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Sons of Champlin 「The Sons」(1969)

 LP一枚で多様な方向性を描く、濃密なアルバムになった。

 2枚組だった1stのリリースと同年、早くも2ndを発売したサンズ・オブ・チャンプリン。プロデューサーにエンジニア畑のJohn Palladinoを迎え、よりスタジオ作業に軸足を置いたアルバムを作った。
 ホーン隊を多用するブラス・ロック路線はそのままに、アルバム冒頭のSSW風味や10分以上の長尺2曲を配置の構成など、トータル性とサイケ風味に食指を伸ばした。

 アルバム一枚に作品を凝縮しながらも、音像はくるくる変化する。シンプルなロックンロールでなく、もっと幻想的で雄大な世界を狙ってる。

 世相や流行を抜きにして音楽だけで解釈を試みると、本盤はバンドでなくもっと個人的で内省性を志向した盤に思える。派手なアレンジ、高らかな金管楽器の爽快性とは別の次元で。
 
 作曲クレジットは"The Sons"とバンド名義。メンバーはクレジットを明らかにせず、ビル・チャンプリンの独断バンドの要素を消して民主制を強調してはいる。
 けれども本盤から受ける印象は、集合体の一体感や共同体の平和な結合ではない。もっと独断で収斂された方向性がある。
 多様な意見の散漫さでなく、奔放な個人のイマジネーションな表現だ。

 それは細かくアレンジされたサウンドから感じた。ジャム風にルーズな展開でなく、ほとんどの部分が譜面のように整然と配置され、くるくる変わる音像も制御と統制が図られている。

 ベイエリアのブラスを取り入れたサウンドが流行してた当時の中で、サンズ・オブ・チャップリンの位置づけは一過性の盛り上がりを誘発しない。もっと心に沁みる、切なさを持つ。

 華やかに盛り上がる時もあるだろう、笑顔が溢れる日常ではあるだろう。しかしナイーブな心も大事にする。そんな世界観が本盤だ。それは他人には分からない、と個人主義の内気さではない。バカ騒ぎを冷静に見るクレバーさを気取る冷笑とも違う。
 タフさで割り切れぬ無垢さを表現ではないか。

 抽象的な表現が続くけれど。音楽の観点だと本盤は振り幅が大きい。弾き語り風から大編成のブラス入りバンドまで。これを滑らかにミックスしたのはプロデューサーの手腕ゆえだろう。

 この盤はバランスがきれいだ。団子にせず個々の楽器をクリアに配置し、なおかつダイナミズムを意識した。オルガンを後ろに置いて厚みをつけ、金管は華やかにハイトーンを飾る。
 いっぽうでボーカルは囁きから張った喉まで幅広い。このダイナミズムを自然にまとめてる。

 本盤からはシングルで(5)と(4)が切られた。A面が(5)。歪んだギター・リフを元にしたポップなロック。本盤で言うと、ちょっと浮き気味。少しルーズな曲調ではある。

 A面、B面、最後に長尺を置いたため、どちらの面も最後は賑やかで前のめりなグルーヴで終わる。聴いたときの余韻は爽快さだ。
 けれどもアルバムの始まりは静かなSSW風味。この落差が興味深い。
 
 力強い1stの勢いも良いが、本盤での凝縮度合いも捨てがたい。

Track listing:
1 Love Of A Woman 7:50
2 Terry's Tune 3:49
3 Boomp Boomp Chop 10:05
4 Why Do People Run From The Rain 3:28
5 It's Time 3:55
6 Country Girl 1:46
7 You Can Fly 11:13

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