Hank Mobley 「Hank Mobley Quartet」(1955)

 ハード・バップの申し子が、溌剌とした当時の先端を行くジャズを吹きこんだ。

 現在では2012年リリースの"Newark 1953"がディスコグラフィーのトップに来るが、本来は本作が初リーダー作になる。
 10"盤発売のため、全体で30分弱と短い仕上がり。ビバップのスタイルを引きずってか一曲は数分程度に収めて、それほどソロ回しを長くしない。
 逆にハンク・モブレーのソロをひたすら強調でなく、アンサンブル全体の調和とソロ回しを意識したアレンジだ。

 全6曲中、5曲が自作。作曲に拘るスタイルは本作から顕著だった。
 メンバーは前年の11月に加わった、ホレス・シルバー&ジャズ・メッセンジャーズの面々。ケニー・ドーハム(tp)に参加を遠慮してもらい、ワンホーンで仕立ててる。

 二十歳で1950年にPaul Gaytenのビッグ・バンドで初録音したモブレーは、コンボ編成でなく大編成のコンセプトに拘ったと想像する。本盤こそワンホーンだが、後年は管を数本立てたアレンジで数多く吹きこんだ。

 サイドメンで数多い盤があるモブレーは、我が強すぎない男だったのではないか。53年のマックス・ローチ、54年のデジー・ガレスピー。彼らのバンドに参加しながら、モブレーはどんな自分の音楽を温めていたのだろう。
 ビッグバンドが流行らなくなるジャズ業界を見据えながら。なおハード・バップが確立は50年代半ばらしい。ちょうど本盤が吹きこまれた頃合いってことか。

 ちなみにモブレーの年は1930年生まれ(昭和5年)。マイルスやコルトレーンの4つ下、ロリンズの一つ下でフラナガンと同い年。ブレイキーからは11歳下、モンクとより13歳下になる。

 コンセプトを追求するマイルスやモンク、奏法に拘るコルトレーン。メロディが溢れだすロリンズ。いずれとも違う立ち位置だ。
 モブレーは作曲を重要視する活動だが、ジャズ・シーンの牽引や新ジャンル確立、斬新な手法追求を狙って作曲した風とも違って思える。

 今、モブレーの盤を聴きたくなったのは、彼のコンセプトを知りたくなったから。
今のぼくの印象は、次の通り。もっと彼の盤を聴き進めることで、色々考えていきたい。
 モブレーの作曲志向は、クールさではないか。自分がむやみに前へ出まくらないが、サウンドではばっちり決める。そんな感じ。
 あとはメロディの自由さ。テーマはあくまできっかけであり、どんどん崩して構わない。和音進行の妙味と、イマジネーションを膨らませるアイディアとして作曲してたのではないか。

 本盤で感じるのはバランスの良さ。アンサンブルはキメが多く、なおかつ個々が立ちすぎない。
 演奏はタイトに決まり、リズムがキュッとしまってる。だからこそサックスの頼もしいソロが流麗に決まり、ピアノや他のソロも危なげなくスマートに流れた。
 ぼんぼんと弾むダグ・ワトキンスのベースが、比較的手数少なく大人しいブレイキーのドラムと見事なグルーヴを作った。

 当時流行りのハード・バップを吹きこみながら、前に出すぎない。自作を投入以外は気負いすぎず、滑らかなバンドのノリに乗っかって気持ちよく吹いている。
 ずるずる吹きまくらず、ポイントで的確にタンギングするスタイルがサックスの歯切れよさをきれいに演出した。この辺、ビッグバンド上がりの面目躍如か。

Track listing:
1 Hank's Prank 4:29
2 My Sin 3:48
3 Avila And Tequila 4:31
4 Walkin' The Fence 3:38
5 Love For Sale 4:30
6 Just Coolin' 4:11

Personnel:
Hank Mobley - tenor saxophone
Horace Silver - piano
Doug Watkins - bass
Art Blakey - drums

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