TZ 7013:Eyvind Kang "7 Nades"(1996)

米オレゴン出身のVln奏者/作曲家、Eyvind KangのCDデビュー作。こののち共演作品も含めTZADIK以外のレーベルからも多数、アルバムを発表していく。


多様なアプローチでのノイズ系前衛音楽を提示した。バイオリンを弾くのも、あくまで楽曲の一要素。さまざまな響き、を味わえる一枚。
ジョン・ゾーン流のめまぐるしい変化を、ゆったりと楽曲ごとに行ってるかのよう。この辺、スピード感がNYとオレゴンの違いか?と勘繰ってしまった。

楽曲ごとに多数のミュージシャンが参加している。本項末尾はWikiからの転載。

(1)の冒頭はLPの針音をかぶせ、楽曲のノイズと材質の雑音による多層的なノイズを表現した。本盤はCDだから当然、針音などは無い。(1)は生楽器の小編成な室内楽でウエスタン&カントリー風味を奏でる。さらにフランス女性の語りをかぶせ異化効果を狙った。

(2)は一転、電子音。EyvindもVlnやpの演奏クレジットあるが、不穏なエレクトロ・ノイズの揺らぎが全編を覆う。ドローン・コラージュの趣きも。(3)でハーシュのパワー・ノイズに深まった。Eyvindの自演。ぶくぶくと蠢く。時々途切れるのはテープ編集かな。

(4)ではコラージュ要素が強まった。ロックの文脈でノイズが浮かんでは消える。電子音楽だが計算は低めで、色々なノイズを次々にテープでつないでるようだ。
このまま進めば電子ノイズ作品か、になるのだが。(5)でまた、古ぼけたウェスタン風の世界が戻ってくる。

音響系ノイズの(6)は、時代的には新しい。高いサイン波が小編成の管弦楽と混じる。楽曲としては、この曲が突出した出来栄えだ。メロディを希薄に、管弦楽も白玉を中心にゆったり鳴る。和音と電子音、二種類の混淆が美しく響いた。

(7)は電子音からウエスタンへ。ドラムが加わったり、ロック・コンボ風アレンジながらも退廃的な酩酊感は変わらない。

聴いてて、意外と惹かれたのが(8)。
tuとvlnの多重録音をEyvindが演奏し、Scott Colburnのテープ・ノイズが被さる。キイキイと強烈に軋むノイズまみれのバイオリンが、密やかなチューバのロングトーンに乗って暴れるさまが、無残な美しさを表現した。

(9)でコンセプトは再度(1)に戻る。LPの針音と弦楽アンサンブル。ただし楽曲は、ロマン派を通過した厳かな響き。クラシック系作曲家の面目躍如な弦楽だ。
しかしフリーキーで無秩序なシャウトに塗りつぶされた(10)につなぐのが、なんともヘンテコ。(11)でテープ回転数を落したような、低い女性による日本語の語りが乗る弦楽。幻想小説の超短編を朗読してるかのよう。

大団円(?)の(12)がドラム以外はEyvindの多重録音。ベースとピアノ、エレクトリック・バイオリンで不穏なメロディのアンサンブルを提示した。ジョン・ゾーンが映画音楽などで聴かせる、けだるげな世界観。

最後まで聴いても、やはりジョン・ゾーンの価値観に通じる。パフォーマーの自己表現に拘らず、作曲家寄りに電子音楽をふんだんに使うところが、ジョンとは異なるが。

こうして細かく聴きこむと、いくつか興味深いサウンドがあると思う。とっつき悪いのが難点か。

Personnel:
Eyvind Kang - violin, keyboards, piano, bass, erhu, harp, cymbal, tape manipulations, microphone, noises, voice
Brian Fairbanks (track 9), Susanna Knapp (tracks 1 & 5) - flute
Thuc Ngyen - clarinet (track 9)
Craig Flory, Jessica Lurie - alto saxophone (track 7)
Mike Anderson (tracks 1 & 5), Angelina Baldoz (track 11) - trumpet
Steve Moore - trombone (track 5)
Don Ankney - French horn (track 6 & 9)
Scott Perry - oboe (track 6 & 9)
Nancy Bondurant - bassoon (track 6 & 9)
Terry Hsu, Alan Kestle - violin (tracks 1 & 5)
Brent Arnold - cello (tracks 1, 5 & 11)
Tim Young - guitar, amplifier, voice (tracks 1, 2, 4 & 5)
Mr. Ko - guitar, keyboards (track 4 & 10)
Byron Au Yong - harpsichord (tracks 1 & 5)
Craig Flory - Moog synthesizer, acoustic guitar (track 4)
Christina Schinkei - electronics (track 2)
David Slusser - slussomatic (track 4)
Scott Colburn - tape manipulatios, fire (track 4,6 & 8)
Ian Rashkin (tracks 1 & 5), Geoffrey Harper (track 7), Tari Nelson-Zagar (track 7) - bass
Reggie Watts - drum machine (track 7)
Jarrad Kaplan - midi drums (track 12)
Mike Stone - percussion (track 5)
Yoko Murao - narration (track 11)
Teresa Truax - French narration (tracks 1 & 5)
Courtney Agguire (tracks 1, 5), Crystal (track 5), Jasmine (track 5), Angela Lopes (track 2), Brad Mowen (track 10), Mari Murao (track 4), Om (track 7) - voice
 

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