TZ 7176:Kramer "The Greenberg Variations"(2003)

サイケ・ポップの勇にして、変てこバンド満載なシミー・ディスク。レーベル総帥のクレイマーによる、TZADIKの2ndアルバムが本作。今にしてわかった。バッハ風の高尚な音楽をやりたかったのか。そう考えると、このサウンドが途端にキュートな色合いを魅せた。


シンセの音色が今一つ安っぽいのは、聴きかえしても変わらぬ印象だ。ただしこれはシンフォニックな狙いだろう。しかし(4)など、当時のポップ・センスを滲ませる名曲も含まれてたと、いまさらながら気づいた。再評価しよう。自分の中で。


Tzadik第一弾の"Let Me Explain Something To You About Art"(1998)が凝ったサイケ・コラージュだった。クレイマーの歌声やポップ・センスが凄く好き。だから正直、本盤は凄く楽しみにしてた。こんどこそ、と。03年当時は"Songs From The Pink Death"(1998)を最後に歌モノ・ソロを出さず、シミーも停滞してたから。

ところがいざ聴くとインスト集。今一つサウンドが暗い。クレイマーの失速か、と当時は凄くがっくりした。
今回聴きかえすと、バッハの"ゴルドベルク変奏曲"にひっかけた、バロック風のプログレ・ポップ狙いなのも悪くない、と見方が変わった。ここ十年くらい、クラシックをぼくが聴いて、バロック音楽に慣れたせいかも。
クラシック寄りの視点で聴くと、厳かな旋律や丁寧な鍵盤のダビングが織りなす響きは、しとやかなサイケ風味のサウンドで悪くない。いや、むしろ興味深い。

アルバム全体を覆うのは、わずかな悲壮感。サイケの色で聴くべきか。鍵盤の多重奏だが木管や弦楽器風の音色も織り交ぜ、ふくよかでシンフォニックな色合いを出している。
(9)は偶然だが、細野晴臣"銀河鉄道の夜"(1996)と通じるロマンティックさが有り。
ゴルトベルクと引っかけた、本盤タイトルの"Greenberg"はユダヤ人で野球殿堂入り、大リーグの名選手ハンク・グリーンバーグ

(11)はクレイマーが音楽を担当した02年のミュージカル"Fortune's Fool"(ツルゲーネフ原作、アーサー・ペン監督)で初披露とクレジットあり。

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