TZ 7171:John Zorn "Masada Guitars"(2003)

Masadaの緊迫感を抑えつつ、軽やかに舞うスピード感はそのままの、見事なギター演奏が聴ける快盤だ。


Masada10周年記念の第一弾で唐突に発表の本作が、Masadaの次ステップの幕開けであり、Masadaは作曲集のプロジェクトだと初めて公式に記載された。この後ジョン・ゾーンは、まず第一弾Masadaの205曲を小編成アンサンブル向けテーマ集と位置付け、さまざまな編成で"Masada"シリーズの音楽を深めていく。


ちなみに本盤の宣伝文句では第一弾Masadaは"208曲"。つまり第一弾のMasadaでのちの公式発表"205曲"より3曲多い。単なる数合わせとは思うが。
これが第二弾"The Book of Angels"での新曲316曲、14年に始まったばかりのマサダ3"The Book Beriah"92曲に繋がる。

本盤収録曲の観点も、調べてみた。
MasadaのDIWスタジオ作10枚と"Bar Kokhba"(1996),"The Circle Maker"(1998)を、Masada Book1シリーズの、仮に「正典」とする。すると"Galgalim"、"Kivah"が、録音物だと本盤でのみ聴ける曲。本盤では双方ともマーク・リボーが弾いている。整理しよう。

"Bikkurim":Bar Kokhba [Disc 1] 1996
"Galgalim":(他に録音無し)
"Hodaah" :The Circle Maker: Issachar [Disc 1] 1997
"Kisofim" :The Circle Maker [Disc 2] 1998
"Kivah"  :(他に録音無し)
"Sippur" :The Circle Maker: Issachar [Disc 1]1997

当時、"Bar Kokhba"と"The Circle Maker"もMasadaの一連プロジェクトだ、と改めて感じた。あくまで別プロジェクトとして"Bar Kokhba"と"The Circle Maker"があるかと思ってたから。もっとも、現在まで続く巨大プロジェクトとは予想もしなかったが。

本盤ブックレットには"ラジエルの書"から引用有り。"ラジエルの書"とは、エチオピア正教の旧約聖書『エノク書』に記載ある天使のひとりが持つ本を指す。
七大天使の一人とも呼ばれ、宇宙の神秘についての知識を一冊にまとめた書物、「ラジエルの書」を常に携えていたとWikiに記載あった。

ブックレットへ記載の引用文は、軽い検索程度では原典に行き当たらない。きちんと調べないとダメだろう。

もう少しオカルティックな観点だと"ラジエルの書"は、「中世のカバラ的グリモワール」の位置づけ。ユダヤ人文化では霊的な防護に本書が役立つ、の信仰もあるとWikiの記載あり。さまざまなニュアンスが込められたうえでの、"Book of the Angels"なんだな。

さて、本盤。参加ギタリストはマーク・リボー、ビル・フリゼール、ティム・スパークスの3人。ティムが比較的マイナーだが、ゾーンの盟友三人そろい踏みだ。
アルバムではほぼ順番に一曲づつ弾きつぐ形を取った。ギタリスト3人オムニバスでなく、あくまで"ソング・ブック"がメインである。
録音時期と場所は記載ナイガ、それぞれ別のエンジニアが録音してる。各曲のアレンジとプロデュースは、各ギタリストたち、とも明記された。

ループやディレイも使ってロマンティックかつ、土の匂いを漂わす独自世界のフリゼール。
エレアコで素朴なフレーズをメロディアスに展開するリボーは、曲によってダビングかループを使った。
スパークスは三人の中でも、ひときわ素直に楽曲を解釈した。ネックを指が滑るノイズが響くあたり、アコギなの?ギターは詳しく無く、良くわからない。流麗な旋律がテーマからアドリブへ滑らかに溶けていく。

三人ともテーマは素材でなく、原型と位置付けた。アドリブで無闇に別世界へ飛ぶ、モダンジャズのアプローチではない。穏やかにスイングする、むしろ古くさい解釈だ。
それがまた、マサダのセンチメンタルでしぶとい旋律に似合ってる。

なお本盤の発表は03年1月。同年9/16にNYのTonicで、マーク・リボーとジョン・マドフによる"Masada Guitars"のブートレグも、ネットに出回ったことがある。CDの一過性でなくプロジェクトとしてライブもやっていたようだ。うーん、片っ端から聴いて見たい。

Personnel
Marc Ribot - guitar
Bill Frisell - guitar
Tim Sparks - guitar

これはTim Sparksが本盤でも自演した"Ravayah"を、2010年の"John Zorn at the Tzadik Poznan Festival"で取り上げたライブ映像。

ティムの映像でもう一つあった。こちらは13年3月5日、Passim's in Cambridge MAでのライブ。

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