は強かった大友だ。しかも轟音ノイズじゃない、普通のギター・ソロ。ライブでも凄まじい絵面とサウンドだった。

だが15年前はまだ、強烈な異物感あった。当時から観客には大歓迎で迎えられ、会場は超満員ながら。
2015年の今、本盤に何ら違和感はない。それだけ本盤のサウンドは、とりわけ大友は聴衆への浸透度を増した。

さらに本盤参加のメンバーたちも、同じことが言える。菊地を例に挙げるまでもない。本バンドの顔ぶれは順列組合せのごとく、のちにさまざまなバンドへ拡大する。

菊地のDCPRGで大友に津上に芳垣。突発的なジャズ・コンボでも水谷を起用した。
芳垣のEmergency!では、大友と水谷。Vincent Atmicusでは菊地と水谷。
津上のBozoでは水谷。
大友とは文脈が違うが、水上聡のラクダ・カルテットには水谷と菊地がいた。

つまりこのあとのライブ・シーンで、さらに本バンド参加メンバーの活躍っぷりが加速した。そもそもはティポグラフィカとアルタード・ステーツ、さらにグラウンド・ゼロが、このバンドの背後に見える。本盤出たときは津上健太だけ、ちょっと人脈に違和感あったな。
ともあれ90年代後半を駆け抜けた凄腕たちが、21世紀に前時代と思われてたジャズと改めて向き合い、新風をたっぷり含ませた。とんでもなくクールに、頼もしさをまとって。

Personnel:
大友良英:g
菊地成孔:ts、ss
津上研太:ts、ss
水谷浩章:b
芳垣安洋:ds,tp

Sachiko M:sine waves (1-2, 5)
秋田昌美: EMS synthesizer (3)

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