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Prince 「Rave In2 The Joy Fantastic」(2001)

 壮大な気まぐれか、緻密なストレス解消か。謎のリミックス盤。プリンスのキャリアでもっともヒップホップ色が強い盤になった。

 "Rave Un2 The Joy Fantastic"から約2年。ジャケットは視線を変えただけ。だが中身は全く違う。
 NPG Recordsの通販限定で発売された。そもそも"Unto"と同時発売がコンセプトだったのか、完パケ後に本盤の企画が浮かんだのか。 

 多様性をアリスタの"Unto"盤と自主レーベルの本盤で出し、聴衆の撹乱狙いかはたまた売れ線路線の"Unto"盤からもっと、ハード路線でぶち壊したかったのか。
 そのへんの背景はさっぱりわからない。
 少なくとも発売は"Unto"盤からずいぶん経ったあと、「なぜいまさら?」の感が当時は否めなかった。

 本盤の特徴は"Unto"盤とほぼ同じ構成ながら、プリンス流のリミックスが施された。すなわち外部のリミキサーに音源渡して「あとはよろしく」ではない。演奏を差し替え、歌も変え、時には長尺版を投入する。
 ブートを聴いてるとプリンスはしばしば長めに作品を作り、あとから編集で刈り込んでリリースに持ち込んだ様子が伺える。とりあえずアイディアを山ほど詰め込み、さらに絞り込んで輝かせるかっこうだ。

 何年もたってから再録して磨くこともたまにしてたようだ。本盤はバージョン違いというほど単純ではないが、心機一転の一から完全に作り直したわけではない。そのわりにがらりと印象違う楽曲がしばしば。プリンスの凝り固まらぬ奔放な創作力に唸る一枚。

 無理やり全曲をいじったわけではない。ざっとまとめると、次の通り。
 "Unto"盤から3曲が抜かれ("Everyday Is A Winding Road" "Strange But True","NPG Commercial")、"Beautiful Strange"が足された。
 リミックスやダビング、差し替えが5曲。 ("Rave In2 The Joy Fantastic", "Undisputed (The Moneyapolis Mix)", "The Greatest Romance Ever Sold", "Hot Wit U (Nasty Girl Remix)", "Man'O'War (Remix)")
 長尺版が4曲("Tangerine", "The Sun, The Moon And Stars", "Baby Knows", "Prettyman")。
そのままが4曲("So Far, So Pleased","The Sun, The Moon And Stars","I Love U, But I Don't Trust U Anymore","Wherever U Go, Whatever U Do")。

 むしろ全曲弄って欲しいかった、とマニア的な希望も残る。

 いずれにせよ弄りかたは過激だ。(1)はテンポを上げながら、尺は1分ほど長い。フレーズや歌詞を足して、よりエレクトロかつダンサブルに仕上げた。もちろんタイトルにそって歌も違うが。ハーモニーの部分はテープ処理で"Un"の部分を潰して"unto"から"into"も聴こえるようにしてる風に聴こえる箇所もあり。
 クレジットに寄れば、音を足したりミックスは"Emancipation"でも仕事したドイツのエンジニア、Hans-Martin Buffらしい。

 (2)はまさにリミックス。リズムやフレーズのバランスを変え、差し替えもあり。"unto"盤でのスピーディな繋ぎから、本盤ではファンクさを増した流れになった。本盤のほうが1分ほど尺が長い。

 (3)は2分半ほど長いバージョン。こちらのほうがオリジナルかも。構成で言うと"unto"盤のほうがシンプルで良い。耳に馴染んだ、刷り込みもあるけれど。中盤からシンセ・ストリングスで甘く広げていく本盤のテイクももちろん悪くない。
 ラップやスクラッチの音が加わりヒップホップの色味が増す。
 
 (4)は音数を減らし、スクラッチなどを足してヒップホップ色を強調した。30秒ほど"Unto"盤より短く刈り込んでる。クールでスカスカな解放感が狙いか。

 (5)は30秒ほど長い盤。冒頭の質感は"Unto"盤を生かしつつも、微妙に音が増えてサイケなムードが強まった。逆回転風のシンバルなど、ブレイクビーツ的な味わいも濃い。単にブリッジやフェイドアウトの先を聴かせたアレンジではない。
 無闇に長くすればいいってものでもないが、とはいえ終盤でプリンスのギターが聴ける本テイクは愛おしい。

