TZ 7262:灰野敬二/吉田達也 "New Rap"(2006)

抜群の相性な即興を聴かせるコンビが、TZADIKでは初名義の共演盤。アルバムでは"水が炎を掴むまで"(2002)ぶりか。

ニュージャージーのスタジオで05年12月の録音。小細工なし、がっつりロックなアルバムだ。

Kneadやサンヘドリンではロックなアプローチの二人だが、本質はマルチな音楽性のぶつけ合い。プログレ変拍子をベースにした吉田と、貪欲に世界各国の要素も取り入れた灰野の対決は、一筋縄ではいかない面白さに満ちている。
その意味でむしろ、本盤は物足りない。だが音楽性は目移りさせない分、シンプルにそぎ落としたインプロ・デュオが楽しめる。
ストレートすぎる、と言う点で。買った当時はあっさり聴いちゃってたな。改めて聴きかえすと、ほどよい寛ぎをまとった悠然たるバトルが最高だ。

奇数拍子を絶え間なく吐き出すドラムに、メロディや構成と無縁の痙攣めいたフレーズをばら撒くギターがそそり立った。曲によって複数の弦楽器音が聴こえるため、たんなる一発録音でなく、ダビングも施してるようだ。

全9曲、通りの名前が振られている。しかしたぶん、適当だと思う。特にテーマ性を持たせた楽曲ではない。細かく空間を敷き詰める高らかなドラミングの突進と、エレキギターと声の双方で襲い掛かる灰野の猛攻だ。
さらに単なる猛然に終わらず、緩急効かせた構成力も二人の魅力。ほんとうに聴き応えある、素晴らしいバランス感覚の即興盤だ。

吉田のドラムはさほどハイピッチを強調しない。むしろ深みあるくらいの響きだ。灰野も意外にポップなアプローチ。たとえば(3)で明確なリフが飛び出すのは、エフェクター・ループのようだが。ちなみにこの曲、ループは5拍子で取れるが、さらにドラムが違う譜割でポリリズミックに叩くため、複雑な多層構造が一瞬で積み上がった。

ディストーションを効かせぬ、クリアなギターが聴けるのも本盤の魅力。(5)は静かな雰囲気で始まる。小刻みに寸断するドラムへ、軽やかなギターが重なった。しだいに加速する。低音が響くギターは、オクターバーをかませてるのか。
音楽はだんだんと、凶暴さを増した。

アルバムを聴き進めるにつれ、サイケな風味もしみだしてくる。(8)でのループを交えた複雑な音世界や、(9)でのシャウトが存分にまぶされた音像など。急激なカットアップの構成も練られてる。このデュオならば、全て即興と思うが。
そういえば本盤で、吉田のシャウトは聴こえない。ドラムに専念か。

 

 

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