TZ 7201:Ikue Mori "Hex Kitchen" (1995)

New Japanシリーズ最初のリリース。イクエ・モリのTzadikでは1st、通算ソロなら2ndのようだ。本盤は手練れのゲストを招き、脱力しつつもビートに拘る、前衛エレクトロを提示した。
    

NO WAVEシーンではDNAにdsで在籍、その後もNYで活動中にジョン・ゾーンらと多数の作品でコラボを繰り返してきた。ぼくはイクエって、ドラマーよりPC奏者の印象が強い。
本盤でも生楽器でなくドラムマシンとサンプラーを操った。けだるい日本語や英語の歌も披露してる。

サウンドの取り留めない幻想性には「いざ前衛を!」と意気込む堅苦しさは無い。録音期間のクレジット無いが、気の合う仲間とスタジオに幾度も入り、アイディアを片端から作品化のような無邪気さをサウンドから感じる。つまり作りこみは即興、ただしアイディア構築に時間をかけてそう。
各曲はどれも数分程度。投げっぱなしでなくコンセプトの明確化は図り、曲へ構成した。
逆にゲストはあくまでサウンドの一要素、イクエの抽象的なキャラクターが全面に出た盤だ。

収録曲は完全即興でなく、構築したアイディア・ブロックを次々に積み上げた印象だ。
例えばドラム・マシーンでソロの(5)。散発なビートがしだいに音数増え、最終的にアフリカン・ビートへ変貌する。
もしくは(9)。和風のお囃子ビートから始まり、しだいにテンポ・ダウンしコミカルなムードへ変貌を遂げる。
しかし個々の音列に有機的な関係性は無く、生まれたアイディアを次々に混ぜたかのよう。そんなピュアな作品だ。

リズムのこだわりは本盤の各所から滲む。ダンス・ビートでなくパーカッシブな打音の形で。時に連打、もしくは規則的に鳴っても、肉体性は非常に希薄だ。あくまでもビートの連続でしか無い。
すなわち本盤でイクエは聴き手を踊らせようとしない。しかし執拗なリズムへの執着は明確だ。双方の妥協的な立ち位置を探る過程が、本盤を聴きこむ鍵かもしれない。

なお本盤へはAbigail Childが監督の映画"8 Million"(1992)のサントラも含まれてるそう。

Personnel:
Ikue Mori: Drum Machines, Sampler
Catherine Jauniaux: Vocal
Hideki Kato: Bass
Zeena Parkins: Electric Harp, Keyboard, Accordion
Hahn Rowe: Guitar
Jim Staley: Trombone
David Watson: Bagpipes, Guitar
John Zorn: Clarinet

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