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TZ 7074:Gordon Mumma "Live-Electronic Music" (2002)

 電子音楽の始祖の一人をベスト盤的にまとめた。淡々、しかし冷淡でない隙間の多さが目立つ作風である。

 ゴードン・ムンマは1935年のマサチューセッツ州生まれ。ジョン・ケージやデヴィッド・チュードアらと共演のキャリアを積み、現代音楽のフィールドで活躍した始祖の世代らしい。チュードアの電子楽器を設計者でもある。

 本盤は彼の作品集で、63年から85年までの作品を集めた。10~20分程度のボリュームが並ぶ。ムンマはエレクトロニクスかホルンを担当し、生楽器と共演するスタイルを取る。
 本盤では次第に年代を遡り、ムンマの音楽をたどっていく構成を取った。
 
 (1)は85年と本盤でもっとも新しい作品。ムンマはコンピュータ、そしてWilliam Winant(per)と共演する。ランダムな音楽の羅列に聴こえるが、譜面だろうか。
 電子音はシンクラヴィアっぽいデジタルな音色を基調に、たまに野太いアナログ・シンセ風の響きが混じる。基本的にはパーカッシブな電子音へ、さらに打楽器が加わりリズムを撒き散らす構図。
 パーカッションはドラムからビブラフォンのようにメロディを出せる楽器までさまざまを使った。

 音のアプローチは後期ザッパを連想するが、もっとのどかで音数が少ない。むしろこの音楽は聴きやすく、リズムの無秩序さに慣れればアンビエント的にも聴けそうだ。
 譜面は数値的だとしても、受ける印象は間や余韻を楽しむかのよう。エンディングがえらく唐突。

 (2)はムンマの独奏。ホルンと電子楽器の同時演奏かな。多重録音ほど濃密なセッション構造ではない。電子楽器はCybersonicsとクレジットあり。自作楽器か。
 67年の録音で、ChristianとHolly Wolffに捧げられた。クリスチャン・ウォルフとは、ドイツ人でアメリカで活動した実験音楽の作曲家。34年生まれだからムンマと同世代だ。
 彼もケージらと親交あり、後年の作品は休符を多用した作風とWikiにあった。ヴァンデルヴァイザー系と同種の志向と感じた。

 この曲も、確かに静かな響きが淡々と続く。いわゆるオフサイト系に通じるストイックな楽想ながら、音色や間を楽しむ風情までは行かない。どこかそっけない。
 リバーブの余韻がもう少し続けばなあ。なんだかあっさりと音が収束してしまう。
 ちなみに電子音は中盤以降にジワリ存在を出す。冒頭は濁ったホルンの響き、そして電子音へ引き継がれる構成は、じっくり聴くとスリルがうっすらあり。
 終盤は電子音のドローンにホルンの軋みが混ざった。

 前曲から変わらぬトーンで始まる(3)は、一年前の66年作。振付師のマース・カニンガム舞踏団から委嘱である。最初はおよそリズム性がなく、まさに前衛的な舞踊に似合いそうな電子音の低いドローンだ。
 これはバンドネオンをデビッド・チュードアが演奏し、サイバーソニックをムンマが演奏してる。

 鈍いノイジーな電子音が空間を貫く。リズムよりも持続する響きと揺れを強調した。バンドネオンはどの音だろう。電子制御で歪ませてるのかも。
 次第に音数が増えていく。ハーシュまで到達せず、多層的な要素を持ちながら振り切らない。もどかしい。このもどかしさを本盤の全編にわたって感じた。これが彼の持ち味かな。

 ぼくはノイズが好きだけど。この曲みたいに起伏が緩やかで、煮え切らない中途半端さが続くのは、意外と間が持たない。暗闇の中や広い空間で、ポツンと立ちながらこの音楽を聴いたら印象は変わるだろう。
 激しいノイズに至っても、あと一要素が欲しくなる。そういう舞台立てを込みで味わえそうな曲。だから、振り付けの音楽にはまさにお似合い。ならば委嘱作としてぴったりともいえるな。

 (4)も最初の響きは(3)に似ている。この盤は曲順の滑らかさが見事。
 続く(4)は同時期の作曲家ロバート・アシュリーが声で参加した電子音楽で、65年の録音。
 ムンマの電子変調されたホルンが轟いた前曲と同様に、鈍く歪んだノイジーな響きが淡々と続く。完全な機械音と最初は思うが、言われればホルンかと納得する。虫の羽音を増幅したかのよう。
 時代を考えれば確かに、この音像は斬新だった。なお電子音はムンマでなくWilliam Ribbensの演奏。

 最後の(5)は録音が63年。ミシガンの前衛音楽のチーム、ONCE Groupが61年から66年まで行ったONCE Festivalで初演とある。
 このチームの設立者にアシュリーやムンマの名前があり。アシュリーとムンマのピアノ連弾で、音をCybersonic Modificationと称する電子機器で変調させた。
 本盤の中で、最もよかったのがこれ。古めかしい録音で、退廃的な電気加工のピアノが打楽器的に響く。不安定な和音が動きながら硬質に打ち付けるサウンドは、奇妙な幻想性を漂わせて心地よい。ポリリズミックな譜割が緊迫さを絶妙に煽った。
 8分強と本盤でもっとも短い尺だが、これこそ30分くらいかけてじっくりと味わいたい。

Track listing:
1 Than Particle 10:22
2 Hornpipe 15:16
3 Mesa 22:58
4 Horn 9:34
5 Medium Size Mograph 1963 8:10

Personnel:
1 Than Particle
Computer - Gordon Mumma
Percussion - William Winant

2 Hornpipe
Horns [Waldhorn, Valve-horn], Electronics [Cybersonics] - Gordon Mumma

3 Mesa
Bandoneon - David Tudor
Electronics [Cybersonics] - Gordon Mumma

4 Horn
Electronics [Cybersonics] - William Ribbens
Horn - Gordon Mumma
Voice - George Cacioppo, Robert Ashley

5 Medium Size Mograph 1963
Piano [4 Hands With Cybersonic Modification] - Gordon Mumma, Robert Ashley

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