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Neil Young 「Le Noise」(2010)

 奔放なロックの魅力を、ストレートに封じ込めた傑作。

 ダニエル・ラノアの自宅で録音。映像も同時収録かと思うくらい無造作な仕上がりだ。弾き語りを基調として、ギターのダビングは施されている。
 演奏はニール・ヤングのみ。ノイズと銘打たれてるが、エレキギターのディストーションとフィードバック全開の弾きっぱなしではない。主役は楽曲だ。

 線の細い独特の喉で、滑らかに歌う。最初はエレキギターの轟音。ときにアコギで。
 豪放に炸裂、もしくは繊細に柔らかい世界観を、ラノアが残響を操作して光らせた。もっと粗雑や無造作に仕上げることも、つるつるに磨いた箱庭にも仕上げられたろう。
 しかしラノアは独特のエコー感で、小宇宙を作った。ジャケット・デザインがまさに秀逸。モノトーンと光の輝きがよく似合う。

 アルバムを通したら、エレキギターの比率が多い。枯れずに挑戦し続ける、骨太な彼の魅力が見事に封じ込められた。

 全8曲、37分。LPの感覚でもボリュームが多いとは言えない。だが本盤に物足りなさはない。ラノアの手腕がギターの情報量をとんでもなく多くした。
 ニールの歌声とメロディが、聴き手の耳を満足させる。

 ギターを掻きむしって歌う。ほんらいロックやフォークはそれだけで成立する。しかしさりげなくギターを足してアレンジに厚みを出した。歌声やギターのフレーズをディレイで滴らせ、余韻や浮遊感を付与した。
 複雑なアレンジや多くの楽器は足してない。なのに音像一杯に音を詰め込んだラノアの凝った音響処理と、無垢で楽曲に説得力を持たせるニールの存在感が、本盤を見事に濃密な一幕を作った。

 ときにラノアの処理が過剰に思える時もある。ニールの歌声がシンプルなところもある。
 けれど相乗効果がこの盤は、とても美しい。やりすぎとやりっぱなし。互いのへこんだところをもう一方のふくらみが充填して補い溢れさせた。

 たぶんこの盤は、ギターの弾き語りだけだと素朴にすぎたろう。ラノアの過剰さが勝ってもオーバー・プロデュースのそしりを受けた。
 けれどもニールもラノアも絶妙なバランス感を披露した。

 そして本盤の路線をその後も追求しないところが、いかにも自由なニールっぽい。あくまで好奇心と創作人生の一里塚。ラノアとのコラボを楽しんで、あっさりコンセプトを終わらせた。

Track listing:
A1 Walk With Me 4:25
A2 Sign Of Love 3:55
A3 Someone's Gonna Rescue You 3:26
A4 Love And War 5:34
B1 Angry World 4:12
B2 Hitchhiker 5:31
B3 Peaceful Valley Boulevard 7:09
B4 Rumblin' 3:36

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