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Father John Misty 「Pure Comedy」(2017)

 壮大なメロウネス。古臭さに最新鋭を眠らせた味わい深さ。

 ジョシュア・ティルマンの別名、ファーザー・ジョン・ミスティの3rdアルバム。
 たっぷりと切なく甘いコーティングが施されたポップスが詰まった。基本はミドル・テンポ。素朴なふりをして、きっちり作りこんでいる。
 基本はベーシックを一発録音して、ダビングを重ねたらしい。アコースティックな面持ちながら、背後にさりげなく電子音を仕込むアレンジがあったりも。
 分かりやすく派手な作りでなく、しみじみとシニカルな思いを潜めた。

 本盤はハッピーで明朗なポップスではない。どこか鈍い苦しみを埋めている。もともとフリート・フォクシーズのドラマーを務めた彼だが、本盤ではピアノがメイン。ギターもあまり目立たない。
 アレンジこそ大仰ながら、SSW的な側面を強く出した。

 ぼくは最近のポップスって、どうもメロディが馴染まない。要するに流行りについていけず、歳を取ったってことだ。しかし本盤は素直に楽しめた。それだけノスタルジーをくすぐる音作りってこと。
 とはいえ譜面に向かって美メロを絞り出すタイプの曲ではない。きれいなメロディだが、節回しはティルマンの旋律癖で作ってる感じ。

 連想したのはビリー・ジョエル。甘さのメロディと、鼻にかかった歌い方が少しだけ、似ていた。アプローチやバックグラウンド、スタイルは全く違う。

 本盤は歌詞を見ながら出ないと楽しめないだろう。サウンドの面白さもアレンジのそこかしこに工夫しながらも、本質は歌。あくまでティルマンの歌を主役として、全てのサウンドが収斂している。

 全13曲中、2曲に大作あり。1曲は13分、一曲は10分弱。長いな、とは思う。だが冗長ではない。なんとなく最後まで聴いてしまう。それもこれも、切々と内省的なスタイルと、ハイトーンの滑らかで甘い歌声が心地よいから。
 あとはアレンジが凝っており、単なる弾き語りやバンド一発でないため飽きないせいもある。

 本盤は高い評価を得ながらも、主流ではない。ライブは情感的のようだが、カリスマ的な存在感や売らんかなのガツガツっぷりは前に出さない。
 あくまで自分の中に溢れる想いを、歌にする。そんな純粋なムードが本盤には充満した。実際の彼の思いは知らない。けれども02年にデビュー、キャリアを重ねたしたたかさもあるだろうに。依然として、こういう毒の無い作りこみっぷりができる手腕は素晴らしい。

 ナイーブさに憧れる歳でもない。昔を想って涙するほど枯れてもいない。その観点で、ぼくは冷めて本盤を聴いてしまってる。にもかかわらず、本盤はティルマンの作る音像が、物語世界がきれいで惹かれた。

 リズム隊のバンド的な参加ミュージシャンは"performance"とのみクレジットのようだ。Wikiによれば。その匿名性も含めて、ティルマンの構築美が現れて興味深い。
 プロデュースはティルマンと、LAのSSWなJonathan Wilson。

 繰り返す。本盤は新しさを狙っていない。だが保守層べったりの安定路線ではない。そこかしこにアレンジへ工夫が感じられる。歌声も、特段のとっぴさはないけれど、朗々と歌い上げるテクニックは確かだ。作詞作曲もすべてティルマン。いいな、これ。

Track listing:

1 Pure Comedy 6:25
2 Total Entertainment Forever 2:54
3 Things It Would Have Been Helpful To Know Before The Revolution 4:18
4 Ballad Of The Dying Man 4:51
5 Birdie 5:20
6 Leaving LA 13:12
7 A Bigger Paper Bag 4:42
8 When The God Of Love Returns There'll Be Hell To Pay 4:04
9 Smoochie 3:46
10 Two Wildly Different Perspectives 3:13
11 The Memo 5:17
12 So I'm Growing Old On Magic Mountain 9:58
13 In Twenty Years Or So 6:29

Personnel:
Josh Tillman – performance (all tracks), horn arrangement (track 2), additional horn arrangement (track 1), vocal arrangement (tracks 4, 12)
Jonathan Wilson – performance (tracks 1-3, 5, 7, 8, 10-13)
Thomas Bartlett – performance (tracks 1-4, 7-9, 12, 13)
Elijah Thomson – performance (tracks 1-4, 7, 9, 11-13)
Daniel Bailey – performance (tracks 1-5, 7, 9, 11-13)
Keefus Ciancia – performance (tracks 1-4, 7-9, 12)
Kyle Flynn – performance (track 9)
Gavin Bryars – horn arrangement (track 1)
James King – horn arrangement (tracks 2, 3), additional horn arrangement (track 1)
Paul Jacob Cartwright – string arrangement (tracks 1, 3, 10)
Tom Lea – string arrangement (track 5)
Gavin Bryars – string arrangement (track 6), vibraphone (track 12)
Nico Muhly – string arrangement (track 13)
Chavonne Stewart – vocal arrangement (track 4), additional vocals (tracks 4, 12)
George Potts Young – additional vocals (track 4)
De'Ante Duckett – additional vocals (track 4)
Ryan Stewart – additional vocals (track 4)
Tiffanie Cross – additional vocals (track 4)
Vanessa Grundy – additional vocals (track 4)
Shanika Bereal – additional vocals (track 4)
Celeste Young – additional vocals (track 4)
Dominique Dubose – additional vocals (track 4)
Greg Leisz – pedal steel (track 9), lap steel (track 12)
Kelsey Lu – cello (track 11)

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