 (6)は原曲のまま。本盤の流れで聴くと、ギター・ソロが連発してグッとロックに寄った曲並びで、盤全体で流れる印象が変わる。(7)も原曲のままながら、少しタッチが違って聴こえた。
 ギター・ソロで盛り上がった気持ちを(7)で、ふっと柔らかくポップに溶かす役割が強まるしかけだ。

 リミックスだが、がらりアレンジを変えて浮遊感を増したのが(8)。もっと甘い印象だった"Unto"盤から、一気にエレクトロ・ファンクっぽい味わいにすり替わった。
 プリンスの奔放なアレンジ・センスが光る一曲。やはり刷り込みで"Unto"盤に思い入れあるけれど。本盤のふらふらと揺らぐ雰囲気も堪らない。

 (9)はフェイドアウト後を聴かせる、な趣き。30秒ほど長い。カットアウトで終わった"Unto"盤から、同じブレイクをもう一発足して、ざらりと演奏を聴かせる。セッション・テイクを繋げただけっぽい。

 "Unto"盤と同じテイクの(10)を経て、本盤で差し替え曲の(11)へ。当時のビデオ"Beautiful Strange"にもこの曲は収録された。重たくブルージーな曲。しっとりした(10)からこの曲へ続くと、懊悩する雰囲気が深まる。優しそうで実は苦い(10)の世界観を深める点で、効果的な流れだ。
 単純に楽曲だけ見ると、むせび泣くギターが断続的に現われ、太いベースとつぶやくようなドラムの生々しいリズム構成が映える。
 音像は目立たせないが、鍵盤やハーモニーなど、きめ細かくダビングされたアレンジ。一聴はシンプルに思わせて、実は繊細なミックスが施されている。

 (12)と(13)は、オリジナルのまま。"Strange Blue"でのエレクトロ色を切り取って、"Into"盤ではここから最後まで生演奏の味わいを強調した。冒頭の打ち込み色強い硬質なイメージから、じわじわと肉体回帰するように。
 その点で本盤のほうが、うねりを持ったストーリー性が明瞭に表現されている。

 "Unto"盤でも隠しトラックだった(14)は本盤で1分ほど長いテイク。フェイド・アウト後を聴かせる。原盤のファンクネスはそのままで、さらにファンキーさへどっぷり浸れる趣向だ。
 そもそもこれは、もろにJB色が出た曲。"Unto"盤では電話取って「誰だよ?」と尋ねたあと、すぐに終わるが、本盤はそのまま踊り続けるタフネスを強調した。

 こうして本盤を聴くと、"Unto"盤がいかに人工的だったかが分かる仕組み。対にして曲をそれぞれ聴きこんでいくと、多層的に"Unto"盤も味わえた。うーん、凝っている。

Track listing:
1 Rave In2 The Joy Fantastic 5:14
2 Undisputed (The Moneyapolis Mix) 5:45
3 The Greatest Romance Ever Sold 8:07
4 Hot Wit You (Nasty Girl Remix) 4:23
5 Tangerine 2:13
6 So Far, So Pleased 3:24
7 The Sun, The Moon And Stars 5:18
8 Man'O'War (Remix) 5:12
9 Baby Knows 3:53
10 I Love You, But I Don't Trust You Anymore 3:34
11 Beautiful Strange 4:55
12 Silly Game 3:29
13 Wherever You Go, Whatever U Do 3:16
14 Prettyman 5:36

Personnel:
Prince - all other vocals and instruments
Mike Scott - guitar
Ani DiFranco - acoustic guitar
Rhonda Smith - acoustic bass, bass
Kirk Johnson - drums, percussion
Michael B. - drums
Kenni Holmen - saxophone
Kathy Jensen - saxophone
Maceo Parker - saxophone
Steve Strand - trumpet
Dave Jensen - trumpet
Michael B. Nelson - trombone
Gwen Stefani - co-lead vocals
Sheryl Crow - co-lead vocals and harmonica
Marva King - backing vocals
Larry Graham - backing vocals
DuJuan Blackshire - backing vocals
Johnnie Blackshire - backing vocals
Kip Blackshire - vocoder vocals
Chuck D - vocals
Eve - vocals
Bros. Jules - scratches
Clare Fischer - orchestration

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