FC2ブログ

大友良英 「天国逆子/The Day the Sun Turned Cold」(1994)

 美しいメロディが滴る。弦の響きが切なく広がる、映画音楽。

 二音が上下するシンプルな音列。しかしとても、効果的だ。淡々と、強く胸を打つ。

 嚴浩(Yim Ho)監督の95年作品。予告編は無いが、フル動画がYoutubeにあった。

 大友良英がアジア映画の音楽をやるようになった初期の作品。音盤を中古屋で見たことない。だがAmazon Music Unlimitedであっさり聴けた。嬉しい。

 
 録音は94年6月に吉祥寺GOKにて。さらに同年9月12日に新宿ピットインでのライブ音源を足したとある。
 弦楽四重奏がスタジオミュージシャン、あとは大友の音楽仲間で製作した。
 むりやり前衛色を探すなら(19)のプリペアード・ピアノなど、こじつけはできる。 しかし根本としてノイズ要素はほぼ無く、隅々まで美しい。(12)など一瞬だけ軋ませても、すぐに聴きやすい響きへ向かう。
 このストリングス・アレンジも大友らしいが、素晴らしい出来上がりだ。
 

 じわじわと迫るメロディ。柔らかく、しとやかに。丁寧にメロディがゆったり広がる。明確な旋律が力強く動くよりも、和音転換のように緩やかな動きで音符が浮遊した。
 穏やかで静か。うっとりとくつろぎながら、どこか切ない寂しさを秘めている。

 オンド・マルトノを(9)で入れたり、坂本弘道のチェロや、千野秀一のピアノなどでアクセントをつける。しかし通底する弦楽四重奏のトーンは変わらない。
 これは心地よい音楽だ。ノイジーに尖っていた当時の大友だが、メロディ要素もふんだんに披露していたんだな。知らなかった。
 なおSEも混ぜて総合的な音作りな曲もあるのが、なんとなくDJ感覚の大友っぽい。

 中国文化を意識していたのか、旋律のアジアン風味は大陸寄り。オンド・マルトノの切ない響きは、一瞬は日本的な情緒を感じるけれど。もっと乾いて伸びやかな世界を描いた。
 この(9)は揺れる残響も気持ちいい。もっと早く聴きたかったアルバムだ。大友への印象が、がらり変わっていた。6分強と本盤でもっとも長い作品。
 あとは短い作品がずらり並ぶ。音楽を作り監督に嵌めさせず、あくまで映画音楽としての作り。

 エンディング・クレジット用の長い曲があってもいいのだが、エンド・タイトル曲も2分強であっさりと終わってしまう。そんなものか。

 それにしても、このエンドタイトルが素敵だ。少しテンポを上げて、音数を増やした弦たちが生き生きと瑞々しい雰囲気を出す。
 それまでは切なく危うい雰囲気だったのが、途端に希望を感じさせた。だが全く明るく終わらせず、かすかに綻びを予感させる余韻を持たせるのがにくい。名曲。

Track listing:
1 Toward Home - Frost Descends 0:32
2 Homecoming 1:51
3 Results 2:16
4 Lighting The Ice Lamp 1:30
5 Snow Flurries 2:16
6 Children's Parade - Short Version 0:33
7 Horse Sleigh 1:37
8 Moments With Mother 3:17
9 Snowscape 6:13
10 Recollection 2:50
11 Father's Fury 3:11
12 Death's Door 1:16
13 Repentance 2:56
14 Reviving The Old Wound 1:26
15 Mother's Shop 1:24
16 Father's Reed Pipe 0:35
17 Children's Parade - Long Version 1:55
18 Chinese Pops In The Restaurant 1:31
19 Frigid 1:38
20 Woe-Wine 1:46
21 Taken Away 0:45
22 Visiting 1:36
23 When The Table Turns 1:18
24 Losing All 1:26
25 Thawing - Ending Theme 2:11

Personnel:
Composed By, Arranged By, Edited By, Sampler - 大友良英
Bass Clarinet, Soprano Saxophone, Flute - 野本和浩
Cello - 坂本弘道
Contrabass - 沢田穣治
Electric Guitar - 内橋和久
Ondes Martenot - 原田節 (tracks: 9)
Piano, Prepared Piano - 千野秀一 (tracks: 13, 19)
Viola - Sakai Masano
Violin - 今井博子, 阿部美緒, 澤民樹

Recorded By, Mixed By, Mastered By, Engineer - 近藤祥昭
Recorded and Mixed June 1994 at Gok Sound, Tokyo.
Additional Tracks recorded live on September 12, 1994 at 新宿Pit Inn, Tokyo.
Edited at Lost Space, Tokyo.
Mastered at Kojima Recordings, Inc., Tokyo.

"Mother's Theme" conceived by 大友良英 with Yim Ho.
Arrangements also credited to the musicians.
Tracks 6, 16, 17 & 18 - traditional, from film.
Tracks 9, 13 & 19 - additional tracks exclusive to CD.

関連記事

コメント

非公開コメント