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Noël Akchoté 「Susato: Livre des Chansons, Vol. 1」(2016)

 端正なバロック・ギターがエコー感をまとって密やかに鳴った。

 ノエル・アクショテが2016年の6月から11月ごろにかけて40枚ほどリリースした「ルネッサンス・シリーズ」の一枚。16世紀の作曲家ティールマン・スザートの作品集のようだ。かれはいわゆるシャンソンも残したらしく、それをそのまま弾いてるのかな。

 全18曲で25分ほど。ミニ・アルバムの長さだ。一曲は1~2分であからさまなアドリブ要素はない。ドブロ・ギターを二声でダビングし、譜面を奏でてる印象を受けた。
 バロック時代の堅苦しくも荘厳な響き、教会音楽に留まらぬざわついた民衆音楽っぽさの双方が広がる。

 アクショテの録音は宅録そのままに、冒頭などでノイズが入る。あまりややこしいことを考えず、無造作に収録っぽい。
 エコーをかけて水っぽい音色で紡いだ。ピッキングのノイズやばらつきがフレーズに、生々しさと荒いニュアンスを付与する。
 
 多産のアクショテはテクニックやアイディアは別として、一つの音を突き詰めて無菌状態に高めるタイプではない。とにかくどんどん録音した。
 ここでもピッチやタイミングを厳密にそろえず、単に二声のギター・デュオを一人で作ってるだけ。クリックすら使わず、一つのトラックを聴きながらもう一本をダビングじゃないかな。そのくらい頭や呼吸は微妙にずれている。

 でもだからこそ、人の演奏を聴いてる価値がある。皮肉でもなんでもなく。ジャストでミスが無い音楽を聴きたいならば、Midiの打ち込みで良いはずだ。
 アクショテのギターはいたずらに個性を声高に主張しない。でも雑駁な録音と演奏スタイルが、素朴な呼吸を音楽へ付与した。

 アクショテは何を考えて本盤を録音だろう。楽曲の記録か。膨大な録音行為がそのまま目的になっているかのよう。
 個々の楽曲はもちろん違う曲だとしても、ほぼニュアンスは似通っている。ギターの音色も特段に変化をつけないため、まさにカタログ的な仕上がり。旋律感があるにも関わらず、妙に無味乾燥なひとときになった。

 決して聴きづらい音楽ではない。でもざらついた音使いがヒーリングやニューエイジには向かない。妙な個性が付与されてしまってるから。
 奇妙な集中力を必要とする音楽だ。その一方で、たんなる「弾いてみた」に留まらない、微妙な個性が本盤の味にはなっている。

Track listing:
1.Amour a tort 01:50
2.Le content est riche 02:17
3.Coingié m'aves donné 00:58
4.J'ay si forte battaille 01:18
5.Aupres de vous 01:13
6.Ce qui souloit 01:22
7.Content desir 01:24
8.Contre raison 01:03
9.Damours me plains 01:32
10.D'argent me plains 01:55
11.De jour en jour 01:09
12.De mon malheur 01:17
13.Doulce memoire 01:10
14.Dueil double dueil 00:58
15.Dueil et soucy 01:02
16.Fini le bien 01:32
17.Grace et vertu 01:00
18.La grant doulceur 01:08

Noël Akchoté : Resonator Guitar (Dobro)
Recorded in Paris (France), 28-30 October 2016

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