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Miles Davis 「Amandla」(1989)

 なるほど、こう聴くのか。目から鱗のGo-Goジャズ。

 "Jazz Perspective"Vol.15 のレコード・レビュー欄で、モノネオンを鍵にGo-Goとファンクを並べた中に本盤が挙がっていた。当時、マイルスとマーカス・ミラーはワシントンDCのダンス・ミュージック、Go-Goを研究して本盤を作ったという。

 リアルタイムで本盤を聴いたときは、ピンとこなかった。だが今回改めて聴き返し、悪くないじゃんと思う自分にびっくり。30年近くたって、ようやくぼくはマイルスのセンスに耳が追いついたとでもいうのか。
 別に当時から本盤がGo-Goを研究した盤ってのは、秘密ではなかったろう。だがぼくは、本盤がすごく時代に迎合して聴こえたんだ。

 マイルスはこの時点で63歳。時代を牽引する斬新さを狙うよりも、時代に追い抜かれてしまっていたのか。自分で新しいサウンドを作るより、若い連中をどんどん採用して自分をサウンドの中に埋めていた。

 マイルスが時代に追いつかれたのはいつだろう。何となく復活後の85年以降と思い込んでいたが、実際はJBが冴えわたっていたころ、あるいはロックが隆盛した60年代後半だったのかもしれない。
 ジャズにどんどん電化を取り入れたマイルスは、ジャズの目線では革新的だった。だれもそんなことをしていなかったから。
 そして復活後、"You're Under Arrest"(1985)でマイルスは自分の存在感を薄めた。生演奏のダイナミズムよりも、サンプリング的に自分の立ち位置を変えた。

 バンド全体が生演奏でセッションするジャズのスタイルから、もっとヒップホップ的に。ビートがループして、かっこいいフレーズが繰り返される。アドリブの妙味よりも、全体的なサウンドのトーンに気を配る。
 そんなふうに音楽の立ち位置をマイルスはがらり変えたのではないか。本盤を何十年かぶりに聴き返して、ふと思った。

 この時代のマイルスは、単なる素材に思えてピンとこなかった。マーカス・ミラーらがトラックをつくって、マイルスが吹くのはテーマやアドリブ。本質的にテーマからソロ回しとジャズのスタイルを取りながらも、全く違うアプローチに感じた。
 すなわちマイルスが別にいなくてもいいじゃないか、単なるお飾りじゃないか、と。

 だが本盤を聴いてて、まさにマイルスが狙ったのはそんな自分の仙人化だったのかも、とふと思った。
 トラックの基本は打ち込みも含めたタイトなビート。Go-Goを筆頭にファンクが溢れ、テーマにアドリブにマイルスは活躍する。
 そこには強靭なリーダー・シップよりも、象徴としてラベルとしてマイルスが存在する。

 メカニカルなビートが飛び交う盤だが、本質的にはアコースティックな仕上がりだ。生演奏のダイナミズムがたっぷり。シンセやエレべの響きでごまかされるのと、いかにもダビング風なトランペットの乗り具合が機械仕掛けな雰囲気を加速した。
 そう、本盤で一番つらいのが音色の古めかしさ。デジタル・シンセの硬質でのぺっとした響きがリアルタイムなだけに、流行おくれのダサさを感じてしまう。今の若い連中なら、そんな思い入れが無いぶん本盤を素直に聴けるかもしれない。

 本盤はトミー・リピューマの仕切りでマーカス・ミラーを中心に、ジョージ・デュークらがトラックを作った。バンドとして一体感よりも、曲によってミュージシャンが入れ代わり立ち代わり、多彩なグルーヴでバラエティさを演出する。

 思い切りでかい音で聴いたほうが、本盤の豪華さは実感できる。
 シンセで埋もれた過剰なトラックの中で、鋭利に啼くトランペットのクールさが光った。マイルスはビートにのりながらも、グルーヴに溶けない。冷静な立場で最新鋭のノリを分析しながら、トランペットをいかにかっこよく輝かせるかを分析して吹いている。

Track listing:
1 Catembe 5:35
2 Cobra 5:15
3 Big Time 5:40
4 Hannibal 5:49
5 Jo-Jo 4:51
6 Amandla 5:20
7 Jilli 5:05
8 Mr. Pastorius 5:41

Personnel:
Miles Davis – trumpet

Marcus Miller – arranger (except # 2), bass, keyboards, bass clarinet (exc. # 5, 6), soprano saxophone (# 1, 3), guitar (# 1, 4, 7), drums (# 1)
Kenny Garrett – alto saxophone (exc. # 2, 8), soprano saxophone (# 2)
Rick Margitza – tenor saxophone (# 5)
George Duke – keyboards, synclavier, arranger (# 2)
Joey DeFrancesco – additional keyboards (# 2)
Joe Sample – piano (# 6)
Jason Miles – synthesizer programming (# 8)
Michael Landau – guitar (# 2)
Foley – guitar (# 3, 4, 7)
Jean-Paul Bourelly – guitar (# 3, 5)
John Bigham – guitar, keyboards, drum programming, arranger (# 7)
Billy "Spaceman" Patterson – wah-wah guitar (# 7)
Ricky Wellman – drums (# 3, 7)
Omar Hakim – drums (# 4, 6)
Al Foster – drums (# 8)
Don Alias – percussion (# 1, 3, 6)
Mino Cinelu – percussion (# 1)
Paulinho Da Costa – percussion (# 4, 5)
Bashiri Johnson – percussion (# 6)

Producers – Tommy LiPuma, Marcus Miller and George Duke (# 2), John Bigham (# 7)

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