Prince 「Live At The Miami Glam Slam- 3 Nites In June 94」(1994)

 寛ぎながらもタイトなライブをまとめたブートレグ。

 Amazonで販売中。この手のアルバムはいつ消えるか分からないので、手元へ容易に入手したい人はお早めに、というたぐいの盤。
 前にAmazon配信で買えたMadhouseやアポロニア6もいつのまにか販売中止になってるし。

 本盤は94年のライブ音源でCD4枚組。3時間以上にわたる。キプロスのRox Voxが2016年に発売のようだ(Discogs調べ)。断片的にはさまざまなブートが過去に出ているが、まとめて聴けるのが本盤の特徴かもしれない。

 ぼくはAmazon Music Unlimitedで聴いてるが、オーディエンスの良好な録音。ただし時々デジタル・ノイズが入る。音盤だと消えてるかは知らない。
 全般的な音質は音割れが多少あるけれど、分離の良い録音で悪くない。10点中6点くらいか。昔のブート屋基準だと8くらい。
 
 音源は94年6月8日から10日にかけて、マイアミのグラム・スラム"South"で行われた単発の3days。94年のプリンスはツアーを行わず、単発ライブに終始した。これはワーナーと確執真っただ中の理由もあっただろう。顔にSlaveと書いてた時期か。

 94年のライブは新曲をずらりと並べたセットリストで、のびのびとライブを繰り広げた。
 演奏曲は"Come"(1994)や"The Gold Experience"(1995)などで公式リリースされた。だがこの時点はすべてが新鮮。直後に出回ったブートがとても刺激的だったのを憶えてる。
 同様の雰囲気は翌95年の"The Ultimate Live Experience"や96年の"Japan '96"でも味わえる。けれど94年ライブ音源は、もっと自由だ。ツアーのプレッシャーがなかったためだろう。

 とはいえ本盤は3日間の完全収録ではない。2日目の冒頭は演奏中のフェイドインから始まる。3日目の終盤は数曲がごっそりない。完璧を求めるマニアには向かない。
 音源的には2日目の冒頭はたぶん全部同じパターン。ライブ音源そのものがないのかも。

 けれどもYoutubeで断片的な場面を、断続的に慣れた今の世代ならばあまり気にならないのでは。そのうち公式発表される日が来るかもしれない、と呑気かつ大らかに本盤を楽しむ手もある。
 このいい加減さが21世紀になってのコペルニクス的転回な気がしてならない。ストイックかつ完璧主義を求める嗜好が、Youtubeのおかげでどんどん牙を削がれてる。

 Prince Vaultによると、この3日間はそれぞれ2時間、1時間、1時間20分の演奏とある。ただし完全音源が残ってるのかも不明なため、残された音源がこの状態ってことかも。
 前述のようにこれらのライブはツアーでなく、アフターパーティ的な突発的なギグ。だから統一性やパッケージ性に欠ける。もちろんプリンスの興が乗るまま、毎日のライブ時間がガラガラ異なる可能性も多分に有り。

 グラム・スラム"South"はプリンスが当時に経営のクラブ。キャパは1500人くらいの模様。
 ライブ記録を見るとミネアポリスのGlam Slam Northで前月5月29日に演奏以来、約2週間ぶりのステージ。たぶん新曲群を披露したくて、根城のクラブを会場にしたのだろう。
 グラム・スラム"South"でライブは、通年して6回しかない。他には翌95年に2days,あとは97年に一回だけ。この箱では希少なライブの機会となる。

 ほとんど曲目にダブりないのがこの3daysであり、当時のツアーの特徴。ブルージーさをあからさまに、強く表現した時期だとも思う。

 セットリストは後述する。後追いだと"Come"や"The Gold Experience"に特化したリストに見えてしまうが。
 6月7日がプリンスの誕生日。したがって3daysの初日、Disc 1-2にあたる6/8日のライブでは"Happy Birthday"が織り込まれたり、「誕生日、俺」な雰囲気が微笑ましい。

 演奏はがっつりタイト。手抜きは無い。いっぽうでパッケージ・ショーではないため、ルーズな構成がそこかしこにあり。6/8の"Days of wild"でリズムのみが延々と続くところを筆頭に、音源だけだと単調に思えてしまうところもあり。
 もっともこれは致し方ない。ライブ音源の発表を想定してない、生演奏ならではの愉しみが現場にはあったのだろう。やたら歓声が多いし。
 
 いちばん自由なのが6/8の初日かな。この時点で同年2月にリリース済みだった"The Most Beautiful Girl In The World"では、"Mustang Mix"のアレンジを採用してる。
 だがアレンジはセッションでなくきっちり煮詰めてる。女性のセグエなども"The Gold Experience"に収録のまま。プリンスの多重ハーモニーをサンプリングで合わせてるっぽい場面もあり。
 スタジオで作り上げた理想そのままをステージに載せようとしたプリンスの心意気を感じた。

 6/9は演奏がスリリングだ。曲間の喋りで寛ぐ場面もあるが、全体的にキュッと締まったサウンドを披露した。
 セットリストに遊び心あり、Salt-n-Pepaの"Shoop"、Graham Central Stationの"It's Alright"や"I Believe In You"、スティーヴィ・ワンダーの"Maybe Your Baby"とカバーもふんだん。もっともアフターショー的な奔放さで魅せた。
 未発表なままの当時のレパートリー、"Glam Slam Boogie"も演っている。
 張りつめたままではなく、"Shoop"ではスクラッチを入れたりルーズなノリもあり。この辺はライブの緩急だ。

 6/10はこの3日間でもっとも音質がいまいち。籠っており、ワンランク下がる。
 とはいえ演奏は抜群。公式録音とリリースは無いものか。
 まずサンタナ・メドレーとしてプリンスのエレキギターをたっぷり楽しめる趣向。 
 そのあともホーンやオルガン音色の鍵盤を駆使したアレンジで、野太くファンキーに盛り上がった。

 ということで、94年のプリンスのひとときを切り取ったブートレグ。あくまで記録なため、ミュージシャンの主張や思い入れはここに無い。CDで聴く人でなく、ステージを見ている人を楽しませるための構成だ。とはいえファンには非常に興味深い内容である。
 公式音源を一渡り聴いて物足りないならば、こういう沼に足を踏み入れるのも一興だろう。底なし沼、だけどね。

Track listing:
Disc 1
【94/6/8】
1 Endorphinmachine
2 Space
3 Interactive
4 Days Of Wild (including Hair)
5 Now (including Babies Makin' Babies)
6 The Most Beautiful Girl In The World (Mustang Mix)
Disc 2
1 The Ride
2 Get Wild
3 Acknowledge Me
4 Race
5 The Jam
6 Shhh
【94/6/9】
Disc 3
1 Billy Jack Bitch
2 The Most Beautiful Girl In The World
3 Loose
4 Shoop (including Sexy MF - Gett Off - Acknowledge Me)
5 It's Alright
6 I Believe In You
7 Maybe Your Baby
【94/6/10】
Disc 4
1 Drum Solo > Intro > Santana Medley
2 319
3 Hide The Bone
4 Ripopgodazippa
5 Get Wild
6 Johnny

Personnel:
Prince (vox, guitar), Michael B. (drums), Sonny T. (bass), Tommy Barbarella (keyboards), Morris Hayes (keyboards), Mayte (dance)
 

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