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Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Lord of the Underground - Vishnu and the Magic Elixir」(2009)

 25分の大作も含めて、アルバムは混沌とサイケな世界をコンパクトにまとめた。

 オカルティックな禍々しさを連想するタイトルが並ぶ本作は、08年の夏から秋にかけて録音された。プロデュースと録音は河端一、他のAMTと同様にデジタル・マスタリングはルインズの吉田達也が担当する。

 録音時期で見ると、本作の合間な08年9月に"Glorify Astrological Martyrdom"を製作とある。さまざまに作品を作り、あとからコンセプトをまとめてアルバムにバラシたようだ。
 本作を録音直後にAMTは"Interstellar Guru And Zero Tour in UK & Europe 2008"に向かう。本盤をひっさげては翌年4月に米加ツアーが行われた。

 メンバーは当時の鉄壁な4人編成。だが津山篤や河端がさまざまな楽器をダビングして、トラッド風味のドローン・サイケを分厚く表現してる。延々とリフをギターが繰り返し、そこへシンセやギター・ソロが重なる。ドラムは勇ましく打ち鳴らし、ベースが手数多く頼もしいグルーヴを支えた。

 みっしり音が詰まって疾走を続けるAMTスタイルだ。弛緩せず加速する。(1)は河端、(2)は津山の曲。(3)はジャムを元に曲を仕上げたか。
 河端のブログで本作を評して曰く「ターキッシュサイケやヒッピーフォークのパロディー、シタールをフューチャーせし秘教的トリップサイケ等、所謂フリンジカルチャー好きの方にお薦めか。」とある。

 なおフリンジ・カルチャーとは60~70年代のカウンター・カルチャーを総称するカテゴリーらしい。

 (1)はギター・ソロが高まり、オルガンのソロがかぶるあたりかグイグイとテンションが上がっていく。どんどん疾走し、全員一丸となって高まった。ソロは明確にあるが、スピーカー経由ではミックスで演奏に埋め込まれる。
 主役がソロではない。サウンドそのものが骨太に一体感ある主張をした。ゆるやかに着地するしたたかさが見事。

 (2)はインド風味もしくはサイケ・フォーク。アコギと唸るボーカルが津山、各種の弦楽器をダビングが河端だろうか。4拍子だがドラムは入らない。
 爪弾きにシンセがヒヨヒヨと彩りをつけた。鳥の鳴き声をSEで入れ、電気仕掛けながらのどかなフィールド録音風の雰囲気も漂わす。

 (3)はセッション風の穏やかな立ち上がり。深い残響ある音世界で個々の探るようなゆったりした交換から、じわじわと音がまとまっていく。
 シタールやサズの響きがエキゾティックなムードを振りまき、ゆったりとドラムがエイトビートを刻んだ。シンセは沸き立ち、漂う。ベースの提示は静かで太いフレーズ。

 アジアン風味の寛いだサイケなムードは、津山のつぶやく歌声で混沌さを深める。歌詞でなく喉を楽器として鈍く低い声を津山は漏らした。
 この曲は25分以上と時間は長尺だが、ジャムや探り合いをそのまま曲にしたかのよう。冗長にならず聴かせるのは、様々な楽器が現れは消えて退屈しないのと、根本的なところで弛緩がないためだ。
 
 いつしかベースはリフを作り、ドラムも併せてグルーヴに向かう。たとえインプロだとしても、ライブを重ねた強固なアンサンブルが産む頼もしさがここにはある。
 そしてトイ・トランペットやカズーで津山の足すユーモアも、したたかにAMTのサウンドは吸収した。
 ぱっと聴きだと(3)はジャムの切り出し。しかし楽曲としてきっちり聴ける構成が施されている。

 中盤からサウンドは飛翔に向けて加速をはじめた。歪んだギターが咆哮して、ギターのストロークに噛みつく。ストロークも少し譜割を揺らして対峙。ベースが猛烈に低音をばら撒き、ドラムの連打。
 この中盤のスリルがたまらなくかっこいい。

 その後もどんどんエレキギターを中心にサウンドは激しくなる。しかし剛腕な手癖の炸裂へ無闇に頼らず、どこか冷静さも残してる。 
 ダビングを重ねた複雑な音像が、そう思わせるのか。

 スピーカーの轟音で音の塊に触れるもよし、イヤフォンで細かな音の交錯を楽しむもよし。多様な楽しみ方ができる。 

Track listing:
1 Eleking The Clay 13:59
2 Sorcerer's Stone Of The Magi 3:51
3 Vishnu And The Magic Elixir 25:33

Personnel:
津山篤 : monster bass, voice, acoustic guitar, alto recorder, flute, toy trumpet, kazoo, cosmic joker
東洋之 : synthesizer, dancin’king
志村浩二 : drums, latino cool
河端一 : electric guitar, bouzouki, saz, sitar, organ, percussion, speed guru

recorded at Acid Mothers Temple, Aug. - Oct. 2008
produced & engineered by 河端一
digital mastered by 吉田達也

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