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TZ 8160:Artichaut "Orkestra Axerico en Selanik" (2011)

 中世のユダヤ音楽を、テクノ風味に再現した独特なアプローチの盤。

 ジャケット写真は上の画像と逆。どっちかが裏焼き。CDのジャケットは少年が左を向いている。
 本盤収録曲は地中海諸国のmedevial Sephardic(中世セファルディック)の曲が下敷きと記された。セファルディックとはセファルディムの音楽のこと。セファルディムとは・・・日本語訳はないみたい。
 Wikiによればディアスポラとして欧州へ離散したユダヤ人のうち、南欧に住むアジア・中東系イスラム人を指す。アシュケナジム(白系ユダヤ人)と対比する、ユダヤ系の大きな一派をさすそうだ。

 音楽性は雑駁な打ち込みを基軸の抒情性を含んだ。軽いビートがユダヤもしくは中東的なサウンドへ、奇妙な浮遊性を付与してる。音楽はThomas Baudrillerが多重録音で担当。録音やミックスも含めてすべて彼が行った。そこへEmmanuelle Rouvrayがエキゾティックな歌(と、パーカッションも)足して完成。
 もとは09年に彼らが自主製作の盤を、TZADIKが再発の構図らしい。

 テクノ、チープな中東ポップス、イスラム・ブレイクビーツ、そんなカテゴライズが頭に浮かぶ。彼らの拠点はフランス。多様な文化性を踏まえたユダヤ人の逞しい音楽、なのだろう。
 文化性の蓄積が無く上っ面だけで、ぼくは本盤を聴いてしまっているが。

 素養や文化まで踏まえたら本盤のアプローチは、伝統音楽を現代風味で塗り替えつつも本質の切なさを打ち消さない、のだろう。中東風のしっとりした旋律をボーカルはなぞるけれど、いわゆるドップリな情感まで行かない。

 どこか優美な表層を保つ。ただしファッションの上っ面とは思わない。文化のかっぱらいでなく、きちんと地に足の着いたルーツ音楽と思う。
 低音をあまり強調させず、チープかつ硬質な音作りが特徴。

 うーん、これは知識と体験がいる音楽だ。異国からエキゾティックな物珍しさで聴いたらすごく誤解しそう。
 
 Thibault ChaumontのキャリアはDiscogsによれば09年までさかのぼる。ミュージシャンよりもエンジニアとして活動が主なようだ。
 彼のWebはこちら。スタジオDeviaimg 3nt Labを構え、マスタリングと作曲者って大きく表記されている。ここには関与した盤で100枚以上が記された。
http://deviantlab.com/

 自らのルーツを踏まえ、作り上げたのが本盤。さらに当時の音楽を掘り進め継続せず、コンセプトとして具現化した一枚か。
 曲は打ち込みビートに歌を足して出来上がり、って安直な仕上がりではない。音構造はかなり凝っており、さらに雑踏のざわめきや音色を変えたりサンプリングを足してみたりと、工夫がいっぱい。この辺はエンジニアの面目躍如か。

 ルーツを現代のフィルターを通し、なおかつアレンジや構成に技を仕込んだ逸品。
 メロディの自己主張が強いためBGMには向かないが、異文化の味わいを一ひねりした妙味とアプローチが興味深い。

Track listing:
1 Zimbolucha 5:47
2 El Rey 5:15
3 Dos Amantes 3:51
4 El Padre 4:34
5 Axerico 4:04
6 Oy Kalelumbror 4:04
7 Dame La Mano 5:20
8 La Hermana 5:07
9 Por Que Lloraj 5:32
10 A La Una 6:48

Personnel:
Recorded By, Mixed By, Programmed By, Sampler, Bass, Double Bass, Mandolin - Thomas Baudriller
Vocals, Percussion - Emmanuelle Rouvray
All tracks based on medevial Sephardic songs from Mediterranean countries.

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