Wally(1986)【Prince未発表曲

 これが伝説の曲か。ブート音源と真偽不明の情報で空想を巡らそう。

 プリンス伝説の一つに「録音が完成した瞬間に、全て消した」がある。
 当時のエンジニア、スーザン・ロジャースが漏らしたエピソード。プリンスは一晩かけて、とても美しい曲を作った。完成し終わったとたん、プリンスは一言「全て消してくれ」と告げた。
 スーザンは強く反対したが、プリンスは卓の消去ボタンを押す。その録音された曲はすべて消え去ったという。それは当時の彼女へ気持ちを込めた曲だった・・・。

 どこまで本当の話かは知らない。だがPrince Vaultによればこの"Wally"がその曲だったとある。なぜ消されたはずの曲がここにあるのか。
 元の曲は86年に録音。だがプリンスはそのあと、あらためて同じ曲を録音し直したというのだ。

 ほんとかね。消しっぱなしで空気に消え去った曲って伝説を美しく作った後、また改めてシコシコと録音にいそしむプリンスってのも、なんだか女々しくて腰砕けのような。
 そもそも一夜聴いただけの曲が、全く同じと誰が言えるのか。だいたいブートで聴ける音源がどこまで真実なのか。
 疑い出したらキリがない。とりあえずブートだろうと聴けることを無邪気に喜ぼう。

 曲はいきなり始まる。イントロが切られてるのか、そもそもないのか。途中でエレキギターがダビングされている。さらに後日に足されたホーン隊のおかげでずいぶんゴージャスに仕上がった。
 頭からホーンを抜いて聴けば、鍵盤とベースを元にした素朴なアレンジと思うかもしれない。当時のプリンスが得意とする語り掛けるメロディ。 
 あっさり仕上げていたらボーカルが奔放に情感を溢れさせる、個人的な曲になっていたかも。

 あえてこの曲が伝説通りのいわれと仮定するならば。なぜプリンスはダビングを重ねたか。それはプリンスは照れたため、と妄想したい。
 あからさまに想いを込めた曲を、徹底的に飾りあげてポップスの盛り上がりに埋もれさせたかったのではないか。
 ギターが、ホーンが、鍵盤が、そしてハーモニーが。総力戦でプリンスの傷ついた気持ちを慰め、高らかに励ます形にしたかったのでは、と空想してみる。

関連記事

コメント

非公開コメント