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John Coltrane 「Blue Train」(1958)

 コルトレーンは人選と曲提供に我を抑え、凄腕どうしが応酬のグルーヴに任せた盤。

 愁いを帯びた哲学的な姿に見せかけて、実態はチュッパチャプスを舐めるコルトレーンのジャケットで有名な、ジャズ名盤と位置づけられるブルーノート1500番台の一枚。
 メンバーはtp,tb入りの3管ハード・バップ。リーダー作として個性は出すも、サウンドは豪勢かつ太い響きを狙った。
 
 全5曲中(4)以外はすべてコルトレーンのオリジナル。
 今のリイシューでは(1)の別テイクが2曲、(5)の別テイクが2曲をボートラで収録してる。

 録音は57年9月15日にヴァン・ゲルダー・スタジオにて。31歳のコルトレーンだ。ちなみに没年は40歳。駆け抜けたんだな、彼は。
 "シーツ・サウンド"と称される饒舌に音で埋め尽くした演奏が昇華した"Giant Steps"(1959)は本盤の2年後。
 初リーダー作の"Coltrane"(1957)が同年の5月に録音。つまりまだ、デビューしたての頃合い。

 コルトレーンの音源は発掘が進むため分かりづらいが、リアルタイムでは本盤が2ndリーダー作にあたるようだ。プレスティッジと契約、"Coltrane"をリリースしながらもアルフレッド・ライオンに義理を立ててブルーノートからリリースの流れらしい。
 従ってリーダー作にもかかわらず"courtesy of Prestige Records"とクレジットされる、奇妙な構図が発生した。
 なおブルーノートからリーダー作は、本盤のみとなる。

 当時の録音をコルトレーン名義の盤でたどると、最初は4月に"Dakar"、5月に上記の"Coltrane"と"Lush Life"。8月に"The Last Trane"や"John Coltrane with the Red Garland Trio"とあれこれあり。
 ほぼリアルタイムでリリースは、翌年発売の"John Coltrane with the Red Garland Trio"(1958)のみ。後追いでジャズを聴いてると、どんだけリリースしてたのか戸惑うくらい盤が多いけれど、実際は没音源もかなりあって、リリースもそれなりに間が空いていたようだ。買うほうが追い付かないものな。今に比べて相対的にLPも安くはなかったろうし。

 コルトレーンは57年にさまざまなセッションをこなした。マイルスとも共演済み、モンクやソニー・クラーク、レッド・ガーランド、マル・ウォルドロンらのリーダー作をこの年に行っている。
 ちなみに"~in'"のマラソン・セッションは本盤の前年。
 サイドメンは選び放題だったろう。マイルスのリズム隊を軸に豪華なメンバーをそろえた。

 本盤を聴いて思うのは、コルトレーンのバランス感覚。我の強いサックスではあるが、むやみに前へ出すぎない。ブルーノート流のホーンが多いハード・バップなスタイルを踏襲や、プレスティッジと契約してる手前があったかも。
 
 吹きまくりタンギングを控えめなコルトレーンのスタイルは萌芽があるけれど、まだ突進する機関車なパワーは炸裂していない。アンサンブルの中ですんなりとテナーが収まった。
 オリジナルの楽曲はどれも明るくパワフルだ。唯一のカバー(5)でいきなり、世界がロマンティックに変わった。オリジナル曲は、コード進行が明らかに違う。知識不足で分析できないが、いわゆる当時のジャズっぽい雰囲気だ。

 イキがいいのはリー・モーガン。歯切れ良く音をばら撒いた。カーティス・フラーも軽やかにフレーズを溢れさせる。
 このぐいぐいプッシュする感覚はビバップの残滓か。コルトレーンの膨大な音を詰めるフレーズ感に通底する。

 のちのコルトレーンのスタイルは、まさに本盤で彼ら二人のスピード感を加速させた感あり。もっと速く。それがテーマかのように。
 本盤でのコルトレーンは速さで言うと、まだ特にモーガンへ追いつけていない。緩やかやぎこちなさって意味では無い。単に溜めや音数に余裕があるとでも言おうか。
 手を抜いてはいまい。しかし溌剌さでモーガンやフラーより控えめに感じる。

 コルトレーンの豪放さはロリンズの直観さと異なった。もっと理知的で求道的。だから彼の演奏は後年ほど聴くのに集中力がいる。
 けれど本盤はまだ、肩の力が抜けた。サイドメンにアドリブのスペースもたっぷり与え、演奏がのびのびしてる。
 甘いバラードは(5)のカバーに留め、あとは前のめりのスイング感を大事にした。

 本盤はリズム隊も切れ味鋭い。全盛期のハード・バップはこんな感じだったのだろう。瞬発力とパワーにダンディズム。いかに粋に演奏するかってことで。
 コルトレーンは愚直で武骨だ。後年、激しさと鋭さに邁進する。
 だが本盤はまだ、焦りと言うか肩に力が入っている。(1)の没テイクが顕著だ。音を詰め込もうとしつつ、譜割から溢れて性急になってしまい、それに気づいてテンポ感をわずか緩めるような。そんな試行錯誤を感じた。

 併せて(1)を聴き直すと分かる。「落ち着け」と言われたかのように、アドリブは滑らかでビートに寄り添ってる。
 それでもこのテイクでのコルトレーンはサックスの扱いが荒い。音色は時に軋み、ヨレる。わざとに聴こえない。ノイジーな音色狙いでなく、扱いきれずにリードが暴れてるっぽい。
 
Track listing:
1 Blue Train 10:40
2 Moment's Notice 9:08
3 Locomotion 7:12
4 I'm Old Fashioned 7:55
5 Lazy Bird 7:04

Personnel:
John Coltrane - tenor saxophone
Lee Morgan - trumpet
Curtis Fuller - trombone
Kenny Drew - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

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