Neil Diamond 「Beautiful Noise」(1976)
ニールの本質ではないが、ロックの耳でも一番受け入れやすいアルバムだと思う。完成度も高い。ポップス王道路線を崩さずに、ニューオーリンズ的な躍動感を上手く取り入れた。
実は本アルバムに至る必然性を理解したくて、ニール・ダイアモンドのアルバムを時系列で聴き進めていた。結局、なぜ本盤に至ったか分からない。
そこかしこに漂うバスキング風味はブリル・ビルディングの美メロと、上手く溶けている。でもそれは昔からニールの中にある要素だ。
ロック要素で背筋を伸ばして、若年層へ媚びたわけでもなさそう。本盤製作時のニールは36歳。ベテランだがロートルでもない。だから、ご乱心かなって。
本盤のプロデューサーは、ザ・バンドのロビー・ロバートソン。本盤以降、ニールがロック路線へ行くならロビーの起用は分からないでもない。
なおニールも参加した、ザ・バンドの"ラスト・ワルツ"は本盤の製作後な1976年11月25日。
本盤はがっつりロックなアレンジなわけではない。甘く分厚いストリングスがふんだんに現れる。すなわちニールがロビーの趣味へ完全に併せてもいない。
全米プラチナムの売り上げを出し、別に本盤が売れなかったわけでもなさそうだ。
次作"I'm Glad You're Here with Me Tonight"(1976)は、プロデュースをフォー・シーズンズのボブ・ゴーディオに依頼する。Tom Catalanoとの蜜月を終わらせ、本作から新たな地平をニールは模索し始めた。
Wikiにはリヴォン・ヘルムがニールの傘下には反対したってエピソードも記される。ここからニールはロックの仲間でなく、芸能界路線で違う世界の歌手って取られていた様子が伺われる。
日本から時代背景や文化を抜きにしてフラットに見ると、根幹に漂うティーン向けポップスな点は変わらないと思うけれど。ニールは歳相応の成熟を素直に受け入れ、聴き手の客層をそのまま維持してビジネスへ適用させただけ。スタッフが優秀だったのだろう。
さて本盤収録の11曲はニールの作品。B5のみロビーとの共作。
奏者も豪華で、Richard Bennett(g),David Paich(key),Alan Lindgren(key),Linda Press(cho)といったニール側のミュージシャンに加え、豊富なスタジオ・ミュージシャンを招いた。
Jesse Ed Davis(g),Dr.John(org)なんて名前もあり。アレンジにはNick DeCaroも参加、ソフト・ロック要素を強めた。
ドラムはJim Keltner,Russ Kunkel,Jim Gordonと盤石なスタジオ・ミュージシャン。
ベースはロビーのホークス時代の仲間、Bob Boucherが全面的に担当した。
A4とB5のオルガンは、ザ・バンドのGarth Hudsonだ。
お仕事的にロビーは務めたと思われるが、名義貸しではない。奏者やアレンジへ積極的に口を出した。ならば弦を減らしてロックっぽさを出してよってのが本音。ニール側のスタッフから強い要請でもあったのだろうか。
この辺の力関係には興味ある。
ロビーはアメリカの文化を尊重しつつ、ロックの採用に躊躇わなかった。丁寧かつ押し付けていないプロデュース。ニールも20代の瑞々しさを取り戻した・・・と言いたいが、ちょっとぎこちないかな。
とはいえザ・バンド風味の保守路線なロックは、今の耳で聴いても面白さがある。ニールのディスコグラフィでは異質だが、ヘンテコではないことを確認できた。弦でがっちり身を守ったためかもしれないな。
Personnel:
Neil Diamond - vocals, acoustic guitar, rhythm guitar, dobro
Richard Bennett - guitar
Bob Boucher - bass guitar, acoustic bass, ARP bass
Larry Knechtel - piano, Fender Rhodes
Alan Lindgren - piano, Moog, strings, synthesizer
Dennis St. John - drums, percussion
Robbie Robertson - guitar
Jesse Ed Davis - guitar
David Paich - Fender Rhodes, piano
Garth Hudson - Hammond organ, Lowrey organ
Jim Keltner - drums
Russ Kunkel - drums
Jim Gordon - drums, congas, harmony vocals
James Newton Howard - ARP synthesizer
Joe Lala - percussion, tambourine, congas
Mac Rebennack - Hammond organ
Tommy Morgan - harmonica
Bob Findley - trumpet
Jerome Richardson - flute, clarinet
Linda Press - backing vocals
Bob James - piano, [Strings, Horns] arrangements(A3, B1, B2, B4), Fender Rhodes
Nick DeCaro - [Strings, Horns] arrangements(A1, A2, A6), accordion
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