Me'shell Ndegeocello 「Bitter」(1999)

 ぐっと内省的にメロディを丁寧に膨らませた傑作。

 冒頭の荘厳なストリングスからして印象が違う。1stのヒップホップ、2ndのファンク。それぞれの色合いを咀嚼した上で、旋律に拘った静かなソウルを仕上げた。

 全12曲中、カバーが(6)のジミヘン、(10)はDavid TornとRoger Moutenotの作品。さらに数曲はミシェル・ンデゲオチェロと他のミュージシャンの共作ながら。それはあくまでアルバムを構築するための手助け。
 散漫さや借りてきたアイディアなぎこちなさはなく、全てをどっぷりとンデゲオチェロはの色に染めた。
 (1)がアダム。そして(10)がイヴ。そこで(10)を自作でなく、あえて他人の曲を採用を深読みしたくなる。つまり自らの世界に閉じこもりすぎず、世界と関わっていたい彼女の繊細さ、寂しがりやさが出たのではないか。

 プロデューサーはCraig Streetに変えた。この時点はカサンドラ・ウィルソンやホリー・コール、k.d.ラングなどジャズ寄りで、一癖ある女性ボーカルを得意とした。
 これまでのヒップホップ寄りから脱却をンデゲオチェロが図ったか。
 前作から3年ぶりの3rd。現在に至るまで彼女は数年おきにアルバムをリリースし、決して性急さをみせない。

 打ち込みでなくストリングスと生演奏のしなやかさを強調した。ゲスト勢も前作とはほぼ一新。2ndから参加のDavid Torn(g),あとはWendy Melvoin(g)。なおLisa Coleman(key)も本作で呼び寄せ、Wendy&Lisaが双方加わった。
 ンデゲオチェロはベースも弾くが、それはサウンドの軸でなく土台。あくまでも楽曲、そしてボーカルを強調した。

 メロウで暖かな肌触りが愛おしい。派手なギミックは控え、コンボ編成を主体にストリングスで味付ける。だが豪華さよりもこじんまりしたふくよかさを強調した。
 ンデゲオチェロの活動を通して考えると、むしろこれはCraig Streetの好みが強く出たオーバー・プロデュースともいえる。
 だが別にンデゲオチェロはお人形ではない。これも、彼女の一面だ。
 
 この時点で彼女は確固たる個性を持っていながらも、アルバム全体をコントロールするまでは行かなかった。プロデューサーを立てることで実現していた。だからアルバムによって、おそらく彼女の発言力の変化も踏まえて、音楽のトーンがガラガラと変わるのだろう。
 たぶんだけど、彼女は流行りの追及や新奇さを狙って、アルバムの色合いを変えていない。こんなことをしたいって折々のコンセプトがプロデューサーの解釈でグッと強調されすぎて、ここまで3枚のアルバムが違う色合いを持ったと空想する。
 逆に言うと内省的な本盤すらも薄皮一枚、借り物めいたぎこちなさがある。サウンドの出来の良さとは裏腹に。

Track listing:
1 Adam 2:24
2 Fool Of Me 3:30
3 Faithful 4:46
4 Satisfy 4:05
5 Bitter 4:15
6 May This Be Love 5:17
7 Sincerity 5:30
8 Loyalty 4:20
9 Beautiful 2:44
10 Eve 1:23
11 Wasted Time 4:55
12 Grace 4:27

Personnel:
Meshell Ndegeocello - vocals, electric bass, additional instruments
Lisa Coleman - piano, keyboards
Wendy Melvoin - guitar
Chris Bruce - (guitar, bass?)
Doyle Bramhall II - guitar
Ronny Drayton - electric guitar
Greg Leisz - pedal steel guitar (11 at least)
David Torn - guitar
Abraham Laboriel Jr. - drums, percussion
Daniel Sadownick - percussion
Biti Straug - background vocals
Arif St. Michael - background vocals
Joe Henry - vocals (11), (keyboards?)
Sandra Park - violin
Sharon Yamada - violin
Robert Rinehart - viola
Alan Stepansky - cello
Steve Barber ? string arrangements

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