TZ 7348:Jamie Saft Trio "Astaroth: Book of Angels Vol. 1 Masada Book Two" (2005)

聴きやすくも奥深いテクニックが味わえる盤。Masadaでもっともグルーヴィなグレッグの参加により、独特の粘っこいノリは残ってる。しかしピアノとドラムのクールさが、流麗な雰囲気を強調した。ピアノがリード楽器ゆえに、クラスター以外はノイズやフリーキーな解釈が無いことも、拍車をかける。
速いパッセージ、めまぐるしい打音もジェイミー・サフトは粒立ち良く奏でた。

   
04年12月にジョン・ゾーンが作曲した300以上もの新曲を、さまざまな組合せで演奏するMASADAの新プロジェクト、"Book of Angels"。第一弾がピアノ・トリオの本作だ。

Masada関連盤で恒例の収録曲チェック。全10曲、このあとのBook2シリーズのどれとも絡まぬ、新曲群だ。奇妙に聴き覚えありそうな親しみ安いMasada流の曲が詰まった。
というのも、一聴してMasadaのレパートリーは煙るムードが漂って似かよってる。聴き分けるのはたやすいが、いかんせん膨大過ぎて覚えきれない。

Jamie Saftはセッションへの参加のみならず、The DreamersやElectric MasadaのメンバーとしてもTzadikでは馴染深い。グレッグ・コーエンはもちろんマサダのメンバー。ベン・ペロウスキーも、何作もTzadikがらみで参加してる。

ジェイミーはMASADA独特のクレツマー流の、なまめかしいメロディを、敢えて流麗に弾き散らかさず所々で区切るように奏でた。はじけんばかりの熱気と、どこか引っかかるカクカクしたノリが、本盤でのピアノの魅力だ。
アドリブ・センスが素晴らしい。クレツマー的な情感を常に滲ませつつ、テーマの変奏から独特の即興まで幅広く展開。指は軽やかに回る。メロディを聴かせるより、スピーディにフリーな鍵盤の叩きっぷりが印象に残る。

本盤は「ちょっと違うMasada」ってコンセプトにピタリとハマった。
リズム隊も黙っていない。グレッグはベースラインとフレーズを自在に飛び回る、頼もしい低音だ。ドラムもジョーイ・バロンとは少々違うが、賑やかにシンバルを鳴らし、深くタムが響いた。MASADAへ通じる、勇ましげで猛然たるビートだ。

ハードバップを軸足に、フリーからオーソドックスなジャズまで幅広い。主役はあくまでピアノ。ソロ回しは無く、きっちりとアンサンブルをジェイミーが引っ張った。ドラムもベースも従順さは無く、自由に弾き続けるが。
(3)でテーマだけが進行し、リズムはオスティナート。溜めて溜めて、ミニマルに動く。途中でシンバルのパターンがわずかに変わるだけ。淡々とピアノの静かな展開を盛り上げた。
さらにツイン・リードからフロントがピアノのみ、も大きなアレンジの違いだ。時に絡み、時に離れる。メロディとカウンター、双方がフリー。多様なパターンを瞬時に切り替え成立させる2管のスリルがピアノのみに絞られ、くっきりとアドリブの輪郭が明確になった。

録音のせいかな。ダイナミズムが今一つ迫力無く、アルバム全体のマスタリングはやけに平板な印象を受けた。
ジョン・ゾーンの楽曲を本盤でアレンジしたジェイミー。TZADIKでも多くの盤で録音を担当し、ジェイミーらしく、ミックスも彼自身が行った。エンジニアの記載無いが、これもジェイミーかな。

Personnel:
Jamie Saft: Piano
Greg Cohen: Bass
Ben Perowsky: Drums

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