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Matthew Sweet 「In Reverse」(1999)

 オルタナ世代目線で、60年代ポップスへのオマージュ。

 いや、単純にパワー・ポップのノリかな。マシュー・スウィートはぼくの世代だと、圧倒的に3rd"ガールフレンド"(1991)だと思う。ぼくはただ、そこまでのめり込めず。なぜだろう、とそのあとリアルタイムで何枚か聴いていき、本盤はけっこう好きだった。このあと、即興系に興味がぐんと強まりこの手のロックからすっかり足が遠のいてしまったが。
 久しぶりに近況を検索したが、昨年に4年ぶりのアルバム"Tomorrow Forever"(2017)をリリースしてたね。バングルスのスサンナ・ホフスとカバー集のアルバムを合計3枚出したのはなんとなく知ってたが、聴きそびれていた。

 本盤は7thソロ。とにかく楽曲が瑞々しかった。多重録音のコーラスも柔らかく響き、ソフト・ロック好きにはこたえられない甘酸っぱさ。オルタナ系らしい歪んだ響きが少し強めで、サイケ・ポップ寄りに聴こえはしたけれど。
 スウィートの歌声は、決してふっくらではない。どこか角がざらつく。とはいえメロディの確かさが本盤は素敵だった。

 ミュージシャンのクレジットを見て初めて知ったが、本盤はかなり大勢のミュージシャンを呼んだ。ホーン隊にはザッパと共演歴あるブルース・ファウラー(tb)の名もあり。
 ドラムはジム。ケルトナー。60年代から活躍し、レノンからコステロまで幅広いセッションをこなした名手だ。
 さらにベースにキャロル・ケイも。レッキング・クルーのメンバーで、スペクターや"ペット・サウンズ"でも奏でた、彼女。もちろん当時の歴史を踏まえた意図で、スウィートは彼女をブッキングだろう。
 60年代っぽさは単なるメロディだけじゃなく、音作りも意識してたのか。
 スウィートがベース演奏でもクレジットあり、どこまでケイが弾いてるかは分からないけれど。

 本盤でスウィートが描いたのは、作られた無垢さ。無邪気さや世間知らずのナイーブさをひけらかしではない。計算で甘くコーティングしたポップスを作った。いっぽうで完全に懐古趣味やアコースティックにまとめず、ときおり歪んだギターを乗せるのは世代であり彼の趣味だろう。

 シンプルで耳ざわり良いメロディでコンパクトにまとめながら、豪華なオケで録音しながら、スウィートは甘さ一辺倒では本盤をまとめない。グランジを通過した歪みやひずみを音世界に振りかける。
 今の耳だと、士道不覚悟に思えてしまう。どちらかに振り切れよ、と。うっすらとサウンドづくりに古びた埃っぽさがある。けれどもリアルタイムの時代性を思い起こせば、確かにこういう音だったよな、としっくり。
 
 歪ませずにはいられない。ポップスをきれいに追及なだけは逆に物足りない。そんな空気を音に感じていたっけ。つい数年前までグランジがはびこっていた感触からして。
 ぼくはそれに馴染めず、全く違う即興音楽の方に趣味が行った。だから時代流行の感覚が当時で止まっている。
 久しぶりに聴き返した本盤は、懐かしい。青春時代ってほど昔ではない。だが若さが残った最後の頃、仕事の気分転換で週末にレコ屋の新譜を試聴この頃が思い出される。いろんな意味で歳を取ったなあ、と。
 完全に時代と乖離して聴いてたら、違う感想を持って本盤に向かい合えたはずだが。

 本盤の普遍性はまだある、と思う。ティーン向けのソフト・ロックをやりながら、目線が全くヒットソングに向いてないと感じるのは、リアルタイムに聴いてたゆえのバイアスながら。
 ちょっとアンマッチな歪んだギターが、60年代サウンドにまぶされた。どっしり轟くドラムと過剰なエコー感は、スペクター風味よりもグランジの影響を感じてしまう。
 とはいえ狙いはバブルガムやサンシャインなポップス。

 無闇に内省的にならず、能天気に跳ねたい。でも羞恥心が邪魔して弾けられない。そんなあんまりイケてない空想上のティーンに似合いそうな音楽だ。
 リアルタイムで聴いた時点で、思春期ははるか以前に通り過ぎていた。だからこそ本盤を幻想の懐かしさとして聴けていたのかもしれない。
 
 なんだかあんまり本項は、音楽的に感想を言ってないね。どうもこういうどっぷり聴いた盤は、楽想よりも想い出を踏まえた抽象的な言葉ばかりが頭に浮かんでしまう。

Track listing:
1 Millennium Blues 2:52
2 If Time Permits 3:03
3 Beware My Love 3:51
4 Faith In You 3:32
5 Hide 4:02
6 Future Shock 3:22
7 Split Personality 4:19
8 I Should Never Have Let You Know 2:48
9 Trade Places 2:57
10 What Matters 4:13
11 Write Your Own Song 3:03
12 Worse To Live 5:04
13 Untitled 2:43
14 Thunderstorm 9:37

Personnel:
Matthew Sweet - vocals, guitar, bass, organ, synthesizer, percussion
Bruce Fowler - trombone
Walt Fowler - trumpet, flugelhorn
Rick Cunha - acoustic guitar
Jim Keltner - drums
Victor Bisetti - percussion
Don Heffington - percussion
Carol Kaye - bass
Greg Kurstin - piano, organ, harpsichord
Greg Leisz - guitar, pedal steel
Fred Maher - drums, percussion
Tony Marsico - acoustic bass
Ric Menck - drums, percussion
Jamie Muhoberac - organ, piano
Paul Chastain - acoustic guitar
John Ginty - organ, piano, harpsichord
Brian Kehew - organ, piano, harpsichord
Pamelia Kurstin - theremin

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