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Steeleye Span 「Cogs, Wheels and Lovers」(2009)

 生演奏でトラッドの現代解釈に、改めて向かい合ったアルバム。

 ライブ盤"Live at a Distance" (2009)を挟んだ、3年ぶりのスタジオ作。本作を最後にケン・ニコルは抜けてしまう。
 今作は久しぶりにオリジナル曲が無く、前面がトラッドのカバー。クレジットだけ見ると鍵盤が記載無し。
 
 エレキギターやエレキベースを使ってるが、基本的にアコースティックな感触に拘ったか。タイトなリズム感や、ジャストな感じは打ち込みやクリックを多用に聴こえる。
 ナイトの多重バイオリンも健在。特に一発録音へこだわりはしない。

 演奏力の向上もあるだろうが、70年代のラフさとは違う現代的な録音スタイルで、生生しくトラッドをアレンジし直した。
 弾むプライアの歌声を軸に、サウンドは暖かい。残響を巧みに使って、乾いた音色ながら奥行きを見事に出した。

 アルバム全体に漂うのは、穏やかなムード。過去作のフォークやカントリーっぽさが消え、英国風味の格調高さが出た。
 ギターよりもバイオリンのソロが目立つ。ギターはリズムのふくらみに軸足を置いた。 ビート感はギターやフィドルが刻みを入れて、ドラムが煽った。ベースはケンプらしいメロディアスさ。

 派手さはないが、手なりの寛ぎに安住せず。きちんとアレンジを追い込んだ演奏は緊張感あり。
 牧歌的ムードへ安直に向かわず。(7)ではメタル・パーカッションを多用して目先を変える。(9)は少し重ための勢いをつけた。
 つまりアルバム全体のメリハリや曲ごとのバラエティさにも気を使ってる。

 キャリアの裏付けを踏まえた、貫禄あるトラッド・ロックを楽しめた。
 地味ながら味わい深い一枚。タイトさと素朴さが両立してる。 

Track listing:
1 Gallant Frigate Amphitrite 4:03
2 Locks And Bolts 3:57
3 Creeping Jane 4:02
4 Just As The Tide 4:25
5 Ranzo 2:48
6 The Machiner's Song 2:42
7 Our Captain Cried 3:26
8 Two Constant Lovers 5:50
9 Madam Will You Walk 3:36
10 The Unquiet Grave 4:44
11.1 Thornaby Woods 4:13
11.2 Silkie Of Sule Skerry [Hidden Track] 5:52

Personnel:
Maddy Prior, vocals
Peter Knight, violin, vocals
Rick Kemp, bass, vocals
Ken Nicol, guitars, vocals
Liam Genockey, drums, percussion

